僕の魂はまた乱されていました。僕は非常に困惑していました。しかし、僕は困惑している事が恥ずかしかった。どう云う訳か、困惑している事を彼女に知られたく無かった。僕は芝居を打たなければなりません。巧くやり通す積もりでした。そうしたと思いました。その午後、僕は水着の事を口にしませんでした。その晩、僕は自ら汚しました。彼女を汚しました。彼女が水着で立っている姿を頭から消す事が出来ませんでした。僕が一番大事にしている物が、何か損なわれたような気持ちでした。数学が不完全だと知った時以上に落ち込みました。僕は数学にがっかりして自瀆した事はありませんでした。しかし、僕はその晩以来、自瀆行為がやめられなくなりました。さんざん偉そうな事を云っておきながら、結局、僕は常習的な自瀆者として死ぬのです。
プールの次の日の月曜日、僕は滋子の家に行きませんでした。そうしてその間、彼女はまた教会の女の子達とプールにいるかも知れないのです!その晩おそく、彼女は泣きながら大森にやって来ました。僕は電話を切ってありました。(父は大阪に出張していました。ミセズ・タカノが来る日でもありませんでした。)彼女は泣いていました!彼女の涙を見て心を動かさない者は石の心を持っているに違いありません。【もんくん、どうして電話に出てくれないの?わたし、何か、悪い事をした?】僕は嘘をつきました。音楽を聴いていたから電話に鳴って欲しく無かったのだと云いました。彼女は明らかに嘘だと知っていましたが、信じる振りをしました。彼女は僕の胸に顔を埋めてめそめそ泣き続けました。彼女は水着の事で怒っているのかと尋ねました。僕はそんな事は無いと云いました。【本当?もんくんがいやなら、わたし、もう、着ない。】僕はそうで無いと言い張りました。全然気にしていない。【本当?でも、わたし、もう、プールには行かない。】彼女は天使でした。
しかし僕はそうでは無かった。彼女の過去の夏のことで、僕は非常に疑い深かった。僕の聖女は何人の人に自身を水着姿で現したのか。テレビで見るように、水に飛び込んだ時は、水圧でそれが取れた事があるのか。彼女の体型なら大いにあり得た。そのような場合、僕の知らない滋子を、知っている男たちがいるのです。僕はその考えに堪えられませんでした。僕の魂を押し潰す考えでした。彼女が何度あの水着を着たかを考えるだけで、僕を惨めにさせました。
滋子は次の晩も僕の家にやって来ました。僕はこの天使に嘘をつきとおす事が出来ませんでした。僕は彼女の膝を抱いて、自分の顔を隠すようにし、この二日間、僕を責め苛んでいたものが何であるかを告白しました。彼女は泣いて謝りました。もう一生水着にならないと誓いました。そして、その時から、僕は彼女の特定の部位に並々でない興味を抱きました;それまで全然僕の注意の対象で無かったそれらに。服を着ていない状態の彼女がどんな風に見えるかしらと、絶えず想像しました。
遺書はつづきます。[編者]
伶門のタイプライタ原稿に忠実な翻字は以下で
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