1番な人
サラッと涼しくて心地いい風が肌を撫でた。
気温はまだ高いのに涼しい風が季節の変わり目を告げている。
どんどん寒くなっていくなぁーなんて思いながら本のページをめくる。
昨日は男の子に助けて貰ったお礼を言って、持っていた本を借り図書館を後にした。
その本を庭のベンチに座りながら黙々と読んでいく。
5つの属性の魔法にはそれぞれ特性がある。そのため属性によって出来ることが変わってくる。
氷属性魔法は物を凍らせたり、氷を生み出したりできる。さらに極めれば氷を操り好きな形に変形でき、武器を作ることも可能である。しかし、それには魔力量が多くなくてはならない。
(へぇー、そんな事ができるんだ。
魔力量は多いから好きな形を作れるようになるかしら?)
「ローゼリア!なんの本?」
「きゃ!!」
不意に肩を捕まれ思わず声を上げてしまう。
「アリナ!!」
「も~。そんなに驚かなくてもいいじゃない」
クスクス笑いながら少し拗ねたようにアリナが言った。
「魔法?しかも氷属性」
ローゼリアの手元を覗き込んだアリナが不思議そうに尋ねる。
今まで聖女になりたいと言ってきたのに光属性ではなく、氷属性の本を読んでいることに驚いたのだろう。
「そう。光属性だけじゃなくて、氷属性も使えるようになりたいって思ったの。自分のことを自分で守って、誰かのことも救えたらいいなって。
その為に光属性だけではなく、氷属性も勉強することにしたの」
「そっか。…頑張ってるのね。
私に何かできることがあったら言って!私はローゼリアの味方よ」
「アリナ…」
「でも、無理しちゃダメ。そのときは全力で止めるから。」
「…うん」
アリナの真剣さと優しさに胸が熱くなった。
アリナには前世で、いや今世もよく注意されていた。私が王子様に近づくたびに小言を言うから、うんざりして、聞く耳を持たなかった。そんなことを繰り返していたら1番仲のいい存在だったのに、いつの間にか話さなくなっていった。
今思い返すと、アリナは私を心配して色々言ってきたのだと感じる。そんなことは露知らず、アリナの話を聞かず暴走して魔王にやられた。もし、聞いていたらやられていなかったかもしれない。
(たらればのことを抜きにしてもアリナは私のことを思って言ってくれているわ。私も自分だけじゃなくてアリナのことも思い、それを行動に移せるようにならなきゃ)
「アリナありがとう」
「えっ?どういたしまして…?
そういえば、今日は髪飾りつけてないの?」
「あー、どこかで落としちゃって…たぶん図書館だと思う。他の場所にはなかったから」
「そっかー大切にしてたのにね。
大丈夫よ!きっと見つかるわ。私も一緒に探すから」
「うん。ありがとう」
なんとなく感謝を伝えたくなって、言ったら不思議な顔をされた。 なんのことかを詳しく聞いてこないところがアリナらしくて有難かった。
アリナが言うピンというのは、ロンドが生まれる前後で、私がアリナの領地で過ごしていたときに貰ったものだ。ピンにはサネカズラの花の造花がついている。
(可愛くて貰っときからずっとつけていたのよね)
「また会えないかしら…」
「ピンをくれた子に?」
「ええ。お礼がしたいの」
「そーね〜。また会えるんじゃない?」
「ちょっと!適当に言ってるでしょ!」
「フフ。どうでしょう」
茶目っ気たっぷりにアリナが言う。
(ほんとに会えたらいいわね。名前も知らないあの子に)
読んでくださりありがとうございます!
不定期更新ですみません。