冒険者としての第一歩
ーー 冒険者登録 ーー
あれから10日、私はくれない部長と冒険者としての訓練を積み重ねていた。
「よし、訓練は今日で終わりだ。明日冒険者ギルドで登録をしよう。」
と言うとその日の部活は終わった。
「冒険者登録?やっぱり異世界の人に会うのね。どんな人たちなのかしらその前に言葉が通じないといけないから・・・言語取得3と。」
と言いながら明日の部活にウキウキしながら部活を終えた私。
次の日は、土曜日土日は朝から長い時間冒険者としての活動ができる日だ。
部長と共に山小屋風の小屋を出てから森を抜けるために部長の転移魔法で一気に街に移動するようだ。
「少しばかり目がまわるがすぐになれるさ。さあ行くぞ。」
と言う言葉で目の前が切り替わる、軽い酩酊状態から周囲の警戒を始めた私。
森の外周部にいるようだ、すぐに森の外に出ると遠くに城塞都市が見えた。
「あれが目的の街、ゴールドロックという街だ。いろんな種族がいるがあまりキョロキョロするなよ。」
と注意されながら私たちは街を目指して歩き出した。
3時間ほどかけて大きな門のそばに辿り着いた私たち、門番に部長が話しかける
「今日は新人を連れている、冒険者に登録するんだ通って良いか?」
話しかけられた門番は私を見ながら
「良いぞ、ようこそゴールドロックに。」
と笑顔で道を開いてくれた。
街の中に入ると、注意されたことを忘れてしまうほどの風景と人々が行き交っていた。
「ケモ耳だ、鱗のある人もいる。外国の市場みたいだ。」
と思いながら部長の後をついて歩くこと30分ほど、通りの正面に大きな建物が見えてきた。
「ここが冒険者ギルドだ、中に入るぞ。」
と言われ頷きながら扉の中に。
少しムッとする空気、汗と血の匂いが混じったような澱んだ空気が、私たちの開けた扉からの空気の流れで少し緩和される。
部長が正面のカウンターに向かうのを追って行くと、受付嬢のような格好の綺麗な女性が笑顔で声をかける。
「久しぶりですね、クレナイさん。後ろの方は・・新人さんですか?」
と問われ部長が
「久しぶりです、この子は僕の後輩でメグミと言います。今日は冒険者登録をお願いします。」
と答えると私を前に出す。
「こ、こんにちわ。メグミですよろしくお願いします。」
と言うとニコリと笑顔の女性は
「緊張しなくて大丈夫よ、これに必要事項を書いて手をここにおいてね。」
と紙とペンそれと水晶玉のようなものをカウンターに置いたのだった。
必要事項を埋めて紙を出しながら水晶玉に手を乗せると、水晶が眩しく光る。
周りの人たちも興味深そうに様子を見始める、私は少し恥ずかしく思いながら受付の女性に顔を向けると。
女性は少し驚いた顔をしたがすぐに元に戻り、
「流石クレナイさんの後輩ね、すぐにカードを作るから適当に時間を潰しておいてね。」
と言うと席を立った。
私は部長とギルド内を見ながら時間を潰す。
「これが依頼ですか?あれ!あのクマ結構危険度が高そうですよ。私たちの力はここでは何処くらいなんですか?」
と疑問を口にすると、部長は
「冒険者はFから始まってE、D、C、B、Aと上がるんだがほとんどの人は、C辺りで頭打ちでB以上になれるのはほんの一握りの人だけだ。僕らはそのルールから外れているから今の君でBランク程度かな。」
と言われた。
「ほとんどの人が到達できないBランクに10日でたどり着いた・・・確かにこの世界のルールを無視してるね。それで部長はランクなんです?」
「僕は当然、SSSだよ。この国で唯一のね。」
と当然のように答える部長。
その後依頼を幾つか取ると受付に呼ばれて再度向かい
「はいこれが貴方の冒険者カードです、無くさないでね。」
と渡された、部長が
「彼女が狩りをした魔物を売りたい。」
と言うと買取カウンターを支持されて、そこに移動して再度部長が
「物が大量にある、裏でいいかい?」
と言えば職員が裏まで案内してくれた。
「ここに半分ほど魔物を出しなさい。」
と部長に言われブレスレットの収納から私の倒した魔物を倉庫のような場所に取り出し始める。
「これはクレナイ殿が倒した物ではなくこの子が倒した魔物かい?」
と尋ねる職員に部長が
「この子将来有望なんですよ。」
と軽く答える。
倉庫が半分ほど埋まるほどの魔物を出した私たちは、札を渡されて明日もう一度ここに来ることになった。
「登録は済んだ、あとはこの街を散策してお土産でも買おうか?」
と言う部長に頷く私は、異世界の街でショッピングを楽しんだ。
ーー 部活動には合宿がつきもの ーー
ある日部長が
「ゴールデンウィークに短期間の合宿をやるぞ。これが表の計画書だ親御さんの許可をもらっておくように。」
と一枚のプリントを手渡してくれた。
【 6日間の合宿、体力増強とサバイバル能力の向上を目的とした山岳訓練。】
と書かれてあった。
「おじいちゃん、今度の連休部活の合宿に参加するね。」
と言いながらプリントを差し出す私の顔を見ながらおじいちゃんは、
「恵、お前随分元気になったな。これも部活のおかげかな?山岳訓練か、気をつけて行くんだよ。」
と言うと承諾書欄に印鑑を押してくれた。
恵の祖父母
「おじいさん、恵ももう大丈夫みたいね。」
「ああ、ここにきた時は友達もできず、心配したが体も丈夫になって勉強も良くできるようだ。もう心配はいらんだろう。」
と老夫婦は笑いながら孫の成長を話す。
冒険者活動で体力はもとより健康で若々しさと明晰な頭脳をスキルで得た恵みは、高校でも常にトップの成績を誇っていた。
容姿やスタイルも同級生が羨むほどの変貌を遂げ始めて、逆に声をかけられづらくはなっているが今の恵みには関係のないことだった。
合宿の日
早朝から家を出ると学校に向かう恵。
校門をくぐり校舎に向けて歩くと程なくしてあの矢印が目に入る。
この矢印は異世界に行くことのできる素質を持つ者だけが見つけることのできる道標なのだそうだ。
初めてこの道標を見つけたクレナイ部長は、あの教室にたどり着くと部活動日誌を見つけたそうだ。
それにはあの街と森のことが書かれており、歴代の部活生が冒険者として活躍してその後の人生を謳歌しているそうだ。
ただしこの世界ではその話はタブー、お互い素知らぬ顔で生活している。
不思議なことに学校を卒業すると2度と部活に参加できないそうだ。
私は部活の教室に着くと持ち物を確認するために、アイテムボックスから収納の魔道具であるブレスレットに必要な品物を入れ替えると更衣室で冒険者の服に着替える。
今ではショートソードも片手剣に変わって、背には弓が背負われている。
スキルは、新しく
剣術、槍術、弓術、体術と属性魔法が加わっている。
そう私は攻撃魔法が使えるようになっていた。
暫くするとくれない部長が現れて、今回の合宿の予定を話し出した。
「今回は約1月の異世界生活になる。」
異世界は地球の時間軸と違い約5倍の時間となるため6日で30日となるのだ。
「今までと違い今回は大物を狙います。それからお宝も予定してます。」
と言う部長に私は
「とうとうドラゴンですね。ダンジョンも行くのですか?」
と少し興奮気味に尋ねると、笑顔で頷いてくれた。
「やったー!」
異世界でドラゴンスレイヤーは特別な冒険者だ、ランクに関係なく尊敬を受ける称号なのだ。
それとダンジョン攻略も同じく冒険者の夢だ。
期待を胸に私たちは、扉を潜る。