5/17(火)
今は、二時を過ぎたところ、午後の。坊は、隣の部屋で眠っている。熱を出した。私の所為だ。昨日、長いこと、雨に打たせた。工合が悪くなって、三時に早引したと言う。私は私で出掛けていて、五時半に戻った。タクシーで帰ってきたら、坊が、ポーチに立って待っていた。忘れて、鍵を渡してなかった。一時間以上待ったに違ない。激しく吹く風が、土砂降に降る雨を、ポーチの中まで吹入れて、ずぶぬれになっていた。傘をさしてはいたけれど役に立たない雨と風だった。
すぐに、湯船に、熱い湯を張って、風呂に入れて、体を、よく拭かせて、そのまま、ベッドに入らせた。それから、まだ起上らない。食事は、部屋まで運んでいる。引越や何やの疲もあったのだろう。時々、咳音が聞える。本当を言うと、私も、少しぞくぞくする。同じウイールスかもしれない。気を、強く持つ。私は大丈夫。このあいだ患ったばかりだから、抵抗力が強いはず。
あの子は、お湯を張るあいだ、何かぼーっとしていた。体を濡らしたままで、そばに立って見ている。半分ほど溜ったときに、「体を、よく温めるのよ!」と言置いて出てきた。入浴しているときに、洗面所に入っていった。下着の着替とパジャマを置きに。服も下着も、案の定、雨を吸っている。ノックして、「パジャマと下着の着替、置いといたわよ?濡れた物は持っていくわね?」と声を掛けたら、どぎまぎする様子だった。「そのままにしておいて下さい、自分でやりますから。」と言う。「馬鹿ね!自分でやるって、あなたは上ったら、まっすぐベッドいきよ!体は洗わないで、あたたまったらすぐに出ていらっしゃい。ドライヤーでよく乾かすのよ?」そうしたことを、ドアごしに怒鳴って出てきた。でも、ドアは開けなかった。開けようか開けまいか迷ったのだけれど。絶好の機会だから、この、同居の、早い時期に、坊の裸を、おおっぴらに見てしまう。私は、痣を目のあたりにしながら、顔色ひとつ変えない。その私の様子を、坊に見せる。そうすれば、痣を、今後、坊と私で共有できる。色々なアドバイスが与えられる。でも、私の声で、もう慌てるらしいので、ドアを開けずにしまった。
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