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終わりという名の……

「くっ……」


リズたち5人は俺に敗れた。リズ以外の3人は死に1人は逃げた。リズも瀕死の状態で、床を自身の鮮血で汚し、荒く呼吸している。じきに息絶えるだろうが……念のため首を切っておこう。こいつを葬ったら、次は逃したやつだ。


「ぐあ……」


血によって赤く染まった氷刃をリズの首に当てた。するとポタポタと滴る赤い滴が刃の先からやつの首へと移り流れた。


「5人掛かりだったとはいえ、この俺に傷を負わせたことはほめてやる」


やつらは俺に敗れた。それは当然の結果……なのかもしれない。だがやつらはいくつかの傷を俺に負わせた。一番痛いのは脇腹に刺さった剣の傷だ。致命傷と言うには程遠いが、血が滲んで痛い……止血はしなければならんだろう……


「だが大人しく俺の忠告を受け入れるべきだったな」


「ばけ……ものめ……」


化け物か……まあこいつらはそう思って当然なのだろう……


「死ね……」


俺はリズの首をはねた。そして汚れた氷刃を床に落とした。


「リリィ。逃げたやつを追うぞ」


「……」


リリィに声をかけたが反応がない。意識がないわけではない。ただ少し震えながらこちらを見ていた。


「シラカゼさん……その人たちは本当に殺す必要があったのでしょうか?」


なるほど怖くなったのか……ここまでで既に何人もの人間が死んでいるが、確かにリリィは人を手にかけてはいない……帝国で戦っていた時すらもだ。


「怖くなったか?」


「はい……今更ですよね……でも、怖いんです。いえ、もっと前から怖かった。体が震えて、そんなの武者震いとか、体が冷えてるだけとか無理矢理自分の体を誤魔化してきました。でも……」


今の俺とリズたちの戦いでか……本当に今更な話だ。だがそうか……


「シラカゼさん。その人たちは死ぬしかなかったんでしょうか……? いえ、分かってはいます。シラカゼさんを責めているつもりはないですし、そもそもそんな資格私にはないです……すみません」


リリィは泣いていた。それがどうしてなのか、そしてそもどういう感情なのかは俺には理解できなかった……


「いや、いい。それでお前はどうしたいんだ? 別に止めたいなら止めてもいい」


「私は……もうできません」


……


「そうか……ではお前とはここまでだな」


そう言い残し、俺は逃げたやつを追いかけることにした。


「シラカゼさん!」


しかしリリィに呼び止められた……


「なんだ?」


「お役に立てずすみませんでした。それから今までこんな私を色々と助けていただいて……本当にありが……ありがどうございました」


リリィは2度俺に礼をした。1回目は謝罪、2回目は号泣しながら感謝の言葉を言い切って。


「謝罪はいらん。感謝の言葉もな。結局そんなものは俺にはとって無意味だからな……まあそもそれはどちらかと言えばお前自身を救うものなのだろうがな……フッ、まあせいぜい余生を楽しむことだ。ではな」


俺は今度こそリリィを置いてその場を後にした。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



逃げたやつは……残念だが見つからなかった。まあ今はそれよりも……


「……めんどうだな」


気づいていた。リズたちと戦う前から気づいていた。あいつの狂気的な殺意は強力だからな……なにせだいぶ離れた場所にいる俺にも伝わってきたほどだ。同時にあいつがウルと戦っているということも分かる。

仕方がないのでそっちの方を目指して走った。身体強化をしているとはいえ間に合うか微妙だ……せめてもう少し持ちこたえて欲しいが……

さて、しばらく走っていると……あいつの気配を徐々に強く感じるようになり、あいつの姿も見えてきた。ウルは……まだ生きているな。あいつに首を絞められているが……


「来たわね……」


あいつ……アリアは俺を見るとウルを投げ捨てた。


「やれやれまさかここでもお前の顔を見なければならんとはな……嫌気が差すぞ。お前のしつこさにな」


「あら~……ニム。本当に最低で冷たいのね……そしてバカ。まあ別にそんなことどうでもいいわ……どうでもいいからとっとと死んで!」


低い声で話すこいつの方が俺よりも冷たく残酷に感じるがな。

アリアは俺に向かって突っ込んできた……



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



アリアとの戦いはあっさりと終わった。それは当然と言える。


「お前は相変わらずバカだな。俺には勝てないと分かっていて挑む……呆れるぞ?」


「あんたは口が悪くなってますます最低ね。本当に最低……今回も私を見逃すつもりかしら?」


そうだな……その点は生前とは大きく変わったのかもしれないな……まあそれならばだ……


「いいや殺すさ」


俺は氷刃を振り上げた……だが……


「くっ……まさか……」


上を見ると黄色の蝶が俺の頭上を舞っていた。体が徐々に痺れ刃を振り落とせない……まずっ……

そう考えていると胸の辺りに痛みを感じた……原因は見るまでもなく分かる。アリアのナイフが俺に刺さっていることなどな……


「くくっはは、あははははははは……ニム! あんた本当にバカね」


なるほどな。アリアめ……汚い手だが効いた。俺は能力を無効にできる……発動に対してもな。だがそれが間接的な方法には直接でなければ使えない。ヴェリアの蝶は魔術で作られたもの。だから能力を無効にはできなかった。加えて能力自体を無効にしても効果は残る。無論それも多少はどうにかなるが一瞬の隙はできる。アリアはそれを狙って挑んできたのだろう。


「……ヴェリアを連れてきたのはお前だな?」


「ええ。もし万が一にでもあんたが蘇ることがあったら大変でしょう~? ええ、実際に蘇ったわ。だから備えておいたのよ……あんたを殺すためにね!」


アリアがナイフに力を込めた……俺の魂も壊すつもりか……


「あはは……死ねニm「死ぬのはお前だ」


……アリアを蹴りつけて吹っ飛ばした。そして刺さっているナイフを引き抜いた……更に血が出たがもういい。どうせ心臓をやられたのだじきに死ぬ。守りはいらない。魔力を込めて麻痺の魔術を無理矢理直し、全身を覆う白い闇に、白い炎に魔力の全てを注ぎ込む。もうこの肉体はいらん。全力で燃やしてやる。


「やめっ……うっ、がー!! 止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ!! ああー!! 私を汚すなー!! ああ、赤が!! 私の美しさがーーーーーーー!! 嫌だ! 嫌だ! まだ殺したい! 染め上げたい! 美しい赤に染め上げたいのにーーー!」


アリアを白い炎が覆った。白い炎は光を呑み、アリアを白く焦がしていった。


「許ざない……ニムーー!!」


アリアは燃えながらも最後の悪あがきとばかりに、俺にナイフを再び突き立てようと向かってきた。


「がっ……」


当然だが俺も全力でアリアを蹴りつけた。アリアはグチャッという音と共に吹き飛び地面に叩きつけられた。


「ああ、白に……あは、あはははは……」


アリアはまた最後に狂ったように笑うと動かなくなった。アリアめ……俺を殺すために自分を犠牲にするとはな……とはいえ甘かったな。俺が慢心して見逃すと思って油断したな……まあもっとも……


「がはっ」


油断したのは俺も同じだ。口を袖でぬぐった。無論そんなことは無駄だ。血は流れ続けるし、そももうすぐ死ぬ……自らの炎でな。だがその前に……

背後から音がした。振り替えると今から殺そうとしていた、ヴェリアがエルの足元に切り捨てられていた。エルはヴェリアが死んだことを確認すると俺の方へと走ってきた。


「来るな!」


そう叫ぶとエルは立ち止まった。


「シラカゼ……」


「エル。すまんが俺はもうすぐ死ぬ」


自らの死を告げるとエルは目を伏せた。俺の体を炎が燃やし、そしてそれは白い灰となって霧散している……


「俺の後任はお前だ……と、言いたいところだがエル。あとは自由にやっていけ」


「シラ……カゼ……」


「……もしフィリユスやリリィ……ついでにその他のやつにも会ったらすまなかったと伝えておけ」


まああいつらが生きているかわからんが……生きているだろう……なにせ……


「必要ないよ! そんなの!」


今目の前にいるのだからな……

フィリユスはこちらへと走り寄ってこようとして……エルに能力で止められた。


「放して! 放せよ!!」


「無駄だフィリユス。俺はじきに死ぬ」


これが運命だからな……俺の……


「シラカゼさん……」


「すまなかったな。良いリーダーじゃなくて」


「そんなこt「あるだろ……別に今さらフォローする必要はない……フッ……ではな」


体と共にかすれつつある意識のなかでフィリユスの叫び声が聞こえた……ああ、そうだなできればもう少しお前たちを見ていたかったよ……フッ、まあお前たちの世話などもうお断りだがな……

体は徐々に灰となり、全てが灰になったとき一気に宙へと霧散した……



~THE END~

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