お茶会-2
お茶会という名の王子様達の婚約者候補を決める会。そう、今日のお茶会はただのお茶会じゃない。貴族の令嬢にとってこれからの人生がかかっていると言っても過言じゃない。このお茶会で少しでも王子様や、王族の目にとまって候補に入らないと婚約者にはなれないから。だからこの会に呼ばれた令嬢は我先にと王子達と話しアピールしていく。
これは令嬢に関わらず令息も同じだ。この会で令息は将来王子の側近になるために奮闘する。いわば戦場だ。
でも、必ずしも皆が皆アピールしてる訳ではない。そういうのに興味がないのか、はたまた別のものになりたいのかは分からないけど。
(私からしたら意味が分からないわ。だって王子様の婚約者になるのは令嬢たちの目標でもあり夢でもあるんだもの。それは令息も同じだと思うもの)
「はぁー、ロンドが今日来れるなら良かったのに。もし殿下の側近候補になったら私のことアピールできて王子様の婚約者になれるのに」
「お嬢様……ロンド様はまだ4歳です。このお茶会には参加出来ません。それに出来たとしても、婚約者はお嬢様の力でなるものです。いくらロンド様が王子殿下と親しくなったとしてもお嬢様が婚約者になれるとは限りません。」
「わ、分かってるわよ、ちゃんと。そんなに真剣に言わないでよ」
ジト目で見られる。
(はあぁー。またウララに怒られちゃった。そんなに怒るのが好きなのかしら?そんなんだと顔が良くてもモテないわよ?
あら、じゃあお嫁に行くのはまだ先ね。私の方が早かったりして〜)
「何ニヤニヤされているのですか?」
「なんでもなーい」
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「わぁ〜、すっごく広くて綺麗な庭園だわ〜」
赤い薔薇のアーチを抜けると色とりどりな花たちが並んで咲いており、それは壁となりしかし美しく存在感を漂わせている。真ん中にはテーブルが並べられており、上には美味しそうなお菓子やサンドウィッチなどの軽食が置いてある。 もう既に招待されたほとんどの人がいるのだろう。お菓子やお茶を口にしながらお喋りをしている人や、遊んでいる人、王子達に会うのが緊張するのかソワソワしている人もいる。
「もう、皆来ているのね。出遅れちゃったかしら? あっ、あっちからいい匂いがするわ!」
「お嬢様、走らないで下さい!」
ウララの注意する声なんか耳に入らず走り続ける。
(さすが王宮の庭園、美味しそうなものが沢山あるわ。全部お腹に入るかしら?)
グイッ!
夢中で走っていると左腕を誰かに引っ張られた
(あぶっ、なっ、い!)
引っ張られた勢いで後ろに倒れそうになったが重心を前に倒してなんとか踏ん張る。
「だ、れ?……ってアリナ?」
「はぁー、もう、いきなり走り出したら危ないでしょ?それに走ったらせっかくのドレスが汚れるわ」
「ごめん、」
「分かればいいの」
ニコッと笑ってはいるが、もうしちゃダメよと注意されてる気になる。
「笑顔が、怖い。」
ぼそっと相手に聞こえないように呟やく
アリナはエフェクター公爵家の娘で、アリナとローゼリアの母同士の仲が良く、それで2人は幼い頃から一緒に遊んでいた。いわゆる幼馴染だ。
「張り切ってるのね、ローゼリアは」
「当たり前でしょう?王子殿下の目にとまらなきゃなんだから!」
「まぁ、そうね」
「アリナはもしかして興味ないの?」
「うーん。 そんな事より今日はユーシュマーテ様と一緒じゃないの?」
(そんな事って!アリナ興味無さすぎじゃない? あっ!でもライバルが減るからいいのか…?)
この国の公爵家はローゼリアのカリアス家、アリナのエフェクター家、最後にユーシュマーテのネメシア家の三家しかなく、主にこの三家が国の権力を握っている。
婚約者候補とかも爵位順にいけば私とアリナが有力となる。だからそのアリナが興味ないんだとしたら私が最有力候補となるから、私にとっては有難い。
「ユーシュマーテと一緒にいたらアピールできないじゃない!殿下にアピールするのに他の令息と一緒にいる令嬢がどこにいるの?」
「まあー。確かにそうねー」
ユーシュマーテというのはネメシア公爵の息子でユーシュマーテのお父さんは国王の弟だ。
私とユーシュマーテはお父さん同士が仲良くて幼い頃からよく遊んでいた。アリナと同じように幼馴染だ。
「あっ!ローゼリア、王子殿下達よ。行くんでしょ?」
「う、イタッ!」
「え?ローゼリア?」
アリナの問に返事をしようとしたら頭に激痛が走った。それと同時に聞きなれた声で聞いたことがないセリフが頭に響く。
【リアそんな事してはだめ。あなたが悪くなるわ】
【そんなのリナには関係ないでしょ?】
(な、にこれ?)
「ローゼリア?大丈夫?!」
「えっ、うん、大丈夫…
アリナは私のことリアって呼んでたっけ…?」
「え?呼んだことないけど。どうして?」
「な、何でもない」
不思議なものを見る目で見つめられるけど、どうすることもできない。自分でも理解出来てないことを上手く説明する自信なんてない。
「アリナ早く行かないと先越されるわ」
アリナが来ていると信じて殿下の元へと向かう
はぁー やはり先を越されてた。殿下の周りは令嬢たちでいっぱいだ。
「あれ?ローゼリア?前に行かなくていいのか?」
「え?あーユーシュマーテ。いや、今は無理かな?と思って」
「え?……ローゼリア大丈夫?」
「ユーシュマーテ様もそう思います?今日のローゼリア変なんです」
(2人して大丈夫?だとか変だとか失礼すぎない?確かにいつもの私だったら令嬢をかき分けてでも前に行こうとするはず。でも今日は何かが私に王子殿下の元へ行ったらだめって訴えてくる。それに気分も優れないし、順番が来るまで待つことに決めた。まあ、順番が来るとは思えないけど)
「……よな。おーい!マティアード……殿下」
「ちょっと何して?!」
「え?……あー。マティプレットも呼ぶ?」
「そうじゃなくて!何で殿下を呼んでるのよ」
「いや、ローゼリアが自分で行かないからアリナと話して俺たちで呼ぼうって事に…」
(はぁー、なんなの?私は待つって決めたのに勝手に呼ぶなんて…それに2人は興味なかったんじゃなくて?
あぁー、こっちに来てるよ。もう、こうなったら覚悟を決めるしかない…!)
「ねぇ、ユーシュマーテ僕を呼ぶのは良いけど大勢の人の前なんだからいくら従兄弟でも敬称ぐらいつけら方がいいと思うんだけど…?」
「いや、そう思って最後につけたんだけど、聞こえなかった?」
「「「 うん 」」」
「おい!」
王子殿下とユーシュマーテのやり取りを見ていたら緊張が解け思わず返事をしていた。それはアリナも一緒なのだろう。
「で、こちらは?」
「お初にお目にかかります。カリアス家のローゼリアと申します」
「お久しぶりでございます。エフェクター家のアリナと申します」
(ありがとう、ユーシュマーテ。おかげて緊張せず挨拶できた。これでもう)
ズキッ!
(いたっ!またこの痛み)
「僕はマティアード・サネス。これからよろしく。とこ…」
ズキズキと頭に痛みが走る。アリナの時と同じように聞き覚えのないセリフが頭に響く。
もう王子殿下の声は耳に入ってこない
【ごめん、ミティアと話す事があるから、もう行くね】
【そんな…マティアード殿下どうして…?】
(うぅ。ほんと、なに、これ?……もう、む、り)
ドサッ!
「「「 ローゼリア 」」」
悲しい運命がローゼリアを深い眠りへと導く
読んで下さりありがとうございました!
次話は明日の予定です