表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋愛模様  作者: 奈月ねこ
13/19

バレンタインデー

 俺には彼女がいる。少し口うるさいが、可愛らしい一面もある。

 俺たちはごく普通の恋人同士だった。ラインやメール、デートでドライブ。二人で過ごす時間はとても楽しかった。だが、それが壊れた。俺が大阪へ転勤することになったのだ。東京からでは毎日会うことも出来ない。

 彼女にどう言おうか。遠距離になるけど待っててもらえるだろうか。

 俺は彼女をデートに誘った。いつものドライブ。車の中で話そうと思ったからだ。


「今日は海を見に行かないか」

「この寒いのに?でも車から出なければいいわよ」


 俺たちは車で海へ行くことになった。

 どう切りだそうか……。


「……ま、琢磨!」

「……え」

「もう~。聞いてるの?」

「……ごめん。聞いてなかった」

「どうかしたの?」


 これはもう言わなければいけないだろう。俺は車を海沿いの道に止めると、話し出した。


「実は俺、転勤するんだ」

「え?そうなの?どこ?」

「……大阪」

「……」


 黙り込む彼女。俺はなんて言ったらいいんだ。結婚か?いや、まだそこまで話してない。本当はついてきて欲しい。だけど、彼女も仕事がある。それなりに準備は必要だろう。


「……なるべく休みの日には帰って来るから」


 俺は精一杯声を絞り出した。


「……遠距離になるってこと?」

「ああ、そうなるな……」

「……いつから?」

「……来月」

「すぐじゃない!休みの日だって毎回は帰って来るのは無理でしょ?」

「それは……」


 俺は言葉につまってしまった。


「……今日は帰りましょ」

「……あ、ああ、そうだな」


 こうして転勤前の最後のデートは終わった。

 それから彼女にメールしても返信がない。俺たちはこれで終わってしまうのだろうか。今まで楽しく過ごしてきた二年間は何だったのだろう。

 俺は新幹線の日時を彼女にメールで送った。これで彼女が来なかったら、俺たちは終わりだ。

 出発日。俺は東京駅へ向かった。そして、ホームで彼女を待っていた。しかし彼女は来ない。これが答えなのか……。

 俺が新幹線に乗り込もうとした時だった。


「琢磨!」


 彼女が走ってやって来た。


「美紀!」

「琢磨、これ」


 彼女は俺に紙袋を手渡した。

 俺は確信した。

 俺は新幹線の入り口で彼女を引き寄せ、唇を奪った。


「たく……ん……」


 彼女の吐息が漏れる。


「待っててくれ」


 俺のその言葉と同時に扉が閉まる。彼女が何か言いたげに窓越しに見ている。それからゆっくりと走り出す電車。それは彼女をホームに置き去りにしていく。


 俺はしばらくそこに立ち尽くしていたが、自分の席へと向かった。

 そういえば美紀がくれたものは何だろう。

 俺は紙袋の中を見た。すると、美紀の好きなチョコレートのお店のラッピングされた箱が入っていた。ああ、明日はバレンタインデーだった。それにはカードがついていた。それを開くと一言文字が書いてあった。


「待ってるから」


 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ