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きみとぼくの為のあまいお菓子

作者: 小鳥遊あん

静かで冷たい部屋にあまい薫りがふんわりと漂う。


きみとまたけんかをした。


きみにあんな顔をさせたかったわけじゃないのに。

ぼくがちょっと神経質な事もきみがちょっといい加減な事もよくわかってる。

わかってるのについイヤな言葉が(こぼ)れ落ちてしまって1度開いた口からは次から次に言葉が(あふ)れて止められなくて、きみは大きな溜息を吐いて部屋を出て行った。

ぼくはぱたんと閉じてしまったドアを見ながら泣いて泣いて涙が枯れるとよろよろと台所へ行く。


そしてぼくはお菓子を作る。


ちいさな頃に見た絵本では小麦粉に砂糖、卵に牛乳をボールに入れてくるくるかきまぜてオーブンで焼けばふわっふわであまくておいしいケーキができてたけど本当は全然違う。


ひとをすきになるのもお菓子を作るのもすごく大変なんだって知ったのはきみに出会ってからだ。


ぼくは泣き腫らした目でレシピと量りを睨み付けながら1グラムも間違えない様に粉を量って何度も篩にかけて腕が痺れる位しっかりと卵を泡立てて順番通りにまぜていく。

何かの実験みたいに丁寧に、真剣に。


それでも上手くいかない事も沢山ある。

どれだけ気を付けて真剣に丁寧にしたつもりでも膨らまなかったりおいしくなかったりきみを怒らせてしまったり。


辛くて草臥れて『もうイヤだ』って思う時だって何度もある。

それでもぼくはやっぱりきみがすきだからきみとぼくの為にあまいお菓子を作る。


ねぇ、きみがいない部屋は静かで冷たくて寂しいよ。


めんどくさいぼくらだけど、またけんかもすると思うけどそれでもぼくはきみの傍にいたいって思うから。

この先もずっとずっときみと一緒に泣いて笑っていたいから。


きっともうすぐきみは少し不機嫌そうな気まずそうな顔をして帰って来る。

でも部屋の中のあまい薫りに気付いて不機嫌そうなきみの顔がちょっとだけ綻ぶ。

ぼくはそんなきみを見たら胸が苦しくなる位嬉しくなってきみをぎゅっと抱き締めるよ。

そして“おかえり”って“ごめんね”って“だいすきだよ”って言うよ。


何度も何度だって言うから。


きみが淹れてくれる濃くて少し苦いコーヒーを飲みながらきみのすきなあまいお菓子を一緒に食べよう。


だから早く帰ってきてよ。


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