天使という名の……2
「んで? 議会の方はどうだ?」
「議会か……残念だが私が解放されたのも割りと最近でな。他のやつらとはまだ会っていない。故に知っているのは聞いたものだけだ」
おかしな話だ。メリアは議会のメンバーの中でもそこそこ重要なほうだろうに……
「何を企んでるんだ?」
「おや? 企みがあることが前提とは……心外だな」
「当然だな。あいつらの考えてることは神よりも分からん」
議会……それは原則として神によって創られたもの……つまり神よりも劣ることが当然であるはずの絶対的弱者……その絶対を覆し、神と同等あるいはそれ以上の存在になったものたちで構成されたもの。故に神の手から離れてしまったやつらだ。簡単なイメージとしては子供の一人立ちと言ったところだろう。離れ逸脱してしまったからこそ、そいつらを理解するのは難しいと言える。
「安心しろ。少なくとも私は両者の考えをある程度は理解しているつもりだよ。だからこその中立だからな」
中立ねー……やはり理解できんな。よくそんなめんどい立場になろうと思えるものだ。
「まあいい。それよりも議会について教えてくれ。無論お前の見解をいれていい」
「ほう? いいのか私を信用して?」
「今更だな」
「ははは、まったくその通りだ。それで議会だが……現状は表立っては何もない。神々のほうが落ち着いてきているからだろうな」
「そうか。で、お前の見解は?」
「……君の言う通り何かは企んでるんだろうね。とはいえ私には今の彼らが何を考えているのか分からないがね。残念だが私から言えることはそれくらいのものさ」
「そうか」
こいつを放置とは本当どういうつもりなんだろうな? まあいい、とりあえず今は大丈夫そうだ。
「ま、だいたいこんなところでいいかなニム?」
「ああ、ありがとう」
「そうか。で、君はこれからどうする? 煉獄に戻るかそれともそれを拒むか」
まあ聞かれることは当然知っていた。そして返す答えも決まっているが……
「答える前に一応聞くがお前は中立だよな?」
この問いは今後を左右するといってもいい。もしそうなら……
「喜びたまえ答えはNOだ。今回に関しては君の味方だ。もちろん君が黙っていろというならここでのことも黙っているよ」
「なんだ? 俺に情でもわいたか?」
「いいや。ただ今回は私たちもひどい目にあわされたからね。ちょっとした仕返しさ。まあ君に同情したというのは否定しないがね……」
そう言って優雅にお茶を飲むメリア。ふむとりあえず余計な手間が省けてよかった。
「そうかそれはよかった。最悪口封じをしなければと思っていたからな」
「ぷっ、あははは……はあ………いやあ実に君らしい。だがそうだなあ……ふむ存外今の状況なら君に勝てるかもしれんな?」
「……いいや。残念だが今やっても俺が勝つね。まあそんなことはどうでもいい。俺の答えだが、俺は……」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「はあ……今日も疲れた」
今日もギルドの仕事を終え、やはり今日も近くのお店で料理が運ばれて来るのを待っていた。
「だらしないですよフィルさん」
「そうは言ってもきついよ~」
今日も大変だった。後半はもはやエル君に引きずられてクエストに連れていかれてたし……まあおかげで昇格したという嬉しいこともあったわけだけど……
「あっ、そういえばリリィちゃんは今日は何をしていたの?」
シラカゼ君はリリィちゃんには特に指示しないで行ってしまった。それで昨日の会話でリリィちゃんは「私は……何をしたらいいんでしょう? シラカゼさんからは特に指示がありませんでしたし……」と言っていた。しかしエル君に「お前は指示をされなければ動けないのか?」と言われたのでリリィちゃんはそれからずっと自分が何をすべきか悩んでいたようだ。
「やっぱり私も何かしなくちゃって思ったんです。それで今日一日町をまわったりしながら考えてました。私決めました」
よかった。どうやらきちんと自分の役割を見つけられたみたいだ。
「私……」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「ほう……なるほど意外といえば意外だが……まじめな君らしい答えだな。分かった。では君のこともそれまでの間黙っていよう」
「感謝する」
今回は運がよかった。情報も聞けたし穏便に済んだし。さて次は……
「構わんよ。さてニム? 今夜はここに泊まっていくな?」
「ん? いいのか?」
「もちろん。というか当然だなもうすぐ日が暮れる。そんなときに客を追い出したとなったら面子が立たないからね。それにもう少し君と話をしたいからね」
そう言ってメリアはウィンクしてきた。まあ後者が本音だろうな。こいつも愚痴りたいだろうし、もっと話したいことがあるのだろう。
「そうか。ではそうさせてもらおう……が、夜になる前にやっておきたいことがある」
「ん? 何をだい?」
「伝達用の鳥を捕まえたい」
「なるほど。そうだな早く捕まえてくるといい。ちなみに誰に連絡するんだい? ……ああ、いやすまない。もちろん答えづらいなら答えなくても構わんよ」
「部下だ。今のうちに連絡を取り合っておきたいからな」
それに指示もしないとな……
「おお、早速か。いや私に聞く前からだな?」
メリアの言う通りだ。俺は教会で部下がどこにいるか聞いていた。が、正直言って半信半疑だった。
「ああ、人間から聞いていていた。だが人間の情報よりお前のほうが信用できるからな。それにお前から聞いて知ったことも多かったぞ?」
「世辞はいらんよ……いや、やはりありがたく受け取っておこう。なにせ君が世辞を言うなど珍しいことだからな」
「そうか? ……いや確かにそうかもな」
自分でも分かるが確かに昔の自分とは明らかに異なる。以前はばっさりとやっていたが今は少し慎重になっている。ま、2度殺されればな?
「ニム。どうやら君は向こうで前より少し人間らしくなったようだな? まあその話は今夜詳しく聞かせてくれ。とりあえず行ってくるといい」
「ああ。あとすまんがこいつを預かっておいてくれ」
俺はモコをテーブルの上に置いた。
「分かった」
「じゃ、行ってくる」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「さてと……」
無事鳥は捕獲できた。捕まえた鳥は鷲のような鳥だ。本当はもう少し大きいのがよかったがこれでよしとしよう。
俺は拘束されている鳥に近づきしゃがんだ。
「やるか……」
俺は右の手のひらを上に向けて開く。そして力をそこに集めると……そこに白い小さな炎が浮かんだ。正確には炎に見えるというべきだろうな。俺はその手をそのまま鳥に近づけた。鳥はそれを見て何かを感じ取ったのか拘束を破ろうともがく。もちろん破れるわけがないが。
「怖いか? 当然だな。だが俺はお前を逃がすつもりはない」
俺の右手から炎は離れ、そして……
「ーーーーーーーーーーー」
炎は鳥の体につき、すぐに燃え上がった。鳥は焼かれる苦痛のせいで悲鳴をあげている。
「……」
数分後炎は弱まり消えていった。鳥は焼かれた苦痛で気絶したようだ。鳥の体は白くなっていた。
「よし最後に仕上げだ……」
俺は鳥の頭を掴んで持ち上げた。
「さあ狂え……」




