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己 呂 武 反 而   作者: https://youtube.com/kusegao
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   彼女は、独特なにおいをもっている。殊に、風呂に入らず、不潔にしているときは酷くなるらしい。毎日、体を洗う習慣がない。仕方がない。それとなく聞いたことなのだけれど、アパートには、お風呂がないので、週に、二回、お風呂屋さんに行く。訪ねてくる週末は、大分、日数が開くらしくて、頭からは、決って、脂の臭をさせている。しかし、彼女の体臭は、ずっと不快な、体の奥から湧出る臭。いつもは、それほど気にならない。しかし、このゴールデン・ウィーク、又、強くなりだしていた。

   彼女が気の毒で、密に、策を練った。バスタブに湯を張って、前もって、石鹸を溶して泡立てておく。彼女に説明して、「これは、お姉ちゃんの、お風呂の入りかたで、気が休まって、良く眠れるから、坊もやってみなさい。初、湯船に、汗が出るまで漬る。必ず、汗が出るまで漬ること。汗をかいてきたら、漬ったままで、たわしで、ごしごし垢をこすって、体を洗う。暑くなってきたら、水をたしてぬるくする。全部洗終ったら、又、暫く漬る。おしまいに、栓を抜いて、シャワーを捻って、お湯を出し、頭をシャンプーで洗う。お湯は使切だから、中で、体を洗うのが正しい入りかた。これを全部、ゆっくり、四十分位掛けて入浴すると、良い気分になるから。」と言って、泊りにきたゴールデン・ウィークは、日曜日から水曜日までの毎晩、風呂に入らせた。でも、長い習慣から来る臭は、簡単には消えない。風呂あがりは良くても、一晩寝たあとで、朝、部屋に入っていくと、胸の悪くなるような空気が籠っている。慌てて、「由加里ちゃん、窓を開けましょうか。」と言うと、「いえ、大丈夫です。」と、その意味が分らず、顔を洗いにゆくにも、部屋のドアを開けはなしにする。

   由加里が不憫でならない。あの臭を、私が知っているだけなら良い。でも、ほかの人に知られたら。アパートの友達が知らないはずがあろうか。恐らく、顰蹙している。仕事場でも、彼女と、体が触れる位に接近すれば、お風呂屋さんに行かなかった日は、誰でも、必ず気が付く臭だ。だから、以前も、香水を贈ったことがあるのに、使っている様子もないのはどうしてだろう。自分で気付いていないのは仕方がないとしても、今まで注意してくれる人さえいなかったのだ。何ということだろう!十八才の子が、あんな臭をさせて、周囲の白眼視にあって、毎日を送っているとは。


5/12(木)の記事は続きます。[編者]


滋子の手書き原稿に忠実な翻字は以下で

http://db.tt/wiixYXDN


目次はこちら

http://db.tt/fsQ61YjO

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