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己 呂 武 反 而   作者: https://youtube.com/kusegao
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目を覚さないように、胸を開けて、塗終えたら、揺起す。確に見たのだと観念させる。それを、今、此処でせよということなのだろうか。バスルームのドアを開けなかった過を、今正せと。パジャマは、自分のを着ないで、ベティ・クレアズの物を着ているのに。このあいだみたいに、 勿体ないから着ないということはない。なぜブラジャーは。やはり汗臭くなったからか。ほかの五枚も、あのときに、一緒に渡すべきだった。パンツもブラジャーもパジャマも一緒にして、坊の引越祝と言って、全部纏めて渡す手もあったのだ。お粥を作ったり、薬を買いにいったりで、そこまでは頭が回らなかった。坊は、あと何枚、こういうのを持ってきたのだろうか。あの一枚は取上げるとしても、五枚も六枚も隠しもっていて、優先的に、その方を着けられては適わない。

   スキムミルクが、まだ、半分飲残してあるマッグを取上げて、テーブルに置き、ラジオを消した。一昨日と、昨日とシャンプーしないので、少し脂臭くなった、黒子のある、右のこめかみに接吻して、肩に、腕を回した。「風邪が治ったら、美容院に行こうか。」と、髪の毛に、指を通した。「今日は、坊、此処で寝なさい。昼まで寝よう。お姉ちゃん、ずっと寝不足で疲れている。坊が寝かして頂戴。」と言った。ベッドに潜って、頭を枕に並べた。私は、意を決した。この子のためだと。彼女の方に向直るように、左へ、上体を起した。右手を、痣のある所に滑込ませようと、パジャマの襟に這わせたときに、彼女の手に行当った。左手だ。それを、毛布の下から引出した。抵抗はしなかったけれど、上気したような、潤んだ目で見ていた。私は、坊の手先を見つめた。指は、微かな動をした。拳に握るか握るまいかためらっていた。私は、捉えた物の処置に迷った。胸に置かせるには、体の向が違う。それに、私はジャージーだし、下着も着けたままだ。私は、どうしても、それを、美しい行為にしたかった。本当の意味で、痣を共有するための、無上のおこないにしたかった。

5/18(水)の記事は続きます。[編者]


滋子の手書き原稿に忠実な翻字は以下で

http://db.tt/wiixYXDN


目次はこちら

http://db.tt/fsQ61YjO

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