朝方、少し、部屋に籠っていた。でも、それも、最初の朝ほど酷くはなかった。今、これだけ近付いても、まったくしない。開いている胸元を、手で押戻すと、シャツは、その形を保つ。又、堪らなくいとおしくなって、眠っている子を抱締めた。開きかけた目にかわるがわる接吻した。優しく口を付けた。もしも、U.S.A.の人が見ていたら誤解したかもしれない。それから、頬に強く押しつけて、「着くわよ!」と言った。
横浜駅の階段も、手を繋いで下りたり登ったりした。京浜東北線に乗換える。本当は、大船で乗換えるはずだった。大船から京浜東北線に乗換えて、関内まで行く。最短の行きかただ。それが、何も考えずに、鎌倉で、グリーン車に乗ったものだから、大船で乗換えることは、つい忘れてしまい、横浜まで行くのだと思違をして、横浜で降りてから気が付いた。大船駅を使慣れていない上に、横浜は、毎日の通勤で乗換えていた駅だから、何の疑もなく横浜まで来てしまった。習慣は恐ろしい。もっとおかしなこと。グリーン車に只乗した。これは、買物しているときに気が付いたことなのだけれど。国鉄さん、ごめんなさい。でも、私も、車掌さんが料金を徴収しに来なかったものだからうっかりしていた。誤魔化す心算はなかったのです。すみませんでした、J.N.R.さん。
滋子の手書き原稿に忠実な翻字は以下で
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