針ネズミという名の……
「さてリリィお前ともここまでだな。俺は教会に寄ったらそのままここを立つ。お前はこのまま町を回ってこの町を見て回るといい」
俺とリリィは町を軽く回り必要なものを揃えた。で、あとは教会に少し用があるわけだが……正直リリィやあいつらには聞かれたくない。
「……分かりました」
なんでそんな悲しそうな顔をしているんだ? 本当俺死ぬんじゃないかと思えてきた……
「ああ」
まあそんなわけないが……いやだが……まあ気にしないようにしよう、うん……
「お前は本当に俺と来る気か?」
「きゅー」
「そうか。まあいい、じゃあなリリィ」
「はい。お気を付けて……」
こいつら実は俺のこと殺す気なんじゃないかと思えてきた……
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
リリィと別れ俺はこの町の教会を目指していた。
「ここだな」
この世界の教会も前世の教会と大差ない。もちろん信仰している神が違うので細かいところは違うが。ちなみにこの町の教会は比較的古くからありそこそこ大きいほうらしい。
教会の扉を開けるとシスターが掃除をしていた。
「あら? おはようございます。お祈りですか?」
「いや、少し聞きたいことがあるんだが」
「なんでしょう?」
「実は今とある神について調べているんだが……」
「そうですか。ええ、それは善いことです」
別に俺は熱心な信者ではないんだが……まあいい。
「単刀直入に聞くがあなたはドゥアニムという神を知っているか?」
「はい、もちろん知っていますよ煉獄を管理されている神ですね。いえされていたが正しいのですが……」
「どういう意味だ?」
「ドゥアニム様はすでに亡くなられたとされています」
「そうか……」
人間もそれは知っているんだな。
「では今煉獄はどうなっているんだ?」
「今はリンネ様が管理されているとされています」
やはりか……
「もしかして歴史の勉強ですか?」
「ん? ああ、まあそうだが……」
「ドゥアニム様の死はその後に起きた神々の戦いや現在の混沌の霊地などに大きな影響を与えました。歴史的にも重要な方ですから感心です」
戦いねえ……まあそれは長くなりそうだから聞かないが……
「混沌の霊地とは?」
「あら、知らないのですか?」
「こことは別の大陸の名前ということは知っているが、なぜそう呼ばれているかまでは知らない」
あの紙がくれた知識もだいたいのことだけだったし、しかも丸投げされたし……あいつかなり雑だな。
「あの地には白き幽鬼などがいるのです。彼らは元はドゥアニム様に仕えていたのですが、ドゥアニム様が亡くなられたことで煉獄での役目を放棄した者たちだと言われています」
ふーん……なるほどね。これはいい情報かもな。ま、細かいところとかはあいつに聞いたほうが確実だな。
「そうか、教えてくれてありがとう。色々と勉強になった」
「いえ、お役にたてて何よりです」
俺はそのままシスターに背を向け外へと出て町の入り口を目指すことにした。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「あ、おっさん」
町の入り口にはいつぞやの(といってもつい昨日の話だが……)おっさんがいた。
「俺はまだ27だ」
そこそこいってんな……
「あそ。で、おっさん今日も仕事?」
「ああ……っておっさんじゃねえ」
「俺からすればおっさんだ」
というか主に見た目が……なんか20代というわりに老けているように見える。
「ふん……なら俺からすればお前はガキだな」
「……」
「……なんだその目は?」
「大人げな」
「うるせえ」
やれやれ大人げない。ま、そもそも俺のほうが実は年上だったりするがな。俺人間じゃないし。
「そういや他のやつらは?」
「今、別行動中」
「ふーん……てっきりケンカしてとうとう愛想尽かされたのかと思ったぜ」
「まさかおっさんじゃないし」
「どういう意味だよ」
「27で独身」
「フッ、残念だったな俺は結婚してるわ」
おっさんはキメ顔で言ったが、おっさんなので残念ながら決まらなかった。というか……
「えっ……?」
「何が『えっ?』だよ」
「ああ、ゴリラか?」
「……ちゃんと人間だ」
「えっ?」
「だから『えっ?』じゃねえよ」
なんだ結婚してるのか……人間と……
「自慢じゃないがすげえ美人だぞ。なにより胸がでかいしな」
おっさんがうんうん頷きながら自慢話という名の下世話な話を始めた。俺こういう話苦手なんだよなー。
「ふーん……ま、どうでもいいが」
「お前なあ……」
おっさんは呆れたような表情をしてきた。やれやれそんな疲れたような顔をしているからより老けて見えるんだろうに。
「おっさんなに疲れた顔してんの?」
「お前のせいだろうが!!」
「おっさん怒ると体に悪いぞ?」
「うるせえ」
「まあいいや。俺忙しいから、じゃあなおっさん」
「お前!! ちょっと待てコラ!!」
怒るおっさんをスルーして町をでた。あのおっさん中々おもしろいな……よし戻ってきたらまた話しかけるか。
「さて、正直面倒だが行くか」
「きゅー」
目的の山への道のりはそんなに長くはない。予定では3日で向こうに着き登山するまで完了してるということになっている。もちろん途中で村などに泊まりながら行く予定だ。町から少しの距離しかないので大して変わらないと思うが転生者の情報を一応集めるかな。
「さて、あいつらは今どうなっているんだろうな?」
「きゅ?」
俺は少年と少女を思い浮かべた。銀色の髪の少年それと対をなすような金色の髪の少女……ただはっきり言ってあまり関わったこともないんだがなあ。というかどっちのほうがいるんだろうな? そこまでの情報をあの紙はくれなかったしなあ。ま、予想できるがな。
「いや大したことじゃない……お前もいいかげん名前がないと困るな」
さて名前……名前ねえ……何がいいんだろうな? とりあえず魔物を見ると目があった。
「きゅ?」
無難に見た目からつけるとして……もこもこしてるぐらいにしか思えんな。
「じゃあモコでいいや。お前は今日からモコだ」
「きゅー」
なんだか微妙そうな顔をしているがまあいい。名前なんて大して重要じゃないしな。
「そういえばお前は背中を凍らせてトゲを作れるんだよな? 他にもできるのか?」
「きゅーきゅー」
モコは俺の腕から離れふわふわと自分で浮かんだ。少し離れたところでモコの周囲に氷のトゲがいくつか現れた。なるほど背中だけじゃなく自分の周りも凍らせられるのか。
「それは霧にできるのか?」
「きゅー」
俺がそういうとモコの周りの氷が水になり霧散した。そう思っていたら視界が白く覆われた。
「なるほどな。もういいぞ」
視界がクリアになった。この霧は使えそうだな。まあ、まだまだ試してみたいこともあるが……また今度だな。今度は水があるところでその水を凍らせたりできるか見てみたい。
「お前の力も見れたし……さて行くとするか」
「きゅー」




