別れという名の……
先週投稿したお話で山の名前を書き忘れていました。すみませんでした。
「んー……」
俺はうっすらと目を開けた。すでに窓からは光が差し込んでいた。どうやらもう朝のようだ……
「あと……5分……zzz」
しかし俺は二度寝することに決めた。とりあえず寝返りを打った……なにかにぶつかった……ん? なにか……?
「ん?」
もう一度うっすらと目に開ける。……そこにはドアップでイケメソの顔が……
「……」
とりあえず殴るか……
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「エルさん、頬が腫れてますけどどうしたんですか?」
変態の頬は赤く腫れていた。俺は気にせず朝食のパンを食べる。特においしくはない。
「……なんでもない」
「そうですか?」
「リリィちゃん」
「はい?」
フィリユスはリリィの耳元でこそこそと何かを囁きだした。
「あー……そういうことですか」
「うん……」
リリィは俺たちの方を見てなにやら納得したようだ。
「余計なことを話してないで早く食え」
「う、うん……」
俺がそう言うとフィリユスはパンを手にとった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「さて一応今日の予定の確認をするぞ」
朝食を終えたあとまた4人で3人部屋に集まっていた。もちろん結界は張り済みだ。
「まず俺だが。とりあえずお前たちの様子を見つつ旅の準備をする」
「そういえばいつここを出るの?」
「さてな? 準備とかが終わり次第だな。できれば明るいうちに」
暗くなると色々と困るからな。単純に暗い道を歩いていくのは大変だし
「そっか……」
フィリユスはそこでうつむいた。
「なに葬式みたいな顔してるんだ? 俺は別に死ににいくわけじゃない。というか死ぬ気なんか0だ」
まったく勝手に人を殺さないで欲しい。ああ前世の悪夢が……
「でもしばらく君がいないのは寂しいよ」
「……キモい」
「なんで!?」
「まあとにかく話を戻すとして。まずギルドに行ってお前たち2人がクエストを受けるのを見て、そこでお前たちとはさよならだ」
俺は2人に「じゃあなー」と手を振った。
「ひどっ……」
「ひどくない。さてリリィお前はどうする? ……と言っても何も思い付かないんだったら途中まで俺と町をまわるか?」
「はい」
「じゃあそれで決まりだな。あと言うの忘れてたけど基本能力を使うな。特に男2人は今後ギルドで働くわけだからな。知られると面倒な目にあうぞ?」
「それもっと早くに言うべきなんじゃ……」
「しょうがない忘れてたからな。まあ能力だけじゃなくスキルもばれないようにな。能力ほどじゃないがお前たちのスキルは神から貰ってるからそれなりに希少だ」
「……」
2人から非難の目を浴びせられた。
「そもそも元はといえばあの紙が悪い。文句があるならあいつに言え」
まあ今は文句を言おうにも当の本人がいないので言えないわけだが……いや実際はあいつに伝わっているかもしれんな。
「まあとにかく行くから準備しろ」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「あの、クエストの方を受けたいんですけど……」
「ああ、昨日の子たちかい」
フィリユスとエル(リリィがそう呼んでた)はカウンターでクエストの受付をしていた。ちょうど昨夜のオバハンがいた。
「あれ? 昨夜もいたのに今朝も仕事をしてるんですか?」
「ああ、まあ色々とあってねぇ。今人員不足なんだ」
「そうなんですか」
「ああ。それよりクエストを受けるんだろ? あ、そうそうちょっといいかい」
オバハンはフィリユスに近くに寄れと手を振った。
「はい?」
フィリユスがオバハンとひそひそと会話している。なんだろうな?
「シラカゼ君、ちょっと……」
「なんだ?」
俺もカウンターの方に近づいた。
「クエストの難易度なんだけど……どのくらいがいいと思う?」
……どういうことだ? 難易度が選べる……そんなわけがない。
「オバハンどういうことだ?」
「いやね、あんたたちのことをうちのやつらに話したのさ。仕事上ほうこくはしないといけないからね。それでうちのギルドマスターがあんたたちに特別に受けられるクエストの制限を緩和してもいいってさ」
……転生者の影響か。
「さあ、どうする?」
「普通のやつらと同じでいい」
「制限の緩和はいらないってことでいいのかい?」
「ああ」
「そうかい。それじゃあそう報告しておくよ。それでクエストは何を受けるんだい?」
「ええっと……」
「……そうさね~、あんたたちならこれがおすすめだよ」
迷ったフィリユスを見かねたオバハンが助け船を出してくれた。
「じゃあこれで」
「あいよ。それじゃあ説明するけど……」
ふむ……まあ大丈夫そうだな。2人ともオバハンの説明を聞いている。
しばらく待っていると無事クエストを受けられたようだ。
「ではおまえたちは頑張れ」
「……行くんだね」
「ああ」
「そっか……またね……」
フィリユスは今にも泣きそうだ。
「シラカゼ……気をつけてな」
まあ流石にこいつは……泣いてる……しかも真顔で。顔はいつもの無表情だが片目から涙が溢れていた。
「シ、シラ……カゼさん」
リリィも雰囲気にのまれたのか泣いていた。
「うっうっ、シラカゼぐん~」
とうとうフィリユスも泣き出した。そして周りの人間からの視線がいたい。
「お前らうるさい。1週間ぐらいで帰ってくるって言ってるだろうが」
「でぼ、ジラガゼぐん」
「なに言ってんのかわからん……はあ、とにかくじゃあな」
俺はリリィを引っ張りギルドを後にした。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「さて俺は数日の食料と雑貨と……まだ泣いてるのか」
「いえ……すみません。もう大丈夫です」
「そうか」
リリィは目をごしごしとこすった。目もとは赤くなっている。
こすったわりにまだ涙が出ている……とても大丈夫には見えんな……まあいいすぐに落ち着くだろう。
「まずはあそこの店に入るか」
俺は近くの店を指差した。どうやら魔術関連の店のようだ……看板にはセラの魔術店と書いてあった。
「はい」
俺はリリィと共に店のなかに入った。ドアを開けるとカランカランと音が鳴った。
「いらっしゃいませ~♪」
店員が出迎えてくれた。魔術店というだけあり魔術に関するものが色々と置かれているようだ。よく見ると中には魔法関連のものもあるようだ。ちなみにだが魔術と魔法は別物だ。何が違うのかと問われれば……実際はあまり変わらない。
「シラカゼさんこれはなんですか?」
「それは魔法補助の道具だな」
「そうなんですか……あ、これきれいですね」
リリィは銀色の金属で装飾された青い宝石を指差した。金属はミスリルだな。
「それはなんだろうな」
流石にそこまでは分からんな。
「それはブローチでして、魔力を込めると治癒の魔術が発動する仕組みになっています」
店員が説明してくれた。
「ふーん……まあそれはともかくとして、魔物を束縛できるものが欲しいんだが?」
店員の売り込みを間接的に断る。持ち合わせも少ないことだしな……
「はいもちろんございます。大きさの方は?」
「少し大きい鳥を束縛できればいい」
「それでしたらこちらです」
「鳥を捕まえるんですか?」
「ああ、ちょっとな……」
さてすぐに捕まるといいが……




