第三話
「結局得られた情報は僅かでしたね」
と、運転しながら葉山は言う。
「それでも、事件には一歩近づいた。だけど、あの不登校の間に彼の身に起こったことが気になるわ」
「それもそうですね。でも、彼女に聞いたら分かるかもしれません。あっ、ここですよね」
と葉山はケーキ屋さんを指した。名前は「Feminine」、意味は「女らしく」という意味らしい。外装はとてもおしゃれで可愛らしかった。
「じゃあ、入りましょっか」
と葉山はうきうきしながら入っていく。
学校での彼の変わりようが気になる明石は気になっている。
あの先生の言葉が頭を離れない
「彼はその不登校から学校に来た後、変わり果てていました。性格はとても荒くなり授業も全然聞かなくなりました。彼に『何があったんだ。教えてくれ!』と言っても『お前には関係ないことだ』としか言ってくれなくて。そして、その後も町の不良ともつるんでいたりなど色々していました。そして、その後ご存じの事件を起こして...」
と、下を向き泣いてしまう先生。よっぽど八代さんのことが好きだったことが分かる。
最後に先生が
「私から言える情報はこれまでですが、当時仲良くしていた女子がいました。たまにここに遊びに来るんです。最近はここの近くにあるケーキ屋さんで働いていると言っていました。名前は多分『Feminine』という店だった思います。刑事さんどうか事件の真相を見つけてください」
とだけ言われ私たちは大学を後にした。
しかし、その後に葉山と若い先生?が2人で話をしていたこともまた気になる。
そして、現在仲良くしていた子が働いているケーキ屋さんにいるというわけだ。
葉山がゆっくりドアを開ける。
「いらっしゃいませ!」
店員の声が店内に大きく響く。今日は平日であり、時間は午後2時なので人はいなかった。お店のショーケースには沢山のケーキが並んでいる。
「すいません、私たちこういうもので。ここに近くにある大学の出身の方にお会いしたいのですが」
と、葉山はレジにいた店員に警察手帳を見せた。
「ここにこの大学の卒業生はいるでしょうか?」
すると、レジの女性が
「はい、私です。実はここ私一人で営業してるんです」
「それはすいません。今から少しお時間いただけないでしょうか」
「別に構いませんよ、今から休憩に入るとこだったので」
そう言い、2人は彼女の案内で休憩室に行き、そこで話をすることになった。
「何となく用件は分かります。八年前の八代くんの事件ですよね」
「その通りです。大学に行ったところあなたが八代さんと一番仲が良いとききましたので」
「まあ、その通りですね。その前にお名前を教えていませんでしたね。新田御子です、よろしくお願いします」
「わたしは明石です。彼は葉山です。さて、本題ですが、彼が一時期不登校になったと聞きました。そこについて何か知っているかと思いまして」
「はい、一応少しですが。カメラでとった写真をUSBメモリに保存してます。いつか、役に立つかと思って。」
と言い、彼女はバックからUSBメモリを取り出し近くにあったPCに挿した。中には3枚の写真とメッセージがあった。
1枚目は事件が起こる3ヶ月前。つまり、不登校になった時期と推測できる。
そのメッセージには「誘拐された」と書かれた文章と手足を縛られた八代さんの写真があった。
「これは...」
「これは...」
2人とも言葉を失った。
「まさか、誘拐されていたとわね」
「確かにこれは衝撃です。すいません、次のを見せてくれますか?」
「分かりました」
と言い新田さんは次を見せてくた。
2枚目の写真は1枚目から3週間後に送られてきた。その写真は、1枚目より体が腫れており、そして何故か顔に仮面を着けていた。
「ねぇ、先輩。何で八代さん顔にお面着けてるんですかね?」
「そりゃ、殴られた後を見せないためだろ」
「でも、それじゃ八代さんが更に危険におかされている事が分かりにくないですか?」
「そりゃそうだな」
「私もこの写真を見たときに不思議に思いました。でも、なにも分からなくて」
「そうですか...では、次を見させてよろしいでしょうか?」
そして、最後の写真を見た。
「くっ...」
「くっ...」
2人は言葉を失った。
その写真には2枚目と比べものにならないほど体は傷だらけだった。背中には火傷のような跡もあった。八代さんは見るも無惨な姿になっていた。
「これは、さすがにひどいですね」
明石からの返事がこない。横を見ると明石の顔は絶望していた。
これを見て笑えるやつなんてこの世にいない。
さすがにこれを見すぎると精神が辛くなるので帰ることにした。
そして今回も葉山は新田さんと話をして写真を撮っていた。