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④「お兄さまの執事」

④「お兄さまの執事」


――ギルバートさまには、本来はメイドである私とは違う、れっきとした執事が仕えている。その名を、フェルナンデスという。私と同じように、使用者の霊力と水で動く生命人形(リビングドール)であり、黙っていれば、ギルバートさまと並ぶ二枚目である。そして、ギルバートさまに似て、口を開くと三枚目である。

「マーガレットお嬢さま。眠れないのでしたら、夜通し起きていてはいかがでしょう。ただし、どれほど眠くなろうとも、日が昇ってから沈むまでは寝てはなりません」

 執事が淡々と言うと、ベッドの上でウサギのぬいぐるみを抱きかかえたマーガレットが、低く唸りながら言う。

「うぅ。そういうことを言ってるんじゃないの!」

「では、どういうことでございましょう?」

 執事が首をかしげながら訊くと、マーガレットは執事から視線を逸らし、シーツの上に指で三角や丸を描きながら言う。

「あのね。フェルナンデスに、面白い話があると言われたの。それで、最後まで聞いたんだけど。そしたら」

 マーガレットがそこまで言ったところで、執事は後を続け、ベッドサイドに腰を下ろしながら言う。

「怖い話だったのですね。朝からシーツとカバーを全取り替えするのは嫌ですから、お引き受けしましょう」

「渋々なのね。こんな可愛い乙女と添い寝できるっていうのに」

 口では文句を言いながらも、マーガレットは、いそいそと枕を二つ並べ、その片方に頭を乗せて横になる。

――明日の朝まで、大人しく寝られるのでしょうか。今朝は、枕の上に足が乗ってましたけど。

  *

――再び、朝。これで、丸一日が経過した訳です。

「どうして、朝まで一緒に寝てくれなかったのよ」

 ネグリジェ姿でぼさぼさの髪をしたマーガレットが、ぬいぐるみを執事に投げながら、頭からポコポコと湯気でも出しそうな勢いで怒りをあらわにすると、執事は片手で長い耳をキャッチしながら、平然と言う。

「破損の危険性が高いと判断いたしましたので、速やかに撤退いたしました。それより、お嬢さま。早く、ドレスに着替えなさいまし」

「いやよ。あんな窮屈で動きにくい服、絶対着ないんだから」

――フリダシに戻る、でございます。また今日も、昨日と変わらぬ一日がスタートいたしました。


※執事:フェルナンデス。黙っていれば二枚目だが、口を開くと三枚目。使用者の霊力と水で動く生命人形(リビングドール)。燕尾服と白手袋、眼鏡を常用。


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