熱を出したのは気の毒に思うけれど、ずぶぬれなって帰ってきたのは、やっぱり、そうなるようになっていたのだ。私は、丁度、彼女の下着を買ってきたところだったのだから!あの店に、彼女に合う物はないだろうけれど、手始に、ベティ・クレアズから当ってみよう。駄目で元々という気で行ったら飛んでもない。U.S.A.で、アーリー・ティーンズ用に売出したのを、日本でも始めたらしくて、色々なのから選べた。子供用ではあっても、見た目には、全然子供っぽくない。こういう文化は、まだまだ、U.S.A.に及ばない。自分が十代のときに着けたのは、本当に子供っぽくて厭だったけれど、これは、比物にならないほど洒落ている。子供用というよりも、小さな大人用だ。でも、カップだけはしっかり、余さず覆うように出来ていて、さすがは、バプティスト系の会社、南部御用達だけはある。ブラジャー、パンツ、パジャマ、買いに出てきた物は全部揃えられた。シャツを探したときみたいに、あっちこっち、しかも、雨の中を探す覚悟で出てきたので、全然たやすく用がすんでしまうと気が晴れて、大雨にかかわらず、何だか陽気になった。勝レツ庵というお店に入って、トンカツを食べた。嵐の中を、トンカツ屋さんに駆込んできて、油まみれの豚肉を、一人で、カウンターに向って、がつがつ食べる女が珍しかったのだろう、店員も、サラリーマンふうの客も、じろじろ見た。でも、考えてみると、ゆうべから、何も食べていなかったのだ。なぜかしら、食べながら、笑が込上げてきて、一度おかしくなると、もう、堪らなくおかしくて、それで、又、じろじろ見られたけれど、笑を堪えるためにも、食事に集中した。
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