幼なじみ
幼なじみの彼は、いつもわたしの部屋へ勝手に入ってくる。子供の頃から一緒だが、そろそろ異性として意識し始めていた。
ある日わたしは、自分のベッドでうたた寝をしていた。そんなとき、微かに部屋の扉の開く音がした。
わたしは、思わず飛び起きた。すると、彼と頭がぶつかってしまった。
「いたっ」
「いてっ」
お互い頭をなでている。
わたしはつい彼に向かって言ってしまった。
「どうして部屋に入ってくるのよ。勝手に入らないでって言ったじゃない!」
「別に部屋に入るくらいいいだろ」
「じゃあ今のは何!?わたしの顔を覗き込んだの?」
「いや、それは寝ているか確かめようと……」
「だから勝手に入らないでよ!」
「……キスしたこと、怒ってるのか?」
「えっ、キス……したの……?まさか寝てる間に……?」
「その、えーと、起きてたんじゃなかったのか?」
「寝てたわよ!」
「受け入れてくれたんだと思って……」
「そんな……こと言われても……」
わたしは、きっと真っ赤な顔をしているだろう。彼はわたしを好きなの……?
「その……どういう意味で……?」
「それくらい察しろよ。長い付き合いだろ」
彼はふいっと横を向いてしまった。しかし、耳が赤い。彼が照れ屋なのは知っている。わたしにキスをするのも勇気がいったに違いない。わたしは、
「うん、その……わかったわよ。いいよ」
と言った。それだけで彼には通じたようだ。彼ははにかむように笑った。
「明日から学校に行くとき迎えに来るから」
「う、うん、わかった」
彼はそう言うと、わたしの部屋から出ていった。