戦争という名の……12
「ここだ」
「ほう?」
俺たちはアルスに連れられ、町外れの洞窟にやって来た。面白いことにこの洞窟、入り口が見えないような細工をしてあるようだ。なるほど、どうやら転生者が他にもいるというのは本当らしい。なにせ調査の結果ではこの国には1人しかいないと言っていたからな……思った以上にうまく身を潜めているやつらがいるらしい……なぜ身を隠しているのかは知らんが。
「ついてこい」
アルスは岩の壁に向かって歩いていく。すると壁にはぶつからずそのまますり抜けていった。俺たちも後についていった。洞窟の中はランプが奥の広間のようなところまで続いており、壁や地面は自然のそれとは違い誰かが作ったということが伝わってくる。男についていくと例の広間についた。広間はきっちり四角形の形状をしているようだ。広間の奥の壁の真ん中には木の扉が1つあった。アルスがそのドアを開けると……
「ん? なんだお前か。いつもノックしろと言ってるだろ」
女がいた。年は20代くらいだろうか? 見た目は……まあ転生者だから良いのは当然かもしれんが。地味に胸がでかいのがむかつく。どこかのバカどももでかかったからな。
「……」
「……なんかあったようだな? それにお前の連れ。初めて見たが誰だ?」
当然だが女は俺たちの方を見てアルスにそう聞いた。
「すまねえ……メルク」
「ん~……よく分からんがなにやら込み入った事情があるようだな? まあ座れ。そこのお前らもな」
そう言ってメルクという女はテーブルと椅子を作成した。地面から生えてきたから土属性の魔法で作ったのだろう。とりあえず言われた通りに座った。
「エドー! ちょっと来てくれー!」
メルクが俺たちが入ってきたドアとは別のドアを開けて誰かの名を叫んだ。しばらくすると男がそこから出てきた。
「なんだメルク? 俺は今忙し……ん? アルスとその他見慣れねえやつがいるが……なんかあったか?」
「ふう……さっきそこのガキにボコられたんだよ」
したな。しかしまあ不可抗力だからな。相手が先にやってきたわけだし。だというのにこの男は俺をガキ呼ばわりした挙げ句、被害者のそれと同じく恨めしそうに顔を歪めて俺の方を睨んできた。
「ボコられた? ふうん? なるほどやっぱあんたらも転生者か」
メルクとエドというらしい男も席についた。
「それでどういう用件だ?」
「さてな? ここに来たのはそこの無様にボコられた男が助けてくれと懇願してきたからだ」
「おい! 俺は命乞いなんかしてねえ」
命乞いはしていないが国には手を出すなとは言った。
「誰も命とは言っていない。まあ似たようなものだろ?」
自分の命も守れないのに国のことなど気にかけていられるわけがない。だからまあ結果的に同じことだ。
「もういい。さっさと何があったか言え。俺は忙しいんだ」
ふん忙しいなんて言っていられるのも今のうちだ。
仕方がないのでざっくりと俺たちの目的などを話してやった。
「……なるほど……いや全然納得はできんが、お前たちの目的は分かった。つまりこの国も他所の喧嘩に巻き込まれたくなかったら俺たちも戦力になれということだな?」
俺が話を終えると、エドという男がそうまとめた。
「いいや」
俺は素早く氷刃を作り、その切っ先を男に向けた。
「……どういうつもりだ?」
「残念だが俺の目的は戦争ではない。ただ邪魔だから潰すというだけだ。そしてそんな些事よりも俺の目的は重要なものでな? ここで出会ってしまった以上戦争だけでなく今後もついてきてもらう。それが嫌ならここで死ね」
隣に座っている戦闘バカはもう忘れているだろうが、そも戦争以前に俺たちには俺たちの転生してきた理由がある。転生者を集めるという理由がな。
「お前の言葉に黙って従うとでも? お前の言う重要な目的とやらもお前は言っていないと言うのにだ」
「言ったところで、お前たちの答えはNOだろ?」
建前とはいえ、転生者を減らすための戦力となれと言ったところで今までのやつらよろしく納得するわけがない。だからまあこれが一番手っ取り早い。
「シラカゼ君教えてあげてください」
するとまた聖女が邪m……うん、邪魔をしてきた。全く面倒なやつだ。よく考えたらなんで俺たちについてきたんだ? リアたちの方でもよかっただろ。というかこいつあいつらの知り合いなのだから、あいつらについていくべきだっただろうが。
「嫌だ」
「お願いします」
嫌だと言っているのにも関わらず、聖女はお願いですからと言いつづけている……
「おチビ。話進まないからとっとと話しな? 俺もう疲れたし」
「ふん、このポンコツめ。あとで分解してやる。原子レベルまでな」
「原子レベルとか怖っ」
怖いと言いつつも飄々としていやがる……
「痛っ……」
「いいだろう話してやる」
アシスを殴っておいた。仕方がない手が思わず滑ってしまったからな。
「なぜ上から目線なんだ?」
アルスがジト目でそう言ってきた。
「文句があるか? あるならここで死んでもらうが?」
「いいやねえよ。たく、なんなんだよこのガキ……」
やれやれガキガキうるさいやつだ,。
不満なものの仕方がないので目的を教えることにした。勇者の召喚が近いこと、その上で転生者が邪魔なこと、神々が管理していられなくなること……無論それらは建前だが。
「え? そうだったの?」
「無能め。知らずについてきていたとはな」
話していなかったとはいえ、探りぐらいいれてヒントぐらい得てはいただろうに。
「なんだんなことか。たく、だったらとっとと言えよな」
「ほう? では協力すると?」
さっきまで嫌だと言っていたと思ったがなあ?
「この国はダメだ。だがお前の目的には共感できる。なんせ戦争を起こそうとしてるやつらのとばっちりが、今きやがったわけだからな。そんなバカどもにはさっさと消えて貰った方がいい。俺は平和に暮らしたいんでな。だからいいぜ? お前についていってもよ」
なるほどな……
「却下だ」
「は!? なんでだよ!」
「上から目線がむかつくからだ」
「てめえもさっきはそうだったろうが!」
ああ、言ったな。確かに。偉そうにしたつもりはないが。
「お前はバカか? 言っておくが俺はお前よりも年上だぞガキ。年上に敬意を払うのが人間だろ?」
「え? そうっだったんですか? じゃあ次からさん付けですね」
「いやいい。なんか今更な上にうざったいし」
それに年上と言っても、種族が種族だからな。特に俺はいくら年をとっても変わらんからな。若くもなければ老いてもいないといったところか……
「は、老害かよ」
「別に老いてもいない。ということでお前は後でもう一度ボコる。で? 他の2人はどうだ?」
この無能そうな男はともかく残りの2人も頷くとは限らん。
「いいぞ。エドお前はどうだ?」
「俺もいい。選択権がないようだからな」
まあ断れば死ぬからな。とはいえそこの聖女が邪魔をしてくるだろうが。
「私としてはだ。まあそのなんだ……戦争は嫌いだ。だが転生者集めには共感できるところが多い。そりが合う合わない以前に私たちはまとまっていた方がいい。バラけていると争いになるようだからな」
ふむ、では3人ともついてくるというわけか。まあ面倒だがいいだろ。
「まあいいだろ。お前たちに免じてこの国は見逃してやる」




