4/30(土)
昨日のお話を続けるわね?これは、昨日29日の出来事です。
テテは、一人だけおいてけぼりにされて、非常に不満でした。ずーっと遠くまで、やる瀬ないような悲鳴が聞えてきましたけれど、今日の山手通は、彼女を連れて歩けませんし、エノキテイの入口に繋ぐわけにもいきません。夕方、もう一度、散歩に連れていくからと約束して、彼女は留守番です。それで、坊と私は、聖書を持って、山手公園に行きました。中に、サマーハウスがあるのですが、以前、その中に腰掛けて朗読をしたことがあります。前に言いましたね、この事は。丁度、先週の日曜日のことでした。坊は、其処が、とても気に入って、今日も行ってみようかと言いましたら、「はい。そうしましょう。」と、うきうきした声を出して微笑みますので、彼女は、内心、そう言ってほしかったのです。さいわい、公園は、沢山の親子連でしたけれど、今日も、サマーハウスはあいていたので、坊と私と、誰に気兼もなく、朗読を楽しみました。今日は、マタイ伝の続を読んで、それから、ちょっと趣向を変えて、詩篇をいくつか、旧訳で読みました。第一の「悪しき者のはかりごとに歩まず、つみびとの道に立たず、嘲る者の座に座らぬ者はさいはひなり。」から始めて、全部ではなく、飛び飛びに、第二十三の「主は、我が牧者なり、我、乏しき事あらじ、我が、世にあらん限は、必ず、恵と憐みと、我に傍来たらん。」まで。坊は、全然分らないと言いながらも、飽きもせずに、面白そうに読続けます。仮名遣に慣れないらしくて、中学で教らなかったのでしょうか、少し読むと支え、又、少し読むと支えしましたけれど、厭になる様子は見えませんでした。句読がはっきりしないので、一層読みにくいようでした。でも、それが、坊の好奇心を掻立てます。とにかく、好奇心が強いのです。何でも知りたがります。「私って馬鹿です。何も知らないんですから。」と言ってにこにこ笑いますが、ちっとも、卑屈な笑ではありません。心からかわゆくなるのです。そこで、教えてあげると、それはそれは、目をまん丸にして聞入ります。「私は、今から勉強すれば一人前になれますか。」と、真顔で聞きます。
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