夜、彼女が僕のベッドの上で目覚めた時、彼女は暫く天井を見ていました。自分に何が起こったのか理解しようと努めるらしかった。彼女はその深刻そうな目でベッド脇の僕を見つめました。もしかしたら彼女は何が起こったのか理解したのかも知れません。彼女は僕に手を伸ばしました。僕に接吻して欲しかったのです。彼女は水を一杯頂戴と云いました。
さて、僕は告白すべき事を告白し終えました。僕が去る前に、物事をはっきりさせて下さい。滋子の純潔は微塵も損なわれていません。僕が彼女を眠らせたのは知的要求からでした、肉の欲からではありません。くどくど説明するのは止しましょう;貴方は分かると思います。ただ一つ心残りなのは、あの小さな濃い青の布切れが外れたか外れなかったのか、知らずじまいです。多分知らない方が良いのでしょう。もし外れた事があるとしたら、とそう考えるだけで、僕は今にも狂い出しそうです。あの美しいもの ─ それにしても何と美しい創造物でしたろう!結局彼女は天使ではありませんでした。彼女は人間でした。彼女は人の肉と人の毛のにおいがしました、その味がしました、その手触りでした。ああ、しかしそれは何と美しい創造物でしたろう!夢で見たものの対極をなす存在でした。正にそれは清らかさと同時に稔りの象徴 ─ それは僕一人の所有でなければならないのに、もし外れたのだとしたら!僕は知らない方が良いのです。
それと僕の信仰告白。あれは出鱈目でした。僕にあったのはイエスでは無くて、イエスが一緒になってくっついて来た滋子でした。黄金の子牛に祈って与えられなかったものを、彼女が与えて呉れました。僕はそこに神殿を築き・・・築き掛けた;それで善しとします。惜しむらくはバートランド・ラッセルの長寿に恵まれず、僅かながらの知識も得ず、他人の苦しみに対しては極めて冷淡な利己主義者として死ぬことです。しかし、彼の五分の一の時間で彼の三分の一になり得ました。悪くはありません。
貴方の弟子にして甥
レーモン・コバヤシ
伶門のタイプライタ原稿に忠実な翻字は以下で
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