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己 呂 武 反 而   作者: https://youtube.com/kusegao
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   先週は、我ながら浅ましい一週間だった。コソ泥のような、スパイのような真似をして。西橋アロエ。坊の工場だ。求職者を装って電話を掛けた。「従業員数を教えてください。」随分怪しまれた。なぜそのようなことを聞くのかと。従業員二十七名。男性十九人。女性八人。胡散臭そうな声で答えた。明日の十時に、履歴書を持って伺います、宜しくお願しますと言って電話を切った。平気で嘘が付けたものだ。すっぽかされたことを怒っているに違ない。嘘がばれたかもしれない。通いそうな風呂屋に電話。「そちらは、昔風の、脱衣場を見おろす番台がありますか。」言いながら、顔から火が出る思だった。向うは笑いながら答える。「大丈夫ですよ、うちは、そんな旧式ではありませんから安心して御利用下さいと。番台ありと答える所もある。でも、女の人が座る。中には、店の主人と覚しい人が出て、ええ、番台がありますよと答えるので、女の人が座りますかと聞くと、私が座りますと居直った声で言う。風呂屋のことでも、工場のことでも、安心ができない。昼間は、出掛けていって、工場の周辺を偵察。仕事中だと分っていても、坊に見つかりはしないかしらとはらはら。アパートは何処だろう。「ヒカリ荘」と言っていた。人に聞いても分らない。工場だけが杉田で、アパートは、別の駅なのかもしれない。それにしても、ぺらぺらした物を、何とも思わずに着る位だから、男が、番台から見おろしていたって、何とも思わないだろうか。まして、女の前なら、平気で脱くかしら。一週間、そわそわしどおしだった。でも、先週は、強いて、自分に言聞かせて、信じようと努めた。安全な服は与えてある。坊にしたって、まさか、わざわざ、旧式の風呂屋には行かないだろうと。それが、昨日、奇麗に裏切られた。服装に関する限は。工場で働く男は、もう知っていると覚悟した方が良い。十九人。どのように思っているだろう。どんな、あざけりの笑を浮かべていだろう。夕方になると、あつまって、酒の肴にするのだろうか。「おい、あの娘、あの、愛らしい顔で、あの痣だ。毛が茫々なのを見たか。」

5/16(月)の記事は続きます。[編者]


滋子の手書き原稿に忠実な翻字は以下で

http://db.tt/wiixYXDN


目次はこちら

http://db.tt/fsQ61YjO

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