4/28(木)
今日、溜っている新聞を見ていたら、ホロヴィッツが、日本に来るそうです。絶対に、彼だけは聴くことができないと諦めていました。U.S.A.にいたころに、カーネギー・ホールなどで、何回かリサイタルをおこなって、特に、オーマンディとの共演は、大変な前評判で、私も、聴きにいきたかったのですけれど、いつも、切符が手に入りませんでした。あなたも聴きたがっていたわね。これで、私の勝が、ひとつ増えるわけです。今日、申込んだら、初日は駄目でしたけれど、二日目は、丁度、キャンセルが出て、二枚並んで取れました。由加里を連れてゆきます。六月の中旬です。木曜日なので、仕事を早めに切上げてもらわなければいけませんけれど、今から分っていれば、大丈夫でしょう。彼女も、音楽が好きで、おまけに、耳が、とても良いのです。よく、一緒に、レコードを聴くのですけれど、一週間もたって、メロディーを鼻歌にしていることが、よくあります。それが、ぴったり、キーまで合っていて、今まで、音楽など聴いたこともない子が、考えてみれば不思議なことです。彼女のおきにいりは、フランクのソナタで、冒頭のヴァイオリンを、しょっちゅう歌っています。「凄いわね、坊。一度聴いただけで覚えちゃったの?」と言いましたら、赤くなって、「いえ、二度聴きました。」と言って、それきり歌わないので、「今の曲、どれ位覚えているの?」と尋ねましたら、「一生懸命聴きましたから、大体覚えましたけれども、正しく歌えるか分りません。頭の中でなら聞えるんですけれども。」と、事もなげに言いますので、「それは凄いことなのよ?坊。お姉ちゃんなんか、とても真似できないことだわ?あなた、才能があるのよ?」と言いましても、煽てているのだと思って、「からかわないで下さい。」と言ってもじもじします。それからというもの、どんどん、レコードを聴かせるようにしましたけれど、彼女の言うとおり、一度聴いたものは、大体、頭に残るらしくて、例えば、最初、私が、前に聴いたラヴェルの四重奏を、鼻歌で歌って聴かせて、「坊、このあとは?」ときけば、ほぼ、そのとおりに歌えるのです。あのように、曲りくねった節でも、ちゃんと、一度で入るらしいのです。偶に、意地悪をして、キーを違えて歌うと、変な顔をして、歌わずにいます。標準語のレッスンと並行して、音楽も、少し教えてみようかと思っています。とにかく、ホロヴィッツは楽しみで す。直前になって、来るのをやめたということがないようしてほしいものです。去年、ロンドンでおこなったリサイタルが、日本でも放送されたらしいのですけれど、私は知りませんでした。
滋子の手書き原稿に忠実な翻字は以下で
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