見習い神様と悪魔な天使
異世界転生・転移のタグをつけていいものかよくわからなかったので、やめました。
駄文を読んでいただきありがとうございます。
「あ、やべ…天使くん、ちょっと」
白いもじゃ髭、髪の毛の一切ない頭部は日の光を浴びてキラリと輝いている。
古代ギリシャのような白い服を身につけ、杖を持つ姿はまさしく神様だ。
「何でしょうか、神様」
一方、天使は赤子に翼の生えた姿、ではなく、黒スーツに糸目の青年である。
持っているものは花束やラッパなどではなく、万年筆であり、彼の机の上には今にも崩れ落ちそうな山積みの書類がある。
「間違って人死なせちゃったわ」
「人間…ああ、70億くらい居たじゃないですか。一人くらい死んでも大丈夫ですよ」
「ええ…でも、俺、この仕事初めてだから、初日からミスはな…」
「ダメです。僕、じゃなくて儂、ですよ。全く、新人は教育が面倒…げふん、面倒ですね」
「いや、何で言い直そうとした!?せめて誤魔化そう?隠す気無いよね?」
職場は天界。空は晴天、地面は雲である。
天使はコネで神様になった、この見習いの尻を拭く羽目になっていることを憂いた。
他の天使と教育係を巡って、ジャンケンしたことを後悔していた。
グーを出せば良かったのだ。
いや、あみだくじで決めるべきか。
天使は同僚との教育係を誰がやるかという問題を物理で解決することもできた。
しかし、平和の象徴とまではいかないが、善なる天使が醜い争いをすると少々大天使が煩いのだ。
お陰で前任からの引き継ぎなどで、一昨日から一睡もできていない。そんな中でこの新人、重大なミスをしやがったのだ。
「この死んじゃった人間、なんとかできない?」
「今、オケラの管理で忙しいんですけど。あー、何歳くらいですか?」
「20代…後半?」
「職業は?」
「ニート。なんかコンビニ行く途中だった」
「あー、まあどうにかなるかな。ちょっと呼んできますね」
まあ、この神様のミスも、この神様が生まれた時から頭が寂しいことになっているジジイと思えば許せるというもの。
自分の頭に手を当て、サラサラとしたストレートの撫で心地を楽しみ、優越感に浸る。
☆
「フォッフォッフォッ。儂の手違いですまんかったのう」
「え、何コレ、神様?」
よしよし、食いついている。
天使は新人神様の代わりに神に成り代わっていた。
目の前には白豚…ではなく贅肉が付いた青年がいた。
ちょっと申し訳なさそうな顔を作る。
「此方の手違いでお主を殺してしまったのじゃ。そこでお主には——
「異世界!!異世界行きたい!!」
人の話を遮るな。
神に扮した天使は若干イラッときた。徹夜のせいで集中力が低下し、情緒不安定でキレやすくなっているのだ。
「あー、はいは…フォッフォッフォッ。異世界転生じゃな」
「えーと、取り敢えず男でイケメンで貴族で女にモテてお金もあって魔法も剣も使えてスキルも欲しい!!」
「…え」
「なんか魔王倒して、美人のお姫様と結婚する!あ、でも勇者って馬鹿ばっかだしな…やっぱ魔王になって俺以外全員奴隷にしよ」
「ちょっと、む——
「無理とか言わないよね?そっちが悪いんだし。俺、殺されちゃって可哀想〜」
ヒュン、と男の姿が消えた。
天使は悪質なクレーマー遭遇したコンビニ店員の気持ちをこれ以上味合う気になれなかった。大理石の石柱から顔を覗かせたのは見習いの神様だ。
「うっわ、なんか今のサイコパスっていうか自己中心的っていうか…大丈夫か?」
「神様、二時間休憩頂きますね」
「ア、ハイ」
☆
「休憩終わりましたー」
「あ、天使君。聞きそびれたけどさっきの男の人、どうなった?」
目の下の隈が少し薄くなった天使は、まさしく天使に相応しい笑みを見せた。
「異世界へ、これでもかというチートを授けて送りました」
「え、最近この世界と小競り合いしているとこ?敵に塩を送るもんなんじゃ…」
「いえ、あのような人間は内側から世界を腐らせる腐ったみかんですから。」
あの男は力を手に入れたことによって、自己中心的に利己的に異世界でふるまう。彼にはそれが許される力があるからだ。金も権力も女も望むものはすべて手に入れれるだろう。だれも止められないからだ。まあ、神の逆鱗に触れるだろうが、神もその後の後処理が大変だろう。
「しばらくは残業に追われることでしょう、ふふふ」
見習い神様には天使を休ませようと決意した。
その後、見習い神様のミスは減り、天使は異世界の勢力が削がれた事を他の天使と共に喜んだ。