4/29(金)
隠していても仕方がありませんから、言ってしまいます。厭な人が、今日訪ねてきました。私を、事務所にいられなくした張本人です。どうして、そのような、破廉恥な真似ができるのか、理解できない。丁度、散歩に出掛けようとしていたときに、テテが吠えるので、窓から見たら、彼が、門の外に立って、様子を探っているのが分ります。良い按配に、テテを放しておいたので、彼は、恐をなして、門を開けようとしません。ちょっと見回して、ベルを見付けたので、鳴すと、テテが、彼女は、彼女で、胡散臭い人間だと見てとって、愈吠えて、門に、前足を掛けて挑掛るので、彼は、おどおどして、足踏をしているので、私は、思わず笑ってしましました。「テテ、でかしたわよ!」と声に出して言いました。何度かベルを鳴して、立去りましたけれど、泥棒が逃げるように、きょろきょろしながら、帰ってゆきました。ところがです。今日は、一時に、石川町で、坊と待ちあわせなので、テテを散歩させがてら、港の見える丘公園の方に歩いてゆくと、又、テテが吠えるので、見れば、彼が、行く手に立って、じーっと見ているのです。私は、無視して、ずんずん、彼の立っているそばを通過ぎました。テテが吠えるので、全部は聞取れませんでしたけれど、居留守は酷いじゃないですかとか何とか言って、ちょっと付いて来そうにするのに対して、テテも心得ていてくれて、ちょっとでも寄ろうものならと、歯を剥いて睨むので、立竦んだまま見送るらしくありました。本当に、彼のような人が信じられない。でも、それきり付いてこないので、港の見える丘公園に入って、テテに抱付いて、「テテ、ありがとう!」と、礼を言いましたら、彼女も、大はしゃぎして、顔中嘗回すので、あとで、水飲場で、顔を洗うことになりました。
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