「そうね、もう、お風呂屋さんなんかには行かないことね。お姉ちゃんは、一度も、行ったことがない。そうだ。それから、坊は、よく、胸の開いたシャツを着ているわね。あれは良くないわ?下品よ。女の子が、胸元をひらひらさせちゃ駄目。人の目を引くでしょう?皆さん、どうぞ、私のおっぱいを見て下さいって言っているようなものよ。」「すみませんでした。自分では気が付かなくて。」「そうね、人に言ってもらわないと分らないものね。でも、もう、沢山、ほかに、素敵なのを持っているでしょう?それに、もうすぐお誕生日だから、もっと素敵なのをプレゼントしてあげなくちゃ。だから、あんなの捨てちゃいなさい、日曜日に着ていた黄色いのだとか。」「そうします。でも、もう、十分買ってもらいましたから、あとは結構です。」「そんなことはない。交換しましょう?坊の、ひらひらした服は、全部、お姉ちゃんが貰うの。坊に上げるのと物々交換。坊は、お姉ちゃんを愛している?」「愛しています。」「じゃ、キスして頂戴。」暫く見おろして、ちゃんと口にした。赤く照れたりしなかった。「今のようなキスは、お姉ちゃん以外の人としちゃ駄目よ!レズビアンって知っている?」「知りません。」「本当は、口にしたくもない、物凄く下品な言葉。番台以上よ?坊は覚えなくて良い。忘れちゃいなさい?」「何ですか。」「ホモは?知っている?」「知っています。男の人が男の子を。『ベニスに死す』のアッシェンバッハなんか。」
5/18(水)の記事は続きます。[編者]
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