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追憶という名の……煉獄編

あれは……正直2度転生(実は正確には違う)をしたということもあって曖昧だが、俺が生まれてからせいぜい数百年経ったぐらいの時のこと。当時はまだ議会が誕生してはいなかった頃の話だ。

俺はイシュティスの女王……つまり実のではないが祖母であるニクスに呼び出された。


「……私に用がある……と聞きましたが?」


当時の俺は今と比べて口調などが異なる。俺と使い始めたのは前世からだ。見た目は人間で言うと5歳ぐらいだな。


「無論あるがニムよ。可愛い孫の顔を見るのに用の有無など関係ないぞ? まあ妾が会いたいというだけでも十分な理由だと思うがなあ」


「……」


ニクスの見た目は人間で言えば20代ぐらいと若いがかなり長い年月を生きている。長い黒髪に冠を頂き玉座に座していた。イシュティスの神を束ねる女王故か余裕と対峙するものを萎縮させるほどの威厳……そして恐怖そのものが雰囲気として感じられる神だ。それこそ他の派閥のトップよりも怖いと恐れられていた程だ。


「……おいで」


ニクスは無言の俺に一瞬目を細めた。少しの間の後近くに来いと言うので当時の俺は近づいた。目の前に立つとニクスは俺の頬に手をあてた。


「ニムお前は外神だが妾の自慢の孫だ。今は在り方を分からなくとも少しずつ知っていけば良い」


「……はい」


返事をすると頭を撫でられた。そしてニクスは微笑んだが、当時の俺はその意味すらも分からなかった。いや微笑み自体分からなかったと言うのが正確だな。


「うむ。それでだニム。お前にはリンネの後任ひいては煉獄の管理を任せたい。お前はこれよりリンネの元に行き引き継ぎの準備をせよ」


煉獄はリンネという神が管理していた。リンネは煉獄での仕事を辞め、永久の眠りにつきたがっていたのだ。


「……はい」


「任せたぞニム。お前ならできるだろう」


俺は表情に出さなかった……というよりも出せなかったが正確だがとにかく内心は疑問ではあった。当時の神々にとって外神は注意を払うべき存在であった。俺を身内に迎えるということが他の派閥に露見するだけでも批判されただろう。それに加えて煉獄という場所を任せたとなると……だからこそ今考えてもなぜニクスが俺に煉獄を任せたのかは分からない……いや全く分からないというわけではない。おおよそ娘……つまり俺の母親のことがあってのことなのだろうが……本当にそれだけなのだろうか?



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



「リンネ」


その後ニクスに言われた通り、準備のために煉獄にあるリンネの居城を訪れた。椅子に座っている老人のような見た目の男がリンネだ。


「ニムか……」


この時リンネが目を細めた……それは今でもおぼえている。リンネとしては複雑だったのだろう。外神を後任にすることや仕事を押し付けてしまったということ、自ら神王に頼んだということ……とても複雑だ。


「……私無き後の煉獄を任せたぞ」


しかしリンネはただ任せると言った。言いたいことは無論あっただろうが……


「はい」


「うむ……」


結局その後の準備でも特にリンネは何も言ってはこなかった。実際あまりリンネとは交流もしていたわけでは無かったし、だからこそ本当にあくまでも仕事だからという割りきったかのような状態で進んでいったのだろう。外神だからと反対する者は多くいたし、リンネとしては少なくともどちらかといえば反対だったのではと今は思う。だがそれは今のこと。当時の俺には理解できないことだ……



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



引き継ぎの儀式当日。ニクスの城でリンネから俺への引き継ぎのための儀式が行われた……


「ではこれより引き継ぎの儀を行う! 箱を!」


ニクスが叫ぶ。すると向かい合うようにして立っていた俺の方にリンネが1歩前に出て近づいてきた。

大罪の箱……リンネの持っている箱はそう呼ばれていた。煉獄に加えこの箱を管理することは煉獄を任されるものの役目だ。だからこそこれの譲渡をもって引き継いだとする……ということになっていた。とても大切な箱だ……神々にとって……


「は、箱が!! 箱がありません!」


しかし大変な事態が起きた。箱が無くなったのだ。箱は本来係のやつが持ってきてリンネに渡し、その後俺に渡すといった流れで俺の元に来るはずだったのだ。だが係のやつ曰く箱を運ぼうとして置いていた場所を見たら既に無くなっていたらしい……


「なに!? 愚か者!! 早く探しだせ! あれが無くなったなどという馬鹿げたことがあってはならん!」


その後箱の捜索が行われた……そして見つかった。箱はある神が持っていた。しかもその神は別の神と争っていた。一方は箱をとられまいともう一方は取り替えそうと争っていた。そして最初にそれを見つけたやつが急いで仲裁に入ろうとした……その時箱を持っていた神が箱を落としたのだ……そしてそれが最悪極まるのがよりにもよって下界へ続く穴に入ってしまったのだ。

当然下界に天使を送り箱を探させた。だがそれも手遅れだった。なぜなら箱は既に開けられたのだから。とある天使の話によれば人間の子供の傍らに開け放たれた箱があったそうだ。つまりまあその人間の子供が開けてしまったわけだ……

箱が下界で開かれた……それは最悪な話だ。なにせおかげで世界は終演を迎える羽目になったのだから……

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