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3/3

 ふと周囲を見渡すと、白い空間は既になく

目に映るのは、愕然とした

スクナとギユウの顔であった。


「なっ、どうやって……」


 スクナの精一杯に絞り出した声はいつもの威勢など

どこにも感じさせないほどか弱かった。


 ギユウは腰を抜かして立てないでいる。


「……『メテオ』」


「ッ!!」


 まるで数百年振りに声を発したのかと思うぐらい、

声が出しずらい。


 一方で、魔法の威力は以前と

比べても数百倍に跳ね上がっている。


 これが、賢者の魔法。


 壁に叩き付けられたスクナには目もくれず、

自分の開放された力の観察を続ける。


「なに、してくれてんだよッ!!!」


 激昂したスクナが魔法を放つ。


 あの大きさからして、『メテオ』よりも上位種の

火魔法だろう。


 軽く手を広げ、前へ突き出す。


 なるべく薄く構築した防御魔法に、

スクナの火魔法は呆気なく消失してしまう。


「……ふざけるなァッ!!!!」


 先程の火魔法ですら、普通魔法では最大火力の魔法に位置づけされたものだが、それを何発も、

先程よりも高火力で打ち出してくる。


 やはり、スクナは天才だ。


「『メテオ』」


 が、たかが天才程度で賢者に勝てる道理はない。


 ひとつひとつに確かな殺気がこもった魔法を

ひとつひとつ撃ち落としていく。


「ほら、終わり?」


 スクナに向けて、魔法を放つ。

しかし、スクナにはもう防御魔法を

張る程の魔力も残っていなかったようだ。


 あまりにも呆気なく、スクナは壁に

引き寄せられるように飛んでいってしまった。


「次は、お前だ」


 座り込んで怯えたギユウに告げる。


「ま、待っ……」


 空気の震えを頬で感じながら、

私はこの場を後にした。







 私が賢者として崇められるのは、

優れた魔法適正の他にユニークスキル『必殺』を

持ち合わせていたというのも大きな理由である。


 スクナの『黒閃』は、全ての魔法の

レベルを一段階上げるもの。


 一方私の『必殺』は、

全ての魔法のレベルを二段階上げ、最小コストで

最大威力を発揮することが出来るというものだ。


 ずるい、と言われて当然なこのスキルは

私に苦労という経験を味わわせなかった。


 だからこそ、転生後では人一倍苦労を

味わったのかも知れない。


 なんて、考えながら目的地へとたどり着いた。


 重厚な鎧に包まれた戦士や、

魔法効率を高めるローブを魔法士で溢れる場所。


 そう、ギルドだ。


 ここにも、私をコケにしてくれた者は大勢いる。


 今の実力を持てば、ここにいる冒険者を

壊滅させること等容易いが、

私の目的は滅亡ではなく復讐なので

殺してしまっては意味が無い。


 早速、受付へ向かう。


「この『外界からの侵略者』の討伐を受けたい」


「えっ……と」


 思いもよらない事を言われ、受付は戸惑っている。


 私の発言を聞いた、周囲の冒険者は

隠すことも無く笑い飛ばす始末。


「ほ、本当に受けるんですか?はっきり言って

貴方の今の階級ではかなり厳しいですよ」


「構わない」


「うーん、少々お待ちくださいね?」


 受付は奥の方へと下がり、

なにやら話し合っているようだ。


 まぁ、今までギルドの最低階級だったのが

突然最高階級の依頼を寄越せと

言うのだから、仕方ないが。


「お待たせしました。

それでは、行ってらっしゃいませ」


 一枚の誓約書と共に現れた受付は、

そう言って再び事務作業へと戻っていった。


 私の受けた依頼。

『外界からの侵略者』の討伐。

このモンスターは私を今の時代へ

飛ばした張本人でもあり、

今のモンスターを発生、

活性化させている原因でもある。


 このモンスターを討伐すれば、

他のモンスターは弱体化し

衰退の一途を辿ることになる。


 モンスターが滅べば、次に滅ぶのは冒険者だ。


 私をこのような境遇に追いやったモンスターにも

俺を見下し蔑んでいた奴らにも苦痛を

味わせることが出来る。


 今はまだ笑っていられる冒険者達を

横目に、俺は町を出た。

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