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己 呂 武 反 而   作者: https://youtube.com/kusegao
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「お姉ちゃんね、この匂を嗅ぐと、これから、良い季節になるんだなって、何だか浮き浮きしてくる。これから夏なんだなって、そんな匂じゃない?」と言いましたら、彼女も笑って、「本当に、心が浮立つ匂です。」と言います。「春の匂も好きだけれど、何だか悲しくなる。梅のかおりは別ね。白梅は楽しい匂だもの。でも、桜の匂なんか、本当に切ない。山桜なんかは、とても良い匂だから、いつも、こんなふうに、花びらを、鼻に当てるんだけれど、そのたびに切なくなって。坊は、何の花の匂が好き?」と尋ねましたら、暫く考えて、「そうですね、春は、沈丁花が好きです。秋は、ギン木犀が、良いかおりだと思います。」と言います。私は、初、彼女の訛の所為だと思って、「キン木犀?」と言いましたら、「いえ、ギン木犀です。金木犀とは違う木です。」と、彼女が言いますので、段々聞きましたら、かおりは、金木犀に似ているといえば似ているけれど、違うといえば、紅梅と白梅ほど違うと言います。花は橙色ではなくて、白いのだそうで、だから、金ではなくて銀木犀なのだそうです。葉の形も、少し違うと言います。もん君、知っていましたか?私は、そのような花があることを、露知りませんでした。坊は、小学校に、その木があったので知っているけれど、ほかでは、あまり見掛けたことがないそうです。私は、「じゃ、秋が楽しみだわ?教えて頂戴、銀木犀を。」と言って、二人は、又、白いあやめの匂を嗅いで、長いあいだそうしていました。やがて閉園時間になったので、其処を離れましたけれど、一度啼出したほととぎすは、ずーっと、何かに取憑かれたように啼通して、私達が、門を出ても、まだ聞えていました。

5/3(火)の記事は続きます。[編者]


滋子の手書き原稿に忠実な翻字は以下で

http://db.tt/9camnmzj


目次はこちら

http://db.tt/fsQ61YjO

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