イケメソ……という名の絶対悪
「……おいなにやってんだ?」
俺が部屋から出てきて目に飛び込んできたのは、神様が呑気にゲームをしていやがる光景だった。
俺が座っていた椅子の代わりにTVとそのための台が置かれ、そこからテーブルまでコードが延びていた。コードは……
「PO4」
「そういうこと聞いてんじゃねえよ!! なんでPO4やってんだよ!!」
「暇だから」
「はあ?」
なにふざけたこと言ってんだこの神様。
「スキルの調整は?」
「終わった~」
終わったって……
「いいから早くあと2人行ってきなよ~」
「チッ……」
本当ムカつく……まあ無駄か……
そう思ったので、次のドアに向かうことにした。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「こんにちは。俺はフィリユス、よろしくね」
そう言って目の前に座っているイケメソははにかんだ……チッ……
イケメソの見た目は金髪碧眼……すごくありがちでムカツク……白いシャツを着崩し、黒のズボンをはいている。
「シラカゼだ、よろしく」
そんな笑顔を向けてきても何も思わん。いや強いて言うならムカツク。
内心そう思いつつも、無表情で挨拶をした。笑顔? そんなものは知らん。
「というわけで俺はもう行く。次があるんでな」
そう言ってソファーから立ちあがった。
「え? ちょっと待って」
やつは慌てた様子で立ち上がり、横まで来て去ろうとした俺の右の袖を掴んだ。
「なんだ?」
「いや、もう少し話そうよ」
「俺から話すことはない」
袖を掴むな放せ。とりあえず右腕を引いて袖を引っ張る。
「今後一緒に過ごす仲間なわけだし、『よろしく。それじゃあ』だけじゃ困るよ」
「別に困らんと思うが? あと袖を放せ」
「いや、どういう子なのか知っておきたいでしょ?」
「いいや、ただ一緒に仕事をするだけだろ。なら必要ない」
むしろ余計な詮索をするな。てか袖を(ry
「プライベートはとにかく、どんな能力を持ってるとか」
「今ここで言うよりも、あとで他のやつらと一緒にまとめて言いあった方が効率的だ」
「でも……」
そう言ってやつはうつむいた。
「それだけか? それだけならいいかげん袖を放せ。あと俺に触るな」
「……みも」
「は?」
声が小さくて聞き取れなかった。
「君も俺を置いて行くんだ!!」
それは一瞬だった……目の前にはやつの顔があった。俺は今やつに押し倒される形で床に倒された。
とりあえず背中が痛い……
「ねえ!! どうして!! どうして俺と一緒にいてくれないの? なんで?」
やつは俺の肩を掴みそう叫んだ。……はあ、めんどい
「うるさい」
とりあえずうるさいし、体も痛いし、イケメソ氏ねと思ったので鳩尾に拳を叩き入れた。
「うぅ……」
やつは苦しそうに呻いた。すかさず俺は立ち上がって部屋から脱出した。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
部屋から脱出して扉を閉めた。
「おい紙様」
扉を背に紙様を呼ぶ。
「僕はペーパーじゃないよ。で? なんだい?」
「『なんだい?』じゃねえよ!! なんなんだあいつは?」
「彼は人のことが大好きらしくてね。常に一緒に人といたいんだって」
「はあ? そんなやつとこの先やっていけるわけねえだろうが!! つーかいつまでゲームしてんだボケ!!」
「まあまあ、少しは我慢してよ。というかゲームっていってもこれWEEUだよ? あと扉は抑えなくても彼は自力じゃ出てこれないよ?」
俺は扉から離れた。
「そういう問題じゃねえ!! あとそれを早く言え」
「はいはい。まあ、とりあえず次行きなよ」
「チッ……」
このクズ紙が……まあいい、とりあえず最後のやつがまともなことを祈るとしよう。
そう思い最後の扉を開けた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「zzz……」
男がソファーの上で眠っていた。ちなみに部屋の内装は今までの部屋と同じだ。だが強いて言うなら……
「……」
男はぬいぐるみを抱いて眠っていた……とりあえず接近することにした。
「……チッ……こいつもか」
近づいてみて、まず分かったのはイケメソだということだ。髪は黒で年は俺と同じくらいか? 抱いてるぬいぐるみは普通のクマだ。
まあとりあえず……
「殴るか……」
とりあえず起こさなきゃだしな。普通に起こせって? だが断る。イケメソな時点で敵だ。
拳を振り上げ、それを一気に降ろした。
「パシッ」
しかし俺の拳はやつの手に阻まれた……
そして……
「チッ……」
反撃された。やつは俺の拳を防いだ手で、そのまま俺を自分の方に引っ張った。そして空いている片方の拳で俺の腹部を狙ってくる。
俺は体を反らして避けた。とはいえ引っ張られて体勢が崩れていたので、少し掠められた。すぐに手を振り払い、やつから距離をとって舌打ちした。
「誰だ?」
まあ確かに、いきなり見ず知らずのやつから寝込みを襲われたら(深い意味はない……いやマジで)そう思うよな。だが後悔も反省もしてない。
「俺はシラカゼ。今後お前と転生者狩りをすることになった。よろしく」
よろしくしたくないがな。
「……声に出てるぞ?」
おっと心の声をうっかり声に出していたようだ。
「わざとだ気にするな」
そうして明からさまな嫌いアピールをしておく。だって嫌いだし。出会ったばかりで、会話もろくに交わしてないのに嫌いというのは確かにあれだ。だがしょうがない嫌なものは嫌なんだ。
だいたい、誰かが言っていた『第一印象は大切だよ』と。つまり最悪だったやつが悪い。
「そうか」
しかしそのアピールをさらっと流す絶対悪……
「そうだ。ということで、またあとでな」
そう言って、回れ右してドアを目指す。
「待て」
しかしそれは阻まれてしまった。
「なんだまだ何かあるのか? あと手を放せ、汚れる」
俺は仕方なく振り返って、やつの手を振り払った。
「お前は人間か?」
「は?」
「いいから答えろ」
意味がわからん。一つ言えることは、上から目線なのがムカツク。
「お前はどう思う?」
疑問に疑問で返すと、やつは一瞬考える素振りをした。まあもちろん……
「……わからん。答えは?」
「想像に任せるってことで」
俺は回れ右をしようとした……がまた邪魔された。
「答えろ」
はあ、めんどい……
「……天使だけど?」
今はだがな。
「そうか……俺はエルシュルートだ」
安堵の表情を浮かべていた。わけがわからん。
「もういいか? いいかげん行きたいんだが?」
「ん? ああ、ちょっと待て」
まだなにかあるのかよ。
そう思っている間もやつはじっと俺の顔を見つめてきた。
「なんだ?」
ジロジロ見んな、ムカツク。
「お前……可愛いな」
は?
「俺と結婚してくれないか?」
……
「いや、そういうのいいんで」
俺はドアを目指して歩き出す。
「待て」
「うるさいな。なんだ?」
「俺と結婚s「だから嫌だと言っている」
だからイケメソは嫌なんだ。
「だいたい俺は男だ」
「フッ、こんなに可愛いやつが男なわけないだろ」
そう言って抱き締めてきた……
「おらー」 「ぐはっ」
俺のアッパーで見事やつをKOした。セクハラは重罪だ。
俺は倒れているやつに一瞬目を向け、ドアへと向かった。