戦争という名の……13
アルスたちを仲間に迎えてから数週間経った。あれから行ける国や町を片っ端からまわった。だが結局俺たちが焚き付けられたのは2国だけだ。ま、時間が足りないこともあるが、邪魔をされたからな……誰とは言わんが……
転生者の方はアルスたち3人以降4人に会った。3人は仲間になったが……あと1人は……
「「はあはあ……」」
……
「おい! お前たち!」
「「なんでしょうかご主人様!」」
なんでだ!? なぜストーカーが増えるなんてことになったんだ? 俺はスキルを使っていないというのに……
「俺を凝視するな気持ち悪い! はあ……気持ち悪い……」
「その蔑みの目!」「罵りのお言葉……」
「「最高です!」」
なんだその無駄なコンビネーションは? 気持ち悪いんだよ。
「いやあ~おチビ~。流石だね。男にもモテるとかほんとビックリだわぁ~」
……このポンコツが。今すぐスクラップにしてやる。
「モテる男はつらい……zzz……」
妙な寝言を……
今寝言を呟いた少女は新しく連れてきた転生者のクリエだ。出会ったときからこのように眠っている状態だった。だが面白いことにこいつは眠っている状態でも会話ができるようだ。こいつが起きたらどうなるのやら……まあ今のところずっと飲まず食わずで眠っているためどうなるかは分からんし、故にクリエは自分で歩くことができないため今アルスにおぶってもらって移動している。
「いやあ~いいねえ~シラカゼ君! モテモテだねえ!」
このハイテンションの女はハテン。ただの酔っぱらいだ……
「怖い怖い怖い……シラカゼさんが怒るとか怖い怖い。怒らせようとしてる子達も怖い怖い……」
で、頭を抱えて縮こまっている少年がキュラー。なぜかは知らんがずっと怖い怖いと言い続け、何かを常に恐れているようだ。だからまあ少し脅したらあっさりついてきた。
「暴力はダメですよシラカゼ君」
ふん、さんざん邪魔してくれたくせにしてはよく言うものだ。聖女はそう言いながら少年の両肩に手を置いた。
「っ触らないで!」「あっ……」
するとキュラーはその手を振り払い俺のところまで走ってきて、俺を盾にするように聖女の方を見た。
「ん……聖女嫌われてる……zzz」
聖女は少年に拒否されて落ち込んでいる。まあそれに関しては今まで邪魔されてきた分ざまあみろとしか思わん。だが怖いと言いつつ俺の後ろに隠れることに関しては疑問だ。
「矛盾しているがその子にとって君が怖い存在だからこそ安心できるんだろうな」
怖いから安心できる? 矛盾だ。意味が分からん。
「エド。それでは意味が分からん」
「ん~つまりはだ? 怖い存在ということは強い。強いということはそれだけ頼りになる。だから安心できるというわけだ。その子にとって怖いという感情は俺たちの言う怖いではないんだろう」
ふーん? まあ憶測でしかないのだろうから納得はできんが。おおよそそういうものなのかもな。いや実際分からんでもない。俺の感情もこいつらからすれば訳の分からんものだ。その点まだ分かりそうなこいつの方がマシかもしれん。
「あのおじさん怖い。何言ってるかわかんない。怖い。」
……
「つまり今のもお前の解釈で言えば良くも悪くもお前がすごいことを言っているやつ……ということになるな」
「そうだなあ。エド。ちなみに私は後者だと思うぞ?」
「はあ……やれやれ……」
そんな他愛のないやりとりを道中しているとウルの城に着いた。門をくぐりドアを開けた。
「おかえり……」
入り口の広間にはアイゼルが立っていた。
「他のやつらは?」
「ウルたちは奥。あとはまだ」
そうかどうやらエルやリアたちはまだらしい。リアたちの方は知らんが、エルからは随時連絡は受けているから大丈夫だろ。
「まあ待つとしよう」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「エルさんも来ました」
「そうか。では出迎えに行くとしよう」
城に到着してからしばらくしてリアたちが到着した。そして今単騎で旅に出していたエルも帰ってきたようだ。
「お前たちは休んでいろ。リリィお前も行くか?」
「はい」
ということでリリィと共にエルを出迎えてやることにした。あいつからの連絡によればドワーフの国のやつらとうまく話し合いができたらしい。あとはうまくいかなかったようだがな……で、なにやら転生者を1人つれて帰ってくると言っていたな。それが本当なら上出来だろう。
さて門のところで待っているとエルともう1人がこちらの方に歩いてくるのが見えた。
「あ、来ました」
「……」
エルの横にいる男……なるほどな。また面倒なのものをつれてきてくれたものだ。まあ勝手についてきたが正しいのだろうがな。
「久しぶりだなエル。帰ってきて早々で悪いがリリィをつれて先に城に入って休め。俺はそいつと話がある」
「……分かった」
察しが良くなったものだ。エルは言われた通りにリリィをつれて城へと入っていった。
「さてお前も久しぶりだなガット。無論俺としてはお前には会いたくなかったがな」
「いやあ~ひどいなあニム……いや今はシラカゼ君だったな」
相も変わらず胡散臭い。その上ろくでもないことを今こうして会話をしている間も思考を巡らせて企んでいるのだろう。
「ふん、まさか議会のメンバーが……それも第8席のお前直々に来るとはな」
「それは当然だよ。なにせ君だからね。むしろ俺ごときですまないとすら思うよ」
笑えん冗談を。何が俺ごときだ。思ってもいないことを良くもまあすらすらと口にできたものだ。議席持ちが本来ここに来るなど……まあこいつは論外だから仕方ないが、本来は下界に降りてくるなどそう簡単にはできることではない。なにせ神々との約束があるからな。
「議長がとても会いたがっていたよ……」
ふん、あいつか……やれやれなぜかあいつには気に入られているからな。
「そうか。まあそんなことはどうでもいい。で、なんの用だ? 用件次第では……」
ここで殺す……でないと危険だからな……
「おいおい待ってくれよ。俺があんたに勝てるわけないだろ?」
ガットは慌てた様子でそう言った。
「無論だ。だからとっとと用件を言え。殺す」
「殺すこと前提!?」
当然だ。俺から言わせればこいつは圧倒的なまでに敵だからな。
「あーらら、少し見ない間にますます怖くなっちゃって~……まあいいや。それで……議長からの伝言があるんだよね」
ほうあいつからの伝言か。とりあえずこいつらに俺の存在が既にばれていたのは確定した。ともすればさて何を言ってくることやら……




