4/11(月)
My Raymond,
私、my Raymond'sは、でも、もう、貴方が欲しいとは言いません。なぜなら、以前になかったほどに、今、貴方が近く感じられますから。貴方は、やはり、私 に、変らない愛を誓ったのですね。私には、とうから分っているのです。貴方の心が、痛いほど分るのです。貴方は、神様を証人にたてて、印を押したのです。 何人にも変更できない、契約の印を押したのです!貴方も知っていたのでしょう?私が、それを望んでいたことを。みんなに知ってほしかったことを。あの涙 は、感激の涙、あの声は、歓喜の声だったことを。なぜって、貴方は、私を、ひたすらに愛したのですもの。どのような報をも厭わず、ひたすらに、私を愛した のです。私は確信します。私達は許されています。貴方も、私も。神様は、行為の真剣さに、動かされなさいました。契約の深刻さに免じて許して下さったので す。その証拠に、神様は、ひとつのsignを、私達のところに遣して下さったではありませんか。そうです。貴方も、きっと、そのように考えていることで しょう。あの、由加里という子です。どうして、あの子を、signと見るのか、それは、貴方も、私も説明できませんね。直観的に、そう思うまでです。で も、その直観の正しさに疑のないことは、貴方も、私も、知っています。さて、由加里の家庭教師になってから、早くも半月、どのような経緯でそうなったの か、まだ纏めていませんでした。報告を兼ねて、これからの物をしたためます。
初て、由加里が訪ねてきたのは三月二十六日でした。前にも、これは、少しだけ書いた事ですね。私は、門の前で悪戯をして、彼女を驚かしました。あのあとで、何度も、何度も詫びて、請うように、家に引張入れました。
礼を言うための来訪でした。「このあいだの晩は、本当に有難うございました。今日は、その挨拶で参りました。」と、中に入るなり、客間の入口に立って言いました。出会った晩のことを言っているのです。
私達は、ソファーに掛けました。お互に遠慮して、中々打解けません。
野球帽を、目深に被り、手には、軍手。私は、彼女に、膝を向けて話掛ける。けれども、彼女は、猫背になって、前方を見つめています。手さげの紙袋、 これは、ビニールの覆があって、照明を受けると、ピカピカ光ります。ビニール特有の、頭の痛くなる臭がします。彼女は、それを、膝の前に立てて、両手で、 その紐を、しっかり握っています。ソファーに、浅く腰掛けて、とても窮屈そうに、お膝を揃えた座りかたです。
4/11(月)の記事はまだ続きます。長いので分けて載せます。[編者]
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