あまりしつこく問質すのも、変に思われそうなので、話題を、ホロヴィッツのリサイタルに変えた。そして、二時間ばかり、昼まで、坊と一緒に寝た。坊は、風邪を移すといけないと気にしだしたけれど、坊の風邪なら引いても構わないと言って(どうせ、移る心配はなかったのだけれど。)、横で眠らせた。ブラジャーを取りなさいとも、今着けているのかとも聞かなかった。
私は、眠ることができて、気分も良かった。カーテンの隙間から日が差込んで、外は、良い天気に違ない。立って、窓を開けると、テテマロが飛出してきた。例の哀っぽい顔で見上げる。土曜日から、ずっと、散歩に連れていってもらわないのだ。前足を、木の幹に掛けて、気が違ったように引掻始める。早く出掛けましょうと言っているのだ。地面に、穴ぼこを掘る要領で、木を引掻く。ここのところ、やたらに引掻くし、ひとつ箇所ばかりやるしで、其処の皮が、段々剥けてきた。ひととおり引掻終えると、又、窓の下に来て見上げる。「テテマロ。」と声には出さずに、口だけ動かして呼掛けたら、悲鳴のような鳴声を出したので、怖い顔をした。首を振って合図したら、途端に大人しくなって、オスワリの姿勢。鼻の頭を嘗める。中々、テテマロも賢くて、可愛い子だ。
悲鳴で目を覚したのだろうか。それとも、急に明るくなったからだろうか、坊が、体を起していた。額に唇を付けると、熱はないようだ。鼻声は、昨日と変らないけれど。又、ベッドに入った。そして、毛布を上げると、今度は、自分から乗ってきてしがみついた。中々、呑込が良くて可愛い子だ。こうして、今日は、半日、坊を抱いて暮した。
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