竜という名の……7
「ここが……」
山を昇ってきた俺の目の前には大きな洞窟があった。入り口はドラゴンの体が入れるほど大きい。
「おう。やっときたか」
俺よりも先に来て近くの岩に腰掛けていたディアニス君が立ち上がった。
「宝はすぐそこだ行くぞ」
「うん……」
ドラゴンの宝か……きっとたくさんあるんだろうなあ。金や色とりどりの宝石……ここまでがただのハードな運動じゃなくて、ロマン溢れる冒険って感じだったらよかったんだけどなあ。
「何ボケっとしてんだ? とっとと行くぞチキン野郎」
「ち、チキン……」
そう言ってディアニス君は中に入っていった。
「む……俺はチキンじゃないよ!!」
俺もディアニス君の後を追って洞窟の中に入った。入り口の辺りは少しは明るいが奥の方は暗くて全然見えない……ディアニス君の姿もみえn……
「わ!!」「うわっ!!」
ディアニス君を探そうと目を凝らしていたら背後から急に声が聞こえてびっくりした。急いで振り替えるとそこには……
「ぎゃはははは」
……ディアニス君が笑い転げている姿があった。
「急にやめてよ!!」
「はは……やっぱチキンじゃねえか」
「むう……」
「んじゃ面白かったし行くぞ」
俺は全然面白くないんだけど。文句を言おうとしたけどディアニス君はそう言うと歩きだしてしまったので、しかたなく置いていかれないようについていく。ディアニス君は一定の間隔で上に向けて発砲している。放たれた弾丸は暗い洞窟を照らしてくれた。ここに来る前から思っていたけど彼の銃は凄いと思う。こうやって閃光弾を放ったり、散弾も撃てたりする。よく見たら銃の形が変わっているみたいだ。
「おっあそこか? ……ん?」
俺たちの前方……洞窟の奥の方には金色の山が……
「……何もない……よ?」
俺たちの前方そこにはただ岩の壁があるだけだ。
「チッ、どうやら先越されちまったみてえだな」
「うわっ!」
しゃがんで何かないかと探していたディアニス君が後ろにいた俺にいきなり何かを投げつけてきた。
「……これは金貨?」
慌てて受け止めたそれは金色のコインだった。宝を持っていった人たちが落としていったんだと思う。
「あーあ、てめえがチンタラしてなきゃなあ」
「うぅ……」
それに関しては大変面目ないと思う。
「ま、てめえを連れていけって言ったあいつが悪いんだし? あいつのせいだな。てことで帰っぞ」
「うん」
はあ……せっかく頑張ってここまできたのに……
そう落胆しながら来た道を戻る。
「待て!」
するともうすぐ洞窟の入り口に着くという時にディアニスが小声で言った。
「どうしたの?」
「チッ……おい、お前はどれだけやれんだ?」
「やれるって?」
「どんだけ強いんだってことだ」
うーん……そう言われても俺そんなに強くないんだけど……
「うーんと……まあまあ……かな?」
自分で言うのは憚られたので言葉を濁した。
「そうかよ。んじゃ死なねえよう頑張んな」
「ふぇ?」
ディアニス君はそう言うと両手に銃を握って外に出た。
「おいとっとと出てきやがれ! いんのは分かってんだよ」
そして誰もいないはずの虚空へと叫んだ。すると誰もいないはずだったそこに急に2人の人間が現れた。そう本当に急にだ。俺が瞬きをした瞬間にその2人はそこに立っていたんだ。一人は紫色の髪の男性でもう一人は赤髪の女性だ。
「相変わらず無駄に勘だけはするどいなあお前は?」
ニヤニヤとしながら男性がそう言った。ニヤニヤと笑っているけど目が全然笑っていないから怖い。
「勘だけじゃねえよガラクタ野郎」
「はっ……そうだな。その無駄な態度の出かさも相変わらずだな」
なんだろう……2人はどうやら顔見知りみたいだけど……2人の間に不穏な空気をさっきから感じるんだけど……
「生憎てめえらみてえにこそこそと日陰を歩いて生きてるやつらとは違うんでな! どうせここにあった宝もてめえらが横取りしたんだろ? あーあやだねーこんなジメジメしてそうなやつらにはなりたかねーなー。なあおい!!」
て、俺に振られてもなあ……
「ああそれはよかった。俺もお前みたいな脳筋バカは嫌いだ。これで罪悪感なくお前を殺せる」
「罪悪感だぁ? 鉄屑でも罪悪感なんて抱けんのかよ? ……はっ、そりゃすげえなあ? ついでに口の聞き方がよけりゃもっとよかったんだがなあ? このおんぼろ!」
……このケンカいつ終わるんだろう? 止めた方がいいのかな? でも怖いんだよね2人とも……
「はあ……いいかげんにして2人とも。アシス君私たちはあくまで話し合いに来ているはずでしょう?」
そう思っていたら女性が2人の間に割って入った。どうやら男性の方はアシスっていう名前らしい。
「一応な? だが予想通りついさっき決裂した。てことでどけシエリアそいつを殺す。なんせバカは死ななきゃ……いや死んでも治らないだったか? お気の毒だなあディアニス?」
「けっ、全然覚えてもねえ言葉使ってんじゃねえよ。だせえんだよポンコツ」
せっかくシエリアという名前らしい女性が止めに入ったのに……
「だいたいシエリアてめえもまあよくもまだこんなやつらと一緒にいられるなあ?」
「それは……」
シエリアという女性はなにか言い返したそうだけど、言い返せずにいた。
「まあいい。話は終わりだ。てっとり早くやろうぜ?」
「それに関しては賛成だ」
そして2人は武器を構えた……ディアニス君はいつもの銃をアシスという男性は……棒? なんか鉄の棒みたいなのを持ってる。すると顔に冷たい粒がかかった。上を見ると空は灰色の雲に覆われ、その雲がぽつぽつと雨を落とし始めた。さらにその雲はゴロゴロという音を鳴らしている。うーん……最悪の天気だ。向かい合っていた2人は……雷の音をゴング代わりにして相手に向かって走り出した。
「おらあ!!」
ディアニス君が銃を乱射し、男性がそれを棒で弾く……正直動きが速すぎてそのくらいしか分からないや。
「フン……なんだこのぬるい攻撃は? 所詮バカはバカだな。突っ込んでくることしかできん」
「うっせえんだよ!!」
そこで放ったディアニス君の弾……の1つが頬を掠めたらしく、相手は頬にスッと赤い線を引かれそこから赤い滴が流れだしていた。そこで相手の男性は一旦距離をとるためか広報にジャンプで下がった。……あれ? でもそれじゃあ彼の方が不利なんじゃないのかな? 彼は明らかに近接なのに対してディアニス君は中遠距離タイプって感じだもん。
「おらどうしたよアシス? てめえの方がぬるいじゃねえかよ?」
「バーカ」
彼はディアニス君に対して余裕の笑みを浮かべながら挑発してきた。
「ああん? てめえ余程スクラップにして欲しいらしいなあ?」
「その前にお前は死ぬがな」
するとディアニス君は上に右腕をあげていた。一瞬だったからそこまでの動作がちゃんと見えなかった。だから唯一俺に分かったのはディアニス君が一瞬で右腕をあげたこととバリバリという音が近く……それも俺たちの上の方でしていたということだけだ。
「雷の音で聞こえなかったんだがよ? なんだってポンコツ?」
「おいおい? たかだか雷の音で聞こえなかったとかお前の方がポンコツじゃねえか?」
彼がそう言い終えるとディアニス君の居たところに雷が降り注ぐ。それも数分間も……




