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魔物という名の……

「さて……行くか」


「きゅー」


俺が声をかけた時だった。ふわふわと宙に浮かぶ白い毛玉が現れた。その毛玉の見た目を簡単に言うと、針が綿になった針ネズミと言ったところだろうか。針ネズミといっても大きさはサッカーボールくらいあるから一回り大きい。

赤い目以外は白い。それだけなら羊に近いのかもな。


「魔物だな」


「え? こんな可愛い子がですか?」


まあ確かにイメージとは違うかもしれん……


「別にこんなやつばかりじゃない」


実際ドラゴンとかなんとかとかがいるらしいしな……


「まあだがここの魔物ははっきりいって弱い。その上可愛いということで、ここの魔物はそれなりに人気があるらしいな」


俺が解説をしていると……


「きゅー」


魔物が俺の方に寄ってきた……


「なんだ? 餌なんて持ってないぞ? あっちに行け、鬱陶しい」


俺はしっしと手で追い払う。人が訪れることが多いせいだろうな、人に慣れているようだ。


「きゅー、きゅー」


魔物は俺の胸にくっついてきた。


「シラカゼさんのことが好きみたいですね」


リリィそんな羨ましいという目で俺を見るな。


「別に嬉しくない」


鬱陶しいので、魔物を掴もうとした。が……


「ん?」


背中の綿毛は俺の手をすり抜けてしまった。どうやらただの綿毛ではないらしい。まあ……


「きゅー?」


本体を掴めばいいだけだが。俺は魔物の腹のあたりを両手で掴んで剥がした。


「その子はなんで宙に浮けるの?」


フィリユスはこの魔物が浮いていたことが疑問らしい。


「知るかそんなこと」


俺は魔物から手を放してやった。


「そんなことよりも行くぞ」


「行くってどこへ?」


「この近くにある町だ。とりあえずしばらくはその町で色々準備をしようと思う」


俺が歩き出すと……


「きゅきゅー」


魔物がついてきた……


「なんださっきから? 本当に鬱陶しいな」


「シラカゼ君になついたみたいだね」


なつかれることなどした覚えはない……スキルもきちんと抑えてあるはずなんだがなあ……まあいい。


「さっさとあっちに行け。ついてくるな」


「きゅー?」


首を傾げるような仕草をした。あまり言っていることが伝わっていないようだ。


「もう連れていってあげてはどうですか?」


「だめだ。こんな足手まといはいらん」


だいたいリリィお前が連れていきたいだけだろ。さっきから目がヤバイぞ。


「きゅ、きゅー」


魔物はリリィが怖いのか俺を盾にするようにして隠れた。


「うう、その反応はかなりショックです……」


リリィはガックリと項垂れた。まあなんにせよ……

俺は魔物を掴んで近くの岩の上に置いた。


「じゃあな。ついてくるなよ」


俺が歩き出そうとすると……


「きゅ、きゅきゅー」


魔物がまた俺の胸に飛び込んできた……


「お前もしつこいやつだな」


剥がそうとするがぎゅっと俺の胸に必死にしがみついて離れない。


「はあ……もういい、勝手にしろ。とにかく先を急ぐぞ」


俺は諦めて魔物をくっつけたまま歩き出した。俺が歩き出すのを見て他のやつらも歩き出した。


「きゅ、きゅ~♪」


ほんとなんなんだろうなこいつ。魔物は俺が剥がすのを止めたからかご機嫌そうだ。


「ふふっ可愛いですね」


「リリィお前……顔が怖いぞ……」


「きゅー」


魔物も小さく鳴いた。リリィが怖いんだろうな。


「えっ? そうですか?」


「鏡をだすか?」


「……ん~……確認したいような、したくないような……」


リリィは悩みだした。


「……それは悩むことか?」


「いやだってもしそれで本当にヤバイ顔だったら……考えただけでショックですよ……」


リリィはショボンとなった。


「まあリリィちゃんも女の子だからね」


「フィルさん……()とはどういう意味ですかね~?」


リリィはニッコリと笑った。もちろんブラックな笑みだ。いやブラックというかダークだな、うん。なんか体全体から黒いオーラでてるし。


「えっ? いやあほらリリィちゃんも立派な女の子だよ。ハハハ……」


フィリユスはリリィから目を反らした。だが……


「目を見てお話ししましょうね?」


「は、はい!!」


リリィの放つ威圧に負け強制的に目を合わせられた。

大人が子供に敬語……ふむ、情けないな。

魔物も飽きたのか眠ってしまったしな。魔物は俺の胸あたりを掴んだままスヤスヤと眠っていた……のんきなやつだな。そう思いつつもしょうがないので魔物抱き抱えて支えてやった。


「ま、リリィ。お前そんなんだから怖いんだな」


「ちょ、シラカゼ君……」


「シラカゼさん……」


リリィのダークオーラが……


「なんかゴゴゴって聞こえる気がするな」


「いや!! 気がするっていうか、本当にヤバイんだけど!?」


「……シラカゼさん……うぅ~ショックですーーー!!」


「ちょ、痛い痛い。なんで? 今の俺関係ないよね? いた、ちょ、ほんと待ってリリィちゃん」


リリィは泣きながらフィリユスを一方的に殴っていた。殴るというよりもボコるだな。


「リリィ。そいつを殴るのはいいが、俺は先に進んでるぞ? 殴り終わったら走ってこいよ」


俺は二人にじゃあな~と手を振って歩き出した。


「ちょ、シラカゼ君待っt、ぐはっ」


待ってという声が聞こえた気がするが……気のせいだな。後ろの方からはバキッとドゴッとか聞こえる。


「……いいのかシラカゼ?」


「……そういえばお前いたんだったな……」


ずっと無言だったから忘れてたわ。


「……シラカゼ……」


俺の言葉に傷ついたのか、やつは泣きそうな顔で俺を見てきた。


「何涙目になってんだ」


確かにひどいとは思ったが……まあしょうがないだろ。なんせ忘れてたんだしな、うんうん。忘れてたからといって男が涙目とか……普通のやつからすればないわぁってなるんだろうな……


「流石にひどいぞ。俺はお前の夫なのに……」


「お前と結婚したつもりはない」


「なら結婚してくれ」


「断る。そんなことよりもお前はなにしてんだ?」


「お前を見てた」


「キモ」


思わず即答してしまった。いやな? こいつ俺たちが会話している間ずっと俺を見ていたって考えたらなあ……うん、キモいな。


「それほどお前が可愛いのだからしょうがないだろ?」


……


「なにキメ顔で言ってんだ変態が!! キモいんだよ!!」


「そうか……」


俺がそう言うとやつはショボンとなった。だが……


「だが俺はお前をあきらめんぞ? お前を娶ってそれから「しょうもない妄想はそこまでだ。町が見えてきたぞ」


俺たちの少し先には石の壁が見えていた。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



「遅い!!」


「ちょっと待ってよ~」


俺たち3人は町の入り口の前にいた。ここでフィリユスを待っていたのだ。


「なんだだらしないやつだな」


「うぅ……だって……」


フィリユスは頬が赤く腫れていた。なぜかは言うまでもないだろう。


「対して歩いてないだろうが」


実際最初にいた場所からここまでは歩いて10分ぐらいしかかかっていない。


「まあいい。リリィお前もほどほどにしろよ」


「はい」


一方リリィは大して詫び入れた様子もない。


「うぅ……ひどいよ……」


そんなセリフが聞こえた……気がした。

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