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プロローグ

「ん? ここは……?」


俺……白風一夜(しらかぜいちや)は白い空間に立っていた。そこは黒い大理石のような床のみで、天井や壁はなく、あとはただどこまでも白い……


「無事転生できたようだね」


後ろから声が聞こえたので振り向くと、そこには黒いスーツを着た黒髪のイケメソなお兄さんがいました……チッ……


「はじめまして白風君」


「はじめましてお兄さん。んで? まずはあんた誰? あとここはどこだ?」


「君はずいぶんとストレートだね。まあ、気持ちはわかるけどね~」


イケメソがそう言うと、俺たちの横に椅子とテーブルが現れた。


「まあ、少し長くなるだろうからお茶でも飲んで話そうか」


とりあえず従うとして……椅子に着くとティーカップとポット、皿に乗ったクッキーが何処からか出てきた。

ポットは宙に浮いた状態で、ひとりでにお茶を注いでいく。


「砂糖やミルクはいるかい?」


「別にいい」


お茶を飲むと、程よい渋みが口の中に広がった。


「それじゃあまずは自己紹介。僕はヘルトゥナ。一応、神様をやっているよ」


俺はカップをソーサーに置いた。


「自分で神を名乗るとか痛々しいな。で? その自称神様が何の用だ?」


「君はストレートな上に結構辛辣だね。……うーん……どうすれば信じてもらえるのかな?」


「とりあえず()信じているが?」


「とりあえず()かぁ…… まあ、これとかを見たからだろうけどね」


そう言って、やつはポットに視線を写した。


「まあな。そもそも俺の記憶が正しければ俺は死んだはずだし……恐らくこれ、異世界転生ってとこだろ?」


目の前のクッキーを頬張った。うん、普通においしい。


「ふーん……自分が死んだことを認めるんだ~。まあ、話が早くて助かるけど、ずいぶんと淡白なんだね」


神様は苦笑して肩をすくめた。


「これが夢でもあんたの痛い話を聞いてやろうと思えるだろ?」


気分的にはこれが夢でも現実でも、正直どうでもいいが。

目の前の自称神様は俺の言葉を聞いて、さらに苦い表情を浮かべている。


「あはは……まあこの世界のことから話していこうかな。まずこの世界はミラメリア……僕たちはそう呼んでる。科学が発展する代わりに、魔法などが発展した世界だよ」


「テンプレだな」


「まあ、そうだね。この世界の神々にも派閥があってね、この世界は3つの神々の派閥と議会が管理しているんだ」


そこで俺はちょうど口に入れようとしていたクッキーを掴んでいた手を止めた。


「議会?」


「議会は神じゃないメンバーで構成されたもののこと。神以上の力を持っていて、なかなか……いやとても厄介なやつらだよ」


「へー……」


言い換えたあたり、本当に面倒なやつらなんだろうな。


「神々は上下関係があって、最終的に最高神が決めるけど、議会は平等を重んじているからメンバーの多数決で成り立っているんだ。つまりは各派閥の最高神の決定=議会の決定ってことだね」


そこで一旦、神様は紅茶を啜った。チッ、イケメソが……なにしても様になりやがる。


「あんたらの社会制度のようなものは分かった……で?」


とっとと本題を言えと暗に促す。


「まあそう焦らないでよ。知っていて欲しいのさ、予備知識としてね」


「へー……それで?」


「君はせっかちだな~」


「回りくどいのは嫌いなんでな」


「んー……悪いけどお楽しみは最後にってね」


あからさまな営業スマイル浮かべてるあたり、面倒な予感がする。こういうやつは大抵面倒なことを持ちかけてくる。しかもそれがイケメソならなおさらだ。


「そんなに睨んでも可愛いだけだよ?」


「余計なことを言ってないで、続けろ」


「話を戻して次はこの世界についてだね」


やつがそう言った瞬間、俺たちの横に大きいテレビが現れた。


「さてこれで説明していこう」


テレビに映像が映し出された。天界とか下界とか書かれた小さな円がいくつかあり、それを世界と書かれた大きな円が囲っている映像が映された。


「まずこの世界はいくつかの領界で構成されているんだ。例えば今僕たちがいる天界や下界、冥界と言ったものがあるよ。今回重要なのは下界だね」


すると映像は下界と書かれた円を拡大したものになった。その後前世の地球とは違う星の映像になる。


「この下界……というよりは星と言った方がいいかな? この星は6つの大陸が存在しているんだ。重要なのはこの3つの大陸だよ」


映像は3つの大陸を切り取り、白い背景の上に並べた映像になった。


「この3つの大陸には魔王がいてね。映像の一番大きい大陸には3人、他の大陸には1人ずつ存在している」


ふう……やはり面倒そうだ


「それで俺に魔王を倒してこいと?」


「そう言いたいところなんだけど色々と事情が絡んでてね……」


「事情?」


本当は聞きたくないが……面倒そうだからな……


「魔王のうち3人は元々は神だったり、その子孫なんだよ。その関係で情があるからなんとかで簡単に倒そうとしないんだ。それに最近は外の神と戦争するらしいし……」


神様は困った表情を浮かべた。


「それは面倒な上司をお持ちで」


気にせずお茶を飲む。


「それで自分達の代わりに勇者……というか転生者だね。その子達に託したんだ」


「それで?」


「それから何年も経ってるんだけど魔王を倒せなくてね? 数年ごとに転生者を招いてるんだけど……」


神様は少し戸惑った表情をしている……


「だけどなんだ?」


「……魔王も勇者召喚をしていたんだ」


「むこうもできるならやるだろうな」


当然だな。


「だから招く転生者の数を増やすんだけど……当然向こうも増やしてきたんだ。それでもうあきらめて5人だけ招くことにしたんだ」


「それじゃあ、今は勇者は10人召喚されてるってことか?」


「そうだよ」


やれやれ、これは思っていたよりも面倒な話みたいだな。さて……


「そろそろ本題に移って欲しいんだけど? ぶっちゃけそろそろ面倒になってきた」


「今から入るからそんな飽きたよって顔しないでよ。……神々は魔王とある協定を交わしていてね。それが勇者が召喚された年から次の召喚の年まで召喚された勇者のみが戦うことを許すというものなんだ」


「面倒なものを結んだな、あんたら」


「それがしょうがなかったんだよね。当時天界で色々あって、それどころじゃなかったんだ」


「あそ」


「それで生き残った勇者が問題なんだよ」


「何が?」


「最初の話に戻るんだけど、議会の話をしたよね?」


「してたな~」


「ちゃんと聞いてる?」


「聞いてる」


「はあ……僕たち神々としては議会に力をつけて欲しくないんだ」


なるほどね……読めてきた。


「それで?」


「転生者は神々に特典として力をもらう。だから議会に入るほどの力を得る可能性は高い」


「……」


「君にはもうすぐ迫っている勇者召喚に備えて、現在の勇者以外の転生者の抹殺をお願いしたいんだ」

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