雲という名の……
「ということで俺はお前たちと別行動をt「待てシラカゼ」
「なんだ?」
「俺の話を無かったことにするな。俺は絶対認めんぞ?」
チッ……面倒だな。
「面倒だからはっきり言うが、俺はお前よりも強い。というかこの中で一番強い」
「何言ってんだこいつ」という顔を変態以外の2人は浮かべていた。急に「俺つえー」とか言ったらまあそうなるだろうな。
だが強さに関して言えば自惚れで言っているわけではない。事実そのものだ。
だから決して俺がイタイやつだとかそういうことではない。もう一度言うが俺はイタイやつじゃない。
「お前よりも俺のほうが強い以上、お前にあれこれ言われる筋合いはない。悔しかったら俺より強くなるんだな」
「くっ……だが……」
「面倒なやつだなお前」
「……分かった。だが危険だと感じたら戻ってこい。あとシラカゼ……」
変態はそこで一旦黙った。
「なんだ?」
「俺、お前より強くなる」
「あそ」
「……シラカゼは手厳しいな。だがお前を守れるくらい俺は強くなる。だからその時はけっk「やだ」
俺の返事に苦笑を浮かべながらもめげずに求婚してくる変態。もちろん答えはNOだ。
「んでリリィ。お前は……」
「私は?」
「特にない」
「……はい?」
「強いていうならこいつらと一緒にこの町にいろ」
「……あのー本当に何もないんですか?」
「……まあ情報集めとかをしておいてくれ」
「……」
「以上だ」
「いやちょっと待ってシラカゼ君。流石に説明雑すぎでしょ。しかもリリィちゃんは仕事がないとか」
「て、言われてもなー……あーそうだ。お前たち転生者を見つけても挑むなよ? 俺が帰ってくるのを待て。あと当然だが俺たちの正体と目的を悟られるな」
「そういえばどれくらいで帰ってくるの?」
「1週間ぐらいの予定だ」
「い、1週間!? いくらなんでも長くないかい? 俺君がいないと色々不安なんだけど」
そう言ってフィリユスは目線を横に向けた。
「なぜこっちを見るんですか?」
「い、いやなんでも」
リリィの笑顔にびびってすぐに目線を俺の方に向けてきた。……チキンめ。
「そういえばそうだな……よし、俺がいない間はお前がリーダーということで」
俺はフィリユスの肩にポンッと手を置いた。
「え? いやちょっと待って? 俺がリーダー? 無理無理絶対無理」
「そうですよシラカゼさん。こんな頼りなくてチキンではっきりいって役立たずこの上ない存在価値0のフィリユスさんにできるわけないじゃないですか」
「……あれなんだろ目の前が霞んで見えないや。あはは……」
フィリユスはリリィの精神攻撃を食らって目に涙を浮かべていた。そして安定の棒読みという……というか本当に情けないやつだな。
「そうだな、リリィお前の言う通りだ」
「うっ……うぅ……」
「……なにガチ泣きしてんだお前は?」
「うぅ……だっれ、グスッ」
はあ……面倒なやつだな。とりあえず頭を撫でておくとして。
「リリィ今後は程々にしろよ」
「はい……ごめんなさいフィルさん」
「まあそれはとにかくフィリユスは頼りないが一応この中では最年長だ。それに……いや、まあとにかくうまくまとめてくれるだろう」
「……シラカゼ適当すぎるぞ。あと俺も撫でて欲しい」
「俺ができると言ったらできるんだ。あとキモいんだよ変態が!!」
「俺は変態じゃn「ジ、ジラガゼぐん!! ぼれじゃあぶりだよ!!」
「お前は何言ってるかわからん。とりあえず顔を拭け」
俺はフィリユスに布を渡す。フィリユスは受け取って顔を拭き始めた。
「ずずー」
こいつ俺のハンカティーフに……クソッ、後で覚えとけ……
「もうそれはやる。んで落ち着いたか?」
「……うん」
「そうか」
「シラカゼ君。俺には無理だよ……俺この中で一番年上なのに頼りないし……」
「知ってる。だからそこらへんは期待してない」
「シラカゼさんそれは……」
「だがフィリユス俺はお前のそういうところが必要だと思うぞ?」
「意味がわかんないよ」
「もしリリィやそこの変態g「俺は変態じゃn「今はお前が変態かどうかなんてどうでもいい」
……さてこのバカはさておきフィリユスを説得しないとな。正直あまり本音は言いたくないんだが……
「話を戻すがそいつらをリーダーにしたとしよう。その場合確かにここでの活動もはかどるかもしれない、いやはかどる。だがそれでお前は成長できるのか?」
俺の言葉にフィリユスとリリィは「はっ」と息を飲んだ。
「つまりはそういうことだ」
まあそれだけじゃない。単純にこいつをリーダーにしたほうが楽しくやっていけると思ったというのもある。こいつらの活動が効率的に進むのはもちろん望ましい。だがそれより少し効率が落ちてもこいつが今後足を引っ張らない程度には成長したほうがいいし、苦労したほうがこいつらの中に絆なりなんなりが芽生えて楽しくやっていけるだろう。
「シ、シラカゼくーん」
フィリユスは俺の言葉に感動したようでまた泣き出して俺のほうに飛び込んできた。本当に単純なやつだ。さて避けるか受けとめるか、いっそ殴るか……
「きゅ!?」
それに驚いたからか俺にしがみついていた魔物の背中の雲がいくつかの氷のトゲに変化した。おお、針ネズミっぽいな。そんなこともできるのか……なんて感動している場合じゃないな。このままだと……
「ぐさっ……」「えっ………?」
フィリユスはゆっくりと下の方を向いた。そして……
「うっ、痛い。痛いよ。痛い痛い痛い痛い痛い痛い」
自分の腹に氷のトゲが刺さっているという光景……当然やつは痛いと発狂しだした。
とりあえずトゲを抜くとやつの腹部から血が……
「ちょ、大丈夫ですか!? シ、シラカゼさんとりあえず血、血をとめないと」
リリィも慌て出す。変態が慌ててないところを見ると非常時にはこうなるというのがよくわかる。こんなこと考えてたら普通は「なに冷静に分析してんだよ!!」と思われるだろうなー。
「痛い、痛いよ。シラカゼ君助けて」
フィリユスは必死に懇願してくる。はあ……
「落ち着けバカが!!」
俺は思いっきりフィリユスに蹴りを入れました。もちろん腹部にだ。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「うぅ……ひどいよ」
フィリユスにトゲが刺さってから少しして俺たちは宿の近くにある料理店に来ていた。俺の前にはスープが置かれていた。聞いたことがない野菜のスープらしい。こういうところは異世界って感じだな。……まあ俺がそう思うのは不自然なんだろうが……今更か……
「そうですよ、シラカゼさん」
「別にあれくらいじゃ死なんだろうが」
実際フィリユスの怪我はすでに治っている。
「死ななくても痛いものは痛いんだよ?」
「その分俺はお前の汚い体液が服についたわけなんだが?」
そうフィリユスが刺さったことで俺にやつの血が……
「……少しでしょ? 君よりその子の方がついてるよ」
「そりゃあお前を刺した張本人だからな」
「きゅ~♪」
まあここに来る前に洗ったが。そのせいか機嫌よく小さな赤い木の実を食べていた。普通は洗われるのを嫌がるんじゃ……まあそれも今更か。




