旅立ちという名の……
はあ~……やっと全員と顔合わせが終わった。3人だけなのにかなり時間がかかった……
「おかえり、遅かったね~」
やつは相変わらず画面の方を向いてそう言った……なので……
「『遅かったね~』じゃねえー!!」
まずは蹴りを入れました。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「メンバーも揃ったし、君たちにはこれから転生者狩りの旅に出てもらうよ」
今俺と他のメンバーは最初の部屋に集まっていた。
そして目の前では紙様が頭から出血した状態で、赤く腫れた顔に笑顔を浮かべて言った。
「じゃあまず俺の縄を解いてよ」
フィリユスは縛って、床にテキトーに捨て置かれていた。
「それで、まずはこのメンバーのリーダーと名字的なものを決めようか」
安定のスルーである。
「ねえ無視? 神様無視しないで!!」
「シラカゼ」
こちらも安定のスルーをし、後ろから抱きついてきた。
いいかげん諦めろよ、しつこい。
「……ゴホン、ということでリーダーはシラカゼ君にお願いするよ」
「は? 誰がやるかよ。 つーか俺はこいつらとそもそも組みたくない」
「て言われてもねえ? 君一人だけじゃ無理だと思うけど?」
「こんなやつらと組むよりはマシだ」
「……すみません」
リリィはうつむきながら謝った。
「ほらリリィちゃんもこう言ってるし、年上なんだから大目に見てよ」
「じゃああとのホモ2人はいらん」
「俺はホモじゃないよ!!」
フィリユスが必死に反論してきた……
「同じようなもんだろ。あとさっきからうるさい」
「……痛……うぅ……」
とりあえず蹴って黙らせた。
「俺も違うが?」
「いやお前はそうだ。てことで近寄るな、触るな、そもそもこっち見んな」
「なんだ照れているのか? ……本当に可愛いやつだな」
は? こいつの頭はどうなってんだ? 会話が全然成り立たないんだが……
「ほら君は適任じゃないか」
「どこがだ?」
「既に君にエル君はなついてるよ」
「知るか!! というか、いいかげん離れろ!!」 「がはっ」
抱き締めている腕を掴み前に向かって……というか床に向けて投げつける。
やつはそのまま床に叩きつけられ動かなくなった。あー、ウザかった。
「シラカゼ君……僕だって何も考えずに言ってるわけじゃないよ?」
じゃあいいかげん止血しろよ。真顔で言っても、ふざけてるようにしか見えん。
「君たちの能力などはもちろんだけど、前世での君のカリスマ性も考慮して、君にリーダーになって欲しいと考えたんだよ」
「カリスマ性? あるわけねえだろそんなもん」
「あるさ。その証拠に前世の君の周りの人間は君に固執していた」
「そうだな……」
確かに鬱陶しい奴等だった。特に小学校の時はひどかった……あいつらのことはあまり思い出したくはないな。
「そして彼らは君のためにどんな努力も惜しまなかった。だからこそ君の家族やクラスメートとかは重要な役職に就いていたわけだし」
「へーすごいじゃないですか」
「あいつらが勝手にやっていただけのことだ」
それに努力を惜しまない? それがストーキングとかにも注がれていたんだから笑えん。
「そうだね。でもそれは君が彼らを魅了し、依存させるほどのものがあるからじゃないかな? 実際彼もそうだ」
そこで3人の視線が床に倒れているホモに向けられた。つーかちらっと見えたが、神様の足元に赤い水溜まりができてるんだが……
「……そいつはただのホモだろ。そもそもそんなものがあるんだとしても、面倒だからお断りだ」
「いいや、面倒じゃないはずさ。君の好きなようにやればいいだけの話だからね。なんせ君の言う通りあとは彼らが勝手にやるだろうしね」
……
「本当に笑えんな……その結果どうなったか、お前は知っているはずだが?」
俺は苦笑を浮かべた。DEAD ENDという最悪の結果になったことぐらい、当然こいつは知っている。
「もちろんさ。そのための準備はしてたしね。ということで……」
神様はそこで笑顔になった……シリアスな雰囲気? 出血したままじゃ、全部ブッ壊れだ……というか本当もう止めろよ。リリィもいいかげん指摘しようか迷っているようだ。
「やってくれるかな?」
しかしやはりそんなことはお構い無しに話を続ける紙様。
「やだ」
もちろんお断りだ。バカらしい。
「そっか~。それじゃあしょうがないな~。本当は君が死んでることにしておこうと思ったんだけど、彼らが来たら君のことを伝えておこうかな~?」
はっ?
「あいつら来んの?」
「今のところ、次の勇者召喚の時にクラス単位で呼ぶ予定らしいよ。まあ勇者はその中の1人だけだろうけど」
マジで笑えないんだが……
「……ちなみにあいつは?」
「いいや、彼女はこないよ」
「そうか……」
とりあえず安心か……だが他のやつらは来やがるから……
「やってもらえるよね?」
「……チッ、やってやるよ。ただし、方針もやり方も俺が決める」
「もちろんさ」
「あの……」
そこでリリィが入ってきた。
「あーごめんね。こっちで勝手に決めちゃったけど……」
「いえ、私は構いませんがお2人は……」
リリィは床の2人に視線を向けた。
「彼らもOKだって」
「いや言ってないよ!!」
フィリユスが騒ぎだした。
「じゃああとは名字的なものを決めていこうか?」
「うぅ……また無視された……」
しかしあっさり撃沈。
「そんなのいらんだろ」
「いるよ。君たちのチームワークを高めたり、実際に名字に使えるし」
「めんどいから任せる」
「リリィちゃんはなにかあるかい?」
「いえ、私もお任せします」
「んー……」
神様は男二人を無視して考え始めた。……こいつ最低だな。
「じゃあ、パーガトリーにしよう」
「あそ。じゃあそれでいい」
「やれやれ、意味を知りたくないの?」
「別に」
どうせろくでもないだろうし。
「はあ、ノリが悪いなあ」
「ちなみにどういう意味があるんですか?」
「それは……」
「それは?」
「秘密」
ほらな。
「え? 教えてもらえないんですか?」
「んー……まあ、いつか分かるよ」
「それよりも、そこのバカ2人はどうするんだ? 全然使えなさそうなんだが」
「君に任せるよ」
「丸投げかよ」
「約束だからね」
「そーかい。んじゃ、俺の勝手にさせてもらうよ。とりあえずそいつの縄を解いてやれ」
「OK」
神様がそういうとフィリユスの縄が緩んだ。俺は2人に近づいた。
「つーことで……とっとと立て。お前もいつまで寝てんだ?」
とりあえずホモを蹴る。
「っ……痛いぞシラカゼ」
ホモは一瞬表情を歪めた……と言うには変化が微妙すぎだが、まあそう見えた。基本無表情だからわかりづらい。
「とっとと起きろ」
やつらは起き上がった。
「ふっ……」
そこで急に神様は笑った。……気持ち悪。
「なんだ?」
「いや、やはり君に任せて正解だなと思ってね」
「そうかい」
「それじゃあ、そろそろ向こうに送るよ。細かいことは向こうに送る際に知識として付けておくよ」
そういうと、俺たちの足元に魔方陣のようなものが現れた。
「ああ」
「じゃあね。僕はここで君たちを見守っているよ」
俺たちは徐々に光に包まれていった。眩しい光に目を閉じた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
光は徐々に弱くなっていった。目を開けるとそこは草原だった。
若草色に染まる大地を小さな花々がカラフルに彩っている。
「転移はうまくいったようだな」
俺は新しく白いマントを着ていることを確認しそう呟いた。
神様の言っていた通り、様々な知識が入っていた。……ふむ、不思議な感じだ。
まあそれはさておき……そこで他のメンバーの方を見た。
「さて……行くか」