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図書館の男の子


「もう少し背筋を伸ばして……そう。綺麗よ」


今日は朝からお父様の妹のラナルーラ叔母様に授業を受けている。

普段この姿勢をとることはほとんどないから結構しんどい。


パンパン!

ラナルーラ叔母様の合図でカーテシーを終える。


「ローゼリア、一段と上手くなったわね。

お茶会の後からかしら?気品と優雅さも兼ね備えるようになったのは………何かあったの?」


探るような目で見つめられ思わず目を逸らす。


(ヤバい…なにか感ずかれてるわ。

実は前世で一通り教わりましたので、なんて言えるわけないしね…どうしようかしら?)


「もしかして……王子殿下に一目惚れでもしたの?」

「っ?!?」

「…やっぱりね」


何も答えないでいると想像の斜め上をいった発言にもっと身を固くしてしまう。

それを肯定していると受け取ったのだろう、叔母様は1人で納得してしまった。


(ラナルーラ叔母様ちょっとニヤニヤしてない?)


「いえ…そういう訳では」

「あら?恥ずかしがらなくてもいいのよ?」


(うん……否定するだけ無駄だわ。前世のことがバレるよりはいいかもしれない。

でも、変に勘違いされて婚約者になるのも避けたいわね。それに楽しんでるようにも見えるわ)


「ラナルーラ叔母様、このことは誰にも…」

「ええ、勿論よ! ローゼリアなら大丈夫だわ。これからも頑張るわよ!」

「…はい」


ちゃんと伝わったのか分からない返事にため息が出そうになるのを堪え返事をする。


「そういえば、お兄様から聞いたわ。氷属性をならいたいのよね?…でも私は光属性しか使えないから別の方に教わることになるわよ?」

「はい。それでもいいです」

「そう。気持ちは変わらないのね…。お兄様にもそう伝えとくわ」

「ありがとうございます」

「ええ。その前に1つ質問させて?

なんでわざわざ氷属性を使いたいと思ったの?貴方は光属性の魔力が強いから、光魔法を極めたら聖女になれるかもしれないじゃない?それに王子殿下と結婚したいのなら聖女になった方が有利よ?」


…最後大きな勘違いがあったけど、確かに叔母様の言うことも一理ある。


私は生まれつき魔力量が多くて光属性に適している。それにそろそろ200年が立つ。邪気が強くなって聖女が誕生する年月に近い。代々カリアス家にとって聖女になるのは最高の名誉だった。だから前世の私もそれに従って光属性を極めた。そして聖女になった。


でもそのせいで私は死んだ。聖女になることに、結婚することに盲目的になってしまったせいで…


今世は、2回目はそんな死に方は絶対にしない。あんなこと絶対に起こさない。その為に聖女には絶対になりたくなかった。


そう考えて辿り着いたのが光属性より氷属性を極めること。氷属性が使える事を確認した(ロンドに一通り披露した)後、お父様に氷属性を習いたいと直談判しに行ったのだ。

前世では光属性を極めていたから、どんな反応されるか正直怖かった。

実際は思っていたよりも快く承諾してくれた。それにもう、叔母様に話を通してくれていたなんて


「確かに、そうなのかもしれません。でも私は、誰かに救われるだけではなく、誰かを救いたいのです。その為には光属性だけではなく、氷属性も必要だと思ったのです」


そう。聖女になりたくないという思いが1番だが、もしまた魔王やそれと同等な強さを持つものと戦うことがあるなら、自分の力で戦いたいと思ったのも事実だ。誰かに守られ傷を癒すだけでなく、自分の力で守りたいと、そう思ったのだ。


「勿論、光魔法の練習も疎かにしませんわ。私だってカリアス家ですもの」

「そう。それなら両方頑張りなさい。今まで以上に大変だと思うけれど、わたくしに出来ることなら手伝うから、いつでも言って」

「…ありがとうございます。ラナルーラ叔母様」


叔母様の優しい言葉に視界が揺れた。

まさかそんな事を言われると思わなかった。カリアス家の令嬢なら光属性魔法に集中しろ、などと言われると思っていたから。


いつも厳しいとばかり思っていたけれど、それだけではなかったのだ。その中にちゃんと優しさもあった。

(お父様もそうだったけれど、叔母様も応援してくれるなんて。

あぁ…前世の私は本当にバカね。こんなに身近に私を思ってくれている人がいた事に気づかないなんて)


*******************


叔母様と話した日から数日がたった。

氷属性を教えてくれる先生が来られるまで何日かあるので図書館に来ていた。


王宮図書館はこの国で1番大きい図書館で、自由に出入りができる。

外見だけ見れば貴族の別荘と言っても支障はないぐらい大きくて綺麗な建物だ。



前世では氷魔法は最小限しか練習してないから、ほとんど使いものにならない。

新しい先生が来る日まで待っていても良かったのだが、氷魔法に興味が湧いた私は居ても立ってもいられなくなり、ここに足を運んできた。


(わぁぁー。凄い本の数。上の方にあるものはどうやって取るのかしら?)


本棚は壁に沿って高く並んでいているものと一定の距離を開けて並んでいるものがあって、中央にはテーブルが並べてあり座っている人が何人かいる。


やっと、魔法書の区画の棚を見つけ氷属性に関する本を探す。


「氷属性、氷魔法の本は……キャッ!」


本を探すのに夢中で台から足を踏み外してしまった。

そこまで高くはないが、このまま足を床につけたら確実に怪我をしてしまう。


(お、落ちる!!)


ドン!

「っ!!」

「イタタ……大丈夫?」

「え?」

「上から落ちて来たけど…」

「?…ごめんなさい!!」

床に体をぶつけると覚悟していたらそれほど衝撃はなかった。代わりに耳元で声がして慌てて振り向く。


尻もちをついた男の子が痛そうに腰をさする。

そして私はその子の足に乗っていたのだ。


今の状況を理解した私は慌てて立ち上がった。

「助けてくれてありがとうございます!お怪我はありませんか?」

「う、ん。大丈夫。貴方は?」

「私は庇って頂いたので問題ありませんわ」

「そっか、良かった」

そう言って立ち上がった目の前の子は床に散らばった本を手に取りどうぞと私に渡してくれた。


読んでくださりありがとうございます。



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