親愛なるホールデンへ
親愛なるホールデンへ
残念のお知らせから話を始めなきゃいけないことを許してほしい。
世界はますます悪くなるばかりだ。
何が悪いかって言うと、人間たちが、だ。
君の願いはいつまで経っても叶いそうにないよ。
それどころか、ライ麦畑はどんどん遠ざかるばかりさ。
子供が落ちた先には君のような優しい人間はいないだろう。
きっとロボットが自動で子供をキャッチして、親へと送るシステムが作られるんじゃないだろうか?
いや、きっと立ち入り禁止になっていても可笑しくないさ。怪我をするかもしれないって理由でね。
そんなバンクシーの絵画のような未来を連想してしまう世の中さ。
ホント、糞食らえだよ。
今僕らができることなんて、せいぜいハンチングを逆に被ることだけだ。
笑い男のようにね。彼のように情報の墓場に埋もれ、沈黙へと沈もうか。
そんなことばかり考える毎日だ。
本当に気が滅入る。
「叛逆」が商売になったことに違和感を感じるのは、僕だけじゃないはずさ。
でも、それは最後に家に帰ることを選んだ君と同じさ。
君と僕らの憤りはきっと似ているだろう。その対象も。
そして、結論も似ているのかもしれない。
平穏には勝てない。
ハルヒもミァハも平穏に対して、同じ虚しさを感じたのだろうか?
どうだい、ホールデン。家に帰った君は、妹を置いて再び家出することはできたかい?
名も無き叛逆者より