幼馴染の見舞いと違和感・・
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新年を迎え冬休みも残り僅かになったある日に相変わらず俺の部屋でくつろいでいる姉さんが、リビングから戻って来た時に勉強机と壁の隙間に挟まっていた何かを見つけたらしい。
「悠くん、このメモ紙はなに? なんか病院の名前書いてあるけど、どこか怪我してたの?」
「病院? ・・・・あっ」
姉さんからメモ用紙を受け取りながら身体中を触れるのを放置して、自分の筆跡ではない病院名と部屋番号を見ながら思い出す。
冬休み前に早川先生に呼ばれて入院している一哉達の見舞いをクラス代表で行くようにと言われていたことを・・。
「悠くん?」
「・・あれだ・・担任にアイツらの見舞いを幼馴染だからクラス代表で行けって言われてた」
「・・行くの?」
「まぁね。本当は行きたくないけど、先生が怖いし・・」
「いつ? お姉ちゃんも行こうか?」
「姉さんは、家で待ってて。今からでも行ってくるよ」
「そう・・だよね」
もう昼過ぎになっていたけど、パッと3人の顔を見て帰れば良いと思い立ち上がり支度をする途中でもう使わなくなっていたボールペンを見つけ、それを手に取りポケットに入れた。
「姉さん、行って来るね」
「気を付けてね、悠くん」
「うん、暗くなる前には帰るから・・」
玄関で見送る姉さんに手を振りドアを閉めて、寒い街を1人静かに歩く。
新年が始まり数日経ったのにまだ新春初売りセールは続けられるていて、もう新鮮さは無く売れ残った商品をだれも見向きもしない。
「・・はぁ、めんどくさ」
寒くて澄んだ空気が青空を綺麗に見せてくれているけど、俺の心はスッキリしないままメモ用紙に書かれた病院へと向かう途中に、ふと手ぶらはアレかなと思いコンビニに立ち寄る。
3人分のプリンとなぜか黒色油性ペンを買ってしまった俺は、病院に入ってからエレベーターに乗り一哉がいるフロアで降りる。
病院独特の匂いを感じながら廊下を歩き一哉がいる病室前で足を止めてベッドの位置を確認すると6人部屋で4人が入院しているみたいだ。
廊下から部屋を覗くとそれぞれがプライバシーを見られたくないのか、眩しいのかわからないけどベッドをカーテンが囲み姿は見えないようになっている。
「・・木下くん」
「・・・・」
声バレしないよう普段より高めの声で呼びかけるも反応がないため、一哉のベッドだと思うカーテンをゆっくり開けると、右腕と両足にギプスをして寝ている一哉の姿を見つけた。
「寝てる顔もムカつくな・・」
そう呟きながら起こすことなく枕元に買ったプリンをスプーン無しで置いて、途中で買った黒色油性ペンで足のギプスにメッセージを残す。
・・寝取り男 ラブホ前で修羅場になり病院送りにされ留年するボク・・
「・・・・」
いずれ取られるギプスだけじゃ物足りず、王道の額にカタカナでサルと書き残し俺は部屋を出て次に雨宮と一条がいる病室へと向かう。
女性が入院する場所は違うところのあるため階段を上がり上の階へと移動すると、2人は一哉と違い個室らしく入るのに少し躊躇ってしまう。
「・・帰ろう・・・・いや、入るしかないか」
部屋のドア横の壁にあるネームプレートに雨宮結衣の文字を見て帰ろうと一歩踏み出そうとした瞬間に、背後にキレる早川先生の気配を感じ思わず足が止まる・・。
ドアをノックするも室内から応答が無いため一哉と同じように昼寝でもしているのかと思いながらドアをゆっくり開けた先にあるベッドからこっちを見る雨宮らしき人と視線が重なる。
「・・・・生きてる?」
顔に包帯が巻かれほぼ目と口しか出ていない姿の彼女が雨宮本人なのかわからないけど、ゆっくりと頷いたことで本人に間違いないだろう。
「えっと・・早川先生から言われてクラス代表で見舞いに来たんだ」
「・・きっと、来ないと思ってた」
部屋が静かなおかげで、微かで弱々しい声量の彼女の言葉を聞き取れることができた。
「先生に言われたからな・・冬休み終わったら聞かれそうだし。それと差し入れにプリン買って来た・・」
「ありがとう・・」
雨宮と言葉を交わしたことで俺は2人目を達成できたから長居する気は無い。
「それとは別に、俺個人から雨宮に渡したいモノがあるんだ」
「なぁに?」
今日偶然見つけたけどずっと捨てられずに持っていた中学生時代に雨宮と初デートで一緒に買った赤色のペアボールペン。
高校受験の勉強で遊べる時間が減るからということで、同じモノを持って互いに頑張ろうと約束した思い出のあるモノだったのは、俺だけだった過去の遺物だ。
「コレ・・もう俺には必要無かったみたいだし、捨てるのもあれかなと思って」
「・・ボールペン?」
「憶えてない?」
「・・わ、忘れてないよ?」
「そっか・・2人の名前のとこは消してるからキミにあげるよ・・コレでもう俺と雨宮さんとの繋がりは切れるから」
「えっ?」
「サヨナラ、結衣」
雨宮が必死に何かを言っているけど小さな声しか出せないからそのまま無視してドアをゆっくり閉めると、もう彼女の声は聞こえず関係を断ち切れた気がした。
「・・ふぅ、次は一条だな」
彼女も個室のため雨宮から3部屋離れた場所にいるため数秒で辿り着き、同じようにドアをノックするけど応答は無いためそのまま部屋に入る。
雨宮と同じように痛々しい姿で寝ていたため、プリンをベッド横のテーブルに置いたところで気配を感じたのか一条はゆっくりと目を開けて俺を見る。
「・・・・悠ちゃん?」
「ゴメン、起こしちゃったな」
「ううん・・来てくれたんだ」
小さくゆっくりと首を振る一条は、俺をジッと見上げている。
「クラス代表で見舞いに来た」
「うん・・先生が言ってたよ」
「そっか・・」
「悠ちゃん、あのね・・紬先輩は廊下にいるの?」
「いないよ・・俺1人で来たから家で留守番させてる」
閉めたドアの方に視線を向けていた一条は、姉さんがいないことを告げると視線を俺に戻す。
「そうなんだ・・」
「まぁ、いろいろあり過ぎたけど・・こんな姿見たら言う気も失せたな」
「・・ゴメンなさい」
「さっき、雨宮に会って来た」
「結衣ちゃんに?」
「あぁ、一哉は寝てたけどな」
「・・・・」
「会うまで聞きたいこと言いたいことたくさんあったけど、最後に一つだけ伝えたいことあるんだ」
「うん・・」
一条の瞳は揺れて視線が下を向き逸らされたタイミングで俺は小さく息を吐き出す。
「葉月からの告白・・嘘コクだったけど。気付くまで過ごした2人の時間は正直楽しかった。あの時はマジでずっと続けば良いなと思っていたんだ」
「・・悠ちゃん」
「でも今はもう微塵も無い・・ただそれだけ。サヨナラ、葉月」
部屋のドアを閉め声が聞こえなくなったことで繋がりを断ち切ると決めた俺は、家に帰るため一度も振り返ることなく病院を出る。
病院の正面玄関を出て歩いている途中にふと周りの景色に見覚えがあるような気がした俺は足を止めて振り返り、3人が入院している病院を眺めていると1つの画像と重なった。
「・・・・あっ」
電源をOFFにしていたスマホをに電源を入れて重なった画像の保存場所へとタップして画面に表示させると、ここにはいない咲希ちゃんが居た画像と目の前にある風景を並べて見る。
「・・同じ病院。ここに咲希ちゃんがなぜ?」
スマホの画面の咲希ちゃんは俺と遊ぶ日の午前中に病院に来たようで、昼に会った彼女の服装と違っていることに俺は彼女が着替えた理由がわからない。
「誰かの見舞いなのに着替える必要なんかあったのかな・・・」
そう思いながらも会った時に画像を送った剣崎さんに聞くことにして、俺は残り少ない冬休みを過ごしたのだった・・・・。
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