先週の日曜日、それは鎌倉の三日後、その日は、素直に、新しい服を着ていたし、香水も付けてきた。私を喜ばす心算もあったのだろうけれど。処分した、白いぺらぺらのかわりになる物を、先週の土曜日、元町中探歩いて、喉頸まであるティーシャツを見付けた。色々な柄のを十一枚、一番小さいサイズをあるだけ買った。それを、その次の日、先週の日曜日、坊が来たときに、「白いシャツをなくしてしまった。そのお詫に。」と言って渡した。サイズが合うかどうか、着てみてと言ったら、さすがに、私の前では着替えない。二階に上って、暫くして下りてきたら、すばらしく可愛い。横浜で買ったのよりも、ずっと似合う。喉の所で、丁度良く窄んでいるし、彼女の、華奢な体にぴちっとしているけれど、厚手の生地なので、肌が透けたり、ブラジャーが浮彫になったりしない。全然厭らしくない。中学生の女の子のようで、小さな胸が、一層可愛らしく見える。苦労して探した甲斐があったと思った。十一枚もあれば、ひと夏過せる。私は嬉しくなって、何度も褒めて抱締めた。それなのに、昨日、わざわざ、ぺらぺらした黄色いのを着てきた。「どうして、あのシャツを着ないの?あれきらい?」と、努めて機嫌良く聞いた。勿体ないから着ないと言うのだ!憂鬱で仕方がなかった。一昨日は夏のような暑さだった。私でさえ、長袖でいるのは暑く感じられた。汗かきの坊のことだから、きっと、黄色いのか、でなければ、同じような、ぺらぺらした物を着たに決っている。その恰好で仕事にも行ったのだ。悪くすると、仕事場の人達に、秘密を知られているかもしれない。そうなれば、もう、自然と噂になっているだろう。
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