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死体という名の……

バカ3人が町中で殴り合うというバカみたいな出来事から3日経った。あの後バカ3人をきっちり叱りそれぞれに罰を与えた。と、言ってもちょっとした制限と労働をしてもらうだけだ。

はっきり言ってやったことの重大性には釣り合わんがそこはまあ運良くおっさんの働きもあったということでとりあえずその程度にしておくことにした。それに今はバカ3人よりも……はあ……今は作業に集中するとしよう。


俺は現在自分の部屋に備え付けてあったボロくて小さい木のテーブルとしかたなく自分で作った木のテーブルを使い作業をしていた。作業というのはまあ魔術関連のものや一応今後のためにと地図を作ったりしている。

地図はまだ道具や材料、なによりも情報と不足しているので実質手をつけてはいない状況だ。が、あまり悠長なことも言っていられないので今あるもので近々作るつもりだ。なので今やっているのは魔術関連のものだ。それに関しては3日前の結界のような今使うものを作製したり、それ以外の研究などをしている。


「シラカゼ君! シラカゼ君!」


俺が作業を続けているとノックも無しにフィリユスが入ってきた。


「……なんだ?」


「これ!」


そう言って小さな袋を俺に差し出してきた。受け取ってフィリユスの方を見るとわくわくといった表情をしていた。中身を見ろということなのだろう。袋の中身をテーブルの上に出すと中から小さな石がいくつか転がりでた。

よく見ると色の程度に差はあるがどれも半透明な水色だった。この石はディアニスと出会った時に行った湖で採れるもので魔術や装飾に使われる。比較的よく見かけるので決して高価なものであるというわけではない。とはいえ湖の中にあるため採りにいくというなら濡れる覚悟は必要だ。石からフィリユスの方に視線を移しよく見ると髪が少し濡れているように見えた。


「わざわざ潜ってきたのか?」


「うん! 欲しがってたよね?」


確かに欲しいとは思っていたが今後他の素材と一緒に採取しようと思っていたし、そもそも俺はあくまで採る機会があったらついでに採ってこいと言ったんだ。だというのにこいつは……


「はあ……まあいいありがとな」


「うん!」


そう返事をしたフィリユスは笑顔で座っている俺に飛び付いてきた。そのままぎゅっと抱き締められ顔をすりすりされた。はあ……そうこれだ。これが問題なのだ。


「えへへ……」


3日前のことがあってからずっとこうなのだ。困ったことにどうやらフィリユスは幼児退行しつつあるらしい。言動や雰囲気の節々からも表れているがなにより行動が子どものそれだ。今の状態のように抱きついてきたり褒められたがったりする。と言ってもそれをするのは俺やシエリアだけだ。あとのやつらに関しては見ると怖がり俺やシエリアの背後に隠れたり逃げたりと避けているようだ。

しかもそれは日に日に悪くなっているのだから面倒なのだ。こうなった原因はもちろん3日前のあれなのだろうがリリィも避けているところを見るとどうやらそれだけじゃないようだ。要するに今まで溜まった精神的なストレスやショックで3日前のをトリガーにする形で一気に爆発したようだ。


「今日ねリコさんが……」


そういえば俺やシエリア以外と言ったが一人例外がいたな。なにやらピンクとはここ最近遊んでいるようだ。ま、あいつのレベルも低いからな。

とまあこんな感じで現在フィリユスはまともに働くどころか本来の目的も忘れている。まったくあの紙切れは過酷になるのは当然なのだから人材選びぐらいちゃんとやれというに。


「ねえシラカゼ君」


「ん? なんだ?」


「大丈夫?」


俺がここ最近のことを思い返して黙っていたからだろう、フィリユスは俺のことを心配そうに見つめてきた。最近は犬みたいというか犬そのものになったなあと感じる。


「ああ、すまん。少し考え事をしていただけだ」


「そっかよかったあ」


そう言ってフィリユスは笑顔を浮かべた。はあ……イケメソめ……ほんと……


「……俺はまだ作業があるから下に行ってろ」


「ふぁ……? うん分かった。頑張ってね!」


そう言ってまた笑顔を浮かべフィリユスは部屋を出ていった。


「ふぅ……」


危なかった。思わずあの無駄に綺麗な顔面をボコボコにするところだった。


「きゅー。きゅきゅ、きゅー」


するとベッドの上にいるモコがなにを言いたいのか知らんがきゅーきゅー鳴いた。


「なんだお前起きていたのか」


「きゅー。きゅきゅ?」


モコはベッドの方からふわふわと俺の方に飛んできた。膝の上に着地すると俺の服を片手で掴んで器用に立ち上がるような姿勢になりもう片方の指で扉の方を指差した。まあフィリユスのことをどうするのかと聞いているのだろう。


「しばらくは様子見だ。もしかしたら復活するかもしれんしな」


すればいいんだがな。ほとんど足手まといに等しいやつだがあれはあれで役割を見いだしていたようだしな。


「だがまあできないようなら……殺すしかないな。あれは俺たちの情報を握っているわけだし、これくらいのことを乗り越えられないなら生きる価値も権利もないだろ」


元々は死人なわけだしな。本来あるはずがない……というと語弊があるが、本来生ける者が生きる目的などは知り得ない。まあだからないと言っても過言ではないな。

生物は生きる目的がないからこそ生きて生けるのだ。もしそれがあったとしたらそれが成された後、もしくは成せないならその意味を失うだろう。

だからこそ常々思うわけだ。転生者を遣うというのはつくづく悪趣味だと……だがそう思うだけだ。俺にとってこういう状況でなければさして興味も抱かなかったことだしな。


「きゅー」


モコはそうかと言うかのように鳴いてまたベッドのほうに戻り眠り始めた。最悪あいつをきちんと始末するということに安心したのかそれとも……


「他力本願か……」


まあいい。その時がきたら……だ。俺はベッドからテーブルの方に体の向きを変え作業を再開した。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



「シエリアさんお皿ここに置いとくよ」


「ええ、ありがとうフィル君」


俺は今調理場でシエリアさんの手伝いをしていた。本当はシラカゼ君ともっとお話しをしていたかったけどシラカゼ君が頑張ってるから我慢。


「フフフ、今日も美味しそうなのです~♪」


「あ、リコさん」


声が聞こえた方を向くとリコさんが調理場の入り口に立っていた。


「おやフィル君お手伝いなのですか? いやいや偉いのですよ~……スキありなのです!!」


「ダメ!!」


するとリコさんは料理の置かれたテーブルの方にさりげなく近づいてきて、料理をつまみ食いしようとした。その手をギリギリのところで掴んで止めた。


「むぅ~私の褒めてスキあり作戦が……」


まんまだね、うん。


「つまみ食いしちゃダメだよ」


俺がそう言うとリコさんはしょぼんとした表情を浮かべた。


「むぅ~仕方がないのです。分かりました諦めますです」


そう言って後ろを振り返り入り口の方に戻る……


「なんちゃってなのです! 今度こそスキありなのです!」


と思いきや素早く振り返りまた料理を狙って手をのばしてきた。


「ダメだってば」


もちろん料理を背にしてリコさんの腕を掴んだ。


「離すのですよ! 料理が私を待っているのです!」


食い意地張りすぎだよ!


「ほらほらもうできたから取っ組み合ってないで料理を運びましょ」


しばらく膠着状態でいるとシエリアさんからそう言われ、リコさんは今度こそ諦めたみたいで手をのばすのを止めた。


「くっ、今回もダメだったのです。でも次は必ず食べて見せるのです」


そう言って調理場からリコさんは出ていった。


「できれば手伝って欲しかったのだけど。結局あの子なにしに来たのかしら?」


「つまみ食い……」


うん、本当にそれだけ。それだけのために来たみたいだ。


「まあいいわさっさと運びましょう」


「はい」

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