表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
己 呂 武 反 而   作者: https://youtube.com/kusegao
69/197

                                      

   だからといって、見えて良いはずはない。絶対に見えてはいけない。この子は、ただ無邪気なだけなのか。何も知らない。かわいそうに、アレが、何を意味するのかも知らずにいるのだ。まだ子供なのだ。それこそ、ただ、おかしな所に付いている、大きな黒子位に思って。湯屋でブラジャーを外すときの彼女を取巻く目、目、目、奇異の目、戦慄する目、恐怖の目、嘲る目、そういう目の中にいるとも知らずに外す。無理もない。導いてくれる者がいなかった。誰が、何の智慧を与えてくれたろう。今だに未発達な乳房なのに、まして、中学生の彼女は、乳房と言えるものももっていなかった。だから、おかしな所に、大きな黒子が付いているように思って気に病まなかった。少し膨んできたときも、それのもつ意味を悟らせてくれる者がいなかった。親は死んでしまった。親戚には疎んじられた。高校には行けなかった。どんな場合にも、他人に見せるものではないと諭す者がいなかった。だから、強いて隠すこともしない。合わないブラジャーを着けていられる。胸がはだけても平気だ。十八才のフェミニニティーを、初から持たないのだ。これには、かなり有力な根拠が。彼女のにおい。もしも、フェミニニティーに目を開かせてくれる者がいたなら、必ず、臭のことも忠告したに違ないから。

   落ちつこう。段々、私は落ちついてきた。汚い何かが拭去られて、心が澄んできた。私が、目を開かせてやる。私が導いてやれば良い。だから、神社で、同居を言って、姉妹の契を交したのだ。あのときは、何もかも、瞬時に悟って、同居が、一番の方法と分った。分ったというより、そういう気がした。それで、「妹になりなさい。」という言葉が出てきた。これで、何もかも、筋が通る。初からそうなるようになっていた。

   見ると、由加里は眠っている。頭を垂れて、手は預けたままで。首の回のシャツが、しどけなげに下って開いている。額と額を隣合せて覗込むと、やっぱり、カップが浮上っている。奥に、豆粒位の赤みが見える。

5/13(金)の記事は続きます。[編者]


滋子の手書き原稿に忠実な翻字は以下で

http://db.tt/wiixYXDN


目次はこちら

http://db.tt/fsQ61YjO

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ