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ハロウィンマン

作者: 月見里 桜

『ハロウィンマン』

 今日は十月三十一日。ハロウィンでお化けが現世に現れる日だ。

 十歳の少年ジャックは黒い服を身に纏い、頭に白い包帯を巻いて、片手にお菓子がどっさり入った籠を持って何故か墓場を歩いていた。十分前にお菓子を貰うために一緒に家々を回っていた友達と別れた。友達はミイラ男に仮装していた。ジャックもミイラ男の仮装だ。

 墓場は夕方なのに薄暗く、空気はじめじめしていた。十字架の墓石が立ち並ぶ。ジャックは墓場からもと来た道に戻ろうとしたが、いつの間にか周りは暗闇に包まれて見たこともない道に迷い込んでいた。広場に出る。そこには焚火をしているお化けたちがいた。

 「今日こそ人間を倒そう」

 「そうだ。そうだ。傲慢な人間はいらない」

 どうやら人間を侵略する計画を練っているらしい。小石が転がる。

 「誰だ!」

 お化け達に見つかってしまう。

 「あ、う」

 と声を漏らす。お化け達、ミイラ男、魔女、フランケンシュタイン、狼男、ドラキュラがジャックを取り囲む。

 「どうしてくれよう?」

 「人間だ。殺してしまえ」

 「見られたんだ。仕方ない」 

 お化け達が手に手に武器を持ってジャックに襲いかかる。そこに歌が響いて来る。ハロウィン、ハロウィン、ハロウィン、ウィンと軽快に今にも踊りだしたくなるような歌が聞こえてくる。

 「待て。そこまでだ!」

 白いマントを靡かせて、カボチャ頭の男が颯爽と登場する。そして、お化け達を殴り、蹴り、ほおり投げて倒していく。

 「ギャ」

 「やられた」

 お化け達は地面に倒れていく。すると、ミイラ男がジャックの首を掴み、人質に取る。

 「クハハハ。どうする?」

 かぼちゃ頭の男、ハロウィンマンは懐からかぼちゃハンマーを取り出して、高く振り上げる。そのままミイラ男に頭めがけて降り下ろす」。ミイラ男はブチッと潰れてしまう。ジャツクは解放される。お化け達は溶けるように消えていった。ハロウィンマンは地面に座り込むジャックに手を差し出して起こす。ハロウィンマンはジャックを見つめて静かに微笑む。かぼちゃ頭を取る。そこには端正な顔立ちに男性がいた。

 「君は去年、私を助けてくれた良い子のジャックだね」

 「その、助けてくれてありがとう」

 ジャックハ戸惑いながらまごつく。でも、ハロウィンマンこと、ジャック・オー・ランタンはジャックの肩を抱き寄せる。

「君のお陰で私の罪は許されて、お化けを諫める役目を仰せつかった」

「ジャック!」

 金髪碧眼の女性が突然現れる。

「探したのよ」

「バー子か。ほら、良い子のジャックだ」

 「あら。あなたは…」

 「こ、こんばんは」 

 二人の美しさに戸惑うジャック。

 「まだ、分からないことがあるかもしれないが、まず、昨年のお礼を。ありがとう、ジャック」

 「本当にありがとう。ジャック」

 「ど、いたしまして」

 ジャックは俯き、頬を赤く染めて言う。ハロウィンマンは腕を伸ばし、ジャックの手を握る。

 「さて。ジャック、君はここで見た事を決して話してはいけないよ」

 「はい。話しません」

 ハロウィンマンは微笑み、カボチャを被りなおす。

 「バー子、例の物を」

 「はーい。ジャック、このランタンを持っていきなさい」

 かぼちゃをくり抜いて作られたランタンをバー子はジャックに持たせる。明るいオレンジ色の光。

 「あなたの光よ。美しいわ」

 「ああ。この世を照らす光だ」

 ハロウィンマンは頷く。ジャックは両手でランタンを抱えて小首を傾げる。

 「ねぇ。おじさん。かぼちゃの頭、被らない方がカッコいいよ」

 「そうかい。でも、今日はハロウィンだ。仮装しないと」

 ウィンクしてみせる。

 「バー子だって、幽霊の仮装をするぞ、な」

 「ええ」

 そう言って、バー子は白い布を頭から被る。目を開けただけの白い布。バー子は地面からふわりと浮かぶ。ジャックは目を見張る。驚く。

 「さて。良い子のジャック、人の世にお帰り」 

 「そうだな。お化けの世界からお帰り」

 「ここは普通のお墓だよ。お化けの住処じゃないよ」

 「君には見えていないんだな」

 「ええ。ここはお化けのお墓。人の子が迷い込むべき場所じゃないわ。さぁ、良い子のジャック」

 バー子はジャックの背を押す。ハロウィンマンも同じように背を押して、光が続く道にジャックを歩ませる。ジャックは頷きながら、道を進む。ランタンの微かな、弱弱しい光。でも、確かに燃える火に足元を照らされて。


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