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己 呂 武 反 而   作者: https://youtube.com/kusegao
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5/3(火)

   今日は、三渓園に行ってきました。もう、人が沢山!でも、閉まる時間が近付いてくると、急に少なくなって、しまいには、私と坊がいる、丘のもとには誰もいなくなりました。白いあやめが咲いています。私は、あの匂が、本当に好きで、坊にも嗅がせると、「うっとりする、良い匂です。」と言って、鼻を、花の中に入れて、息を吸込んでいました。すると、どうでしょう。あたりが静になりましたら、ほととぎすが、けたたましく啼出しました。何ともいちはやき一羽です。姿は見えませんけれど、すぐ近くで啼いています。何と文学的な瞬間でしょう。あやめはあやめでも、あやめ違でしょうけれど。でも、これだけでも、来た甲斐がありました。私は、パパに連れられて、船岡山に登ったときのことを思出しました。ある夕方、それは夏休中だったと思います。昔、小学生のときに、夕御飯の前に、パパと一緒に、船岡山に登って、東屋に腰掛けて、綾尻取をして遊んでいました。パパの発明だと思います。綾取と尻取を同時にする遊です。突然、ほととぎすが、大きな声で啼出しました。あまり大きな声で、私はびっくりしました。それに、ほととぎすの声を聞くのは初てでしたので、パパに言われるまで、何の鳥なのか分りませんでした。丁度、今日、坊と、三渓園で聞いたのと同じように、すぐ近くで啼いているのですけれど、全然、姿が見えません。いくら探してもいません。パパも一緒になて探しましたけれども、到頭見つかりませんでした。その日以来、今日、再び聞くまで、あの声を忘れていました。山手には飛んでこないようです。聞いた覚がありません。坊は、すぐに、「あ、ほととぎす。」と言って、あたりを見回しました。そして、暫く、二人で探しました。でも、やっぱり駄目です。キョッキョ、キョキョキョキョ、キョッキョ、キョキョキョキョ。絶間なく、飽きもせずに啼いているのに。ほととぎすさがしは諦めて、また、花に顔を当てて、匂を、胸一杯吸込みました。坊は、花を持つ手を気にするのも忘れて、目を閉じて嗅いでいます。

5/3(火)の記事は続きます。[編者]


滋子の手書き原稿に忠実な翻字は以下で

http://db.tt/9camnmzj


目次はこちら

http://db.tt/fsQ61YjO

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