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時は少し戻り

---3日前---


「今日は凛さんと打ち合わせの日かぁ」


大きなため息が出る。

凛さんは俺の担当編集者だ、一言でいうと美人、とても美人だ、・・・でも美人なんだけど、感情がないというか冷静すぎるというか、ちょっと怖いんだよな。笑わないし


「今日は電話で打ち合わせだけど、緊張するなぁ」


ドキドキしながら待っていると

ブーブーとスマホが鳴った


「来たっ」


俺は相手から見えないと知りつつも正座をした


「お疲れ様です、犬塚です」

「凛さん、お疲れ様です」


相変わらずいい声だな


「先生、前作が完結してから1ヶ月経とうとしていますが、新作の方はどうですか?」

「いやぁまだ何も思いつかないんですよ」

「そうですか……」


長い沈黙

あああああ辛い辛い!

しばらく悶えていると


「先生、よろしければ私から提案があるのですが…」

「聞かせてください!」

「先生、今ライトノベルで流行っている題材はなにかご存知ですか?」

「異世界転生ですよね?」

「異世界転生は確かに流行ってます、しかし今は異世界転生にあるものを組み合わせたのがとても流行っているんですよ」

「なんですかそれは!僕はヒットするためならなんでも書きますよ!」

「それは…」



「エロです」

「………エロですか」

「ええ、エロです」


俺は美人の口からエロという単語が出てきたことに驚き、そして興奮した。


「先生、次回作は異世界エロでいきましょう」

「え、決定ですか?」

「決定です。二作目もヒットを出すとなるとやはりこれしかありません」


困ったな、これは困ったぞ


「凛さん、異世界エロはちょっと置いておきませんか?」

「しかし先生、今異世界エロはとても人気があります、これしかないですよ」

「いやでもエッチなの書いてるって家族に知られたら…」

「先生、ヒット作を出したいと言ったのは先生ですよ、甘えた事を言わないでください」

「すみません…でも」

「なにか不都合なことがあるんですか?」


凛さんちょっと怒ってるのかな?声が落ち着きすぎて分からないから余計怖い…


「いや、不都合なことは無いんですけど」

「ならなぜですか?」

「いや…」



「僕今まで彼女できた事ないのでエッチなシーンの書き方がわからないんですよ…」

「ああ…」


再び長い沈黙

俺はもう悶えてはいない、そのレベルを通り越して茫然としているからだ。


「先生」

「なんでしょう」

「辛い思いをさしてしまい申し訳ありませんでした」

「そんな、謝らないでください!」


みじめに思えてくるでしょ!


「しかし先生」

「気にしないでください、凛さん」

「そうですか…ありがとうございます」

「いえいえ」

「では次回作の件は今回は保留と言うことで…」

「待ってください!!」

「なんでしょうか?」

「凛さん、僕書きますよ…異世界エロ」

「先生、正気ですか?」

「もちろん!僕は期待の高校生作家ですよ!経験はなくとも書く事はできますとも!」

「さすが先生です、では次回作は」

「「異世界エロで!」」



そして現在へ……

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