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己 呂 武 反 而   作者: https://youtube.com/kusegao
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「アン、バスルームで愁嘆の場」無言劇。同月12日、午前11前後(?記憶曖昧)、久しぶりの入浴。バスタブの湯に、石鹸を、多量にとかして、念入に脱臭及洗浄。微熱。でも、構わずごしごし。洗浄が終ると、鏡に向って、一年振の剃刀。ひとりでに涙がこぼれる。しゃくりあげる。こんなことをしておく必要などあるはずはないと思う。でも、心の中には、ひそかな欲望がある。ひそかな欲望と言うのはおかしい。ほとんど、人を窒息させる位に強烈な欲望。考出すと居ても立ってもいられない、息苦しい欲望。満される可能性が限なくゼロに近いだけに、尚更。折角、念入に洗浄した所も、又、穢始めている。最近、呪わしい行為が習慣化して、一旦穢始めると、心臓が、異様に高鳴って、体が変になり、より一層穢れてしまう体質になった。剃刀を使っているあいだにも、髀の内側まで、幾筋もの欲望が下りてゆく。そして、浅ましい姿を、鏡に、とくと見せつけられ、涙に咽びつつも、結局は、我慢しきれなくなって、バスタブに横たわって、汚泥にまみれる。暫くは、満されたような錯覚を味うのだ。麻薬も、こんな感覚なのだろう。でも、覚めたときの虚しさはひととおりではない。だから、いつまでもやめられない。波が去りそうになると、又引寄せるのだ。三時間後には、坊が、彼を連れてやってくるというのに、この雌の獣は、そんなことをしている。誰も聞く者のいない今とばかりに、獣の声を張上げ、バスタブを、ガタガタ言わしている。普段は、ベッドで、タオルを敷いてする。そんなときのアンの心の中には、あるイメージがある。いつも同じイメージだ。(作者からひと言。ここを演じる人は、同じイメージを描いて演じてください。リアリティーが出ませんから。)彼が、赤ん坊になって、すっぽり抱かれて、顔を、胸に埋め、おしゃぶりを頬張って、溢出るミルクを、ごくごく飲んでいる。彼は、無上の幸福を、満面に湛えて恍惚となっているけれど、顔は、雌に見えるはずもない。なぜって、胸の中に隠れているのだし。でも、雌の心の目には見えている。おしゃぶりの先の、綺麗な、大きな、珊瑚色の目が、心の目だ。心の目には、彼の美しい美しい優しい、崇高な、世にも稀な、高貴な、いとおしい顔が、無上の幸福に満されているのが見える。見える。完全に見えているのだ。雌も、その顔を見て、無上の幸福に包まれている。そのしるしが、なめらかな液体。内面世界では、液体は清らかな小川の流だ。彼の健気な、いじらしい、一生懸命な、私を信じきって頼切った、いとおしい、いとおしい、息苦しいほどいとおしいタツノオトシゴ、白くてちっちゃくて可愛いオトシゴ、頬擦したいオトシゴ、んん、御免ね、根っこ、根っこ根っこ根っこが私の奥深く奥奥奥ふかーーーくで立派な大きな根っこになり、しっかりとおなかの壌土に幾重にも幾重にも絡みつき掴み掴んで、引っこ抜こうにも決して、絶対に絶対にポール・バニヤンでも引っこ抜けない、深い深い根をおろして、それはもはや、私のおなかと拾遺の根っことはまったく区別できないひとつの物、ひとつの木、中国の人が空想したようなせこい二本木のよな問題にもならないせこ物ではなくて、根っこと土がまったくヒトツになた、永久にヒトツになってしまったentityに私達はなっている。そのentityに豊なうるおいを与えるのが私の液。清い清い清らかで滑らかな、彼が口から飲んでも大層美味しい、栄養豊な私のエキス。だから、拾遺とヒトツになればなるほど豊に流れて、どんどん流れて、流れれば流れるほど私の体はのぼせ、興奮し、心臓が破裂しそうに打って、どんどん流れるでる。拾遺も、口からミルクと、オトシゴから、あ、又御免ね、根っこ、根っこからエキスと、両方の豊な栄養を吸って、あの優しい、崇高な顔のまんまで、彼も心臓はどきんどきんと私と同じように異様に高鳴って、私に甘え、甘え、甘えて、もっと甘えて、もっとずっと激しくミルクを吸い、痛いほど吸って、吸って、もっと吸って、痛いほど吸って、千切れてもいいからそれ位強く吸って、お願もっと吸って、もっともっと吸って、吸う、吸う、狂う、気が違う、その位吸いつくして、おもいっきり私に甘えながら、じゃれながら、脇の下を首の回をくんくん嗅ぎながら、根っこは私の土壌を掻回して、オトシゴじゃ厭、オトシゴじゃ厭、しっかりした根こになって、根っこ根っこ根っこ、その根っこが私を気違にする。破けるほど、お願、死んでもいいからもっともっと、もっと中に、もっと中を、私の中を掻回して、貴方は蛸のように私に絡みついて私に抱きついて、私も貴方を抱きしめて、腕でも抱きしめ、脚でもぎゅううううっと抱きしめ、貴方は腕でも抱きつき脚でも絡みつき、もう二人とも軟体動物になって貴方と私は抱合って、抱きしめあって引っかきあって、私は貴方の額から生際からこめかみも旋毛も頭全部にキスを浴びせて、貴方も、そんなときは顔を上げて綺麗な目を向けてくれるから唇同士、届くかな、多分届くと思うけれど、届かなければ、私が少し屈んで、貴方は照れるから真赤になって、私も恥ずかしいから真赤になって、清らかな、無上の、天国的なキスを口と口、舌と舌でいつまでもキスし合う。キスし合ううう抱合ううう。狂犬のようにあちこち噛み噛み噛み噛み噛みあって、くんくんくんくん嗅ぎあって、歯を立てて噛むから血が滲んだのを美味しい、しょっぱい、血のにおいがする、血の味がする、でも美味しい美味しいと嘗めあって吸いあって、狡い、貴方はミルクを吸っているくせにそのうえにもおしゃぶりの血まで吸って、私は貴方の額の血しか吸えないけれど、私は、私は、ミルクを飲まれて、それから、少し恥ずかしいけれど私のエキスだから貴方にはそうされたい、できるそばからぴたぴたねぶられ私は味わわれて掻回されて、ああ狂いたい、もっと狂いたい、狂わせて、すべらせて、べとべとべと、もっと、もっと、もっと、もっと。又根っこが戻ってきて余ったのをちゅっちゅと吸いとって、漏斗はきゅっきゅと締めて私は貴方に頬擦をして「愛している。大好き。大好き、大好き、大好き。いとおしい。いとおおおおおおおおおしい、貴方がいとおおおおおおおおしいの!気が変になる位いとおしくて仕方がない、分って?ね、分ってくれる?貴方、私の気持が分る?」と聞いたら、その輝く目で、私を骨抜の骨なしの水母にしてしまうその目で見上げて、「愛している。滋子、愛している。僕はばかになった。滋子しか考えられない。僕は滋子で一杯だ。滋子と僕はヒトツだ。僕が世の中で一人だけ、一人だけ、一人だけ愛している滋子、滋子、滋子。優しくて上品で綺麗で世界一美人の人の甘い甘い飲み物と、ぬくぬくした暖さと、ねっとりした栄養と、住心地いいおなかの中と、それ以外には、それ以外に僕が欲しい物といえば、それはたったひとつだけ。僕は滋子の心が欲しい。」「赤ちゃんのくせに気障なことを言うのね、ひろおきさんは、うふ。可愛いいい、そういう貴方がいとおおおしい!私の心は永久に貴方のもの、このまま喜の島に漕ぎいでましょう?」「ゆーらゆらゆーらゆらこのまま抱合って行こうね、滋子、僕の滋子。永久に僕一人の滋子。」と言ってくれて、おしゃぶりにむしゃぶりつくものだから又興奮してきて二人は脳味噌が沸騰して本当に馬鹿になるまでキスしあって抱きあって嗅ぎあって、貴方は私の甘い飲み物をごくごくごくごく飲んで、可愛いオトシゴは流れの中でぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃ泳ぎまわって、又巨大な根っこに膨れあがって私を掻回し掻回し私はもう声を張上げて狂いたい、狂いたい、狂わせて、気が違う、狂っている、狂う、狂う、狂ううううううと大波にさらわれて悶死して痛みで貴方の髪の毛を引っかきむしって喜にさらわれているときに貴方も喜に耐えきれなくなって数えきれない沢山の種を播散らす、播散らす、貴方の種、貴方の種、貴方の種、種、種、種、種、種、種、種、種、種、種、種種種種種種重重重重重重重重重重重重重重重重重、無数の種をちょうだい、残らず出して!でも種だけじゃ厭。貴方の濃縮液を残らず頂戴、貴方の白いもの、あやめのように甘やかな匂のする蜂蜜で私は蘇生するの。濃縮液と種でも厭!厭!私はわがままで欲張で物すごおおおおい焼餅焼なの。いいでしょ?ね、いいでしょ?貴方、私にその位焼餅を焼かれたいでしょ?貴方のぜーーーーんぶを頂戴。私、全部絞りとっちゃう。私の漏斗がきゅっきゅと締って貴方の根っこから牛乳のように白い蜂蜜を絞りだして、血も吸いだして、そう、血、血、血、貴方の高貴な血を吸尽して私の中で循環させたい。私が又栄養を与えて育ててあげるから大丈夫、世界で一番甘いミルクとねっとりと栄養ある私の濃縮液で大きくしてあげる。そしたら又貴方を絞っちゃう。ぐるぐるぐるぐるいつまでもそうしていましょうね?だからpleeeease I want to, I have to, I haaaave to have you, George GorgeonyouIwill holdingyouholdingyou     holdingyou, holdingyou feedingyoufeedingyou feedingyou, feedyouwhile havingyouhavingyou kissingyoukissingyou suckingyousuckyouby kissingyouandgoingMAD, I'mMAD, MADMAD 魔ー女魔ー女、魔ー女魔魔魔。へ、醜い醜い醜い醜い肉の塊!肉の塊!ぶす、ぶす、ぶすぶすぶす、ぶすでもいい、吸わせてサックさせて吸う吸う吸うサックサックサッキューサッキューサッキュサッキュサッキュサッキュぶす!ぶす!このぶすぶすぶすぶすでもいいただキスさせてキスしつくさせてくれれば私は又綺麗になれる。お願キスさせてええ!!!貴方をちょうだい!!!もらった。もらった。もらったもらったもらった唾つけた、もらったわよ。貴方は私の物。茶番じゃない、これは本当!茶ではないの!血なの!そして私は貴方の赤ちゃんを身籠る。貴方が私の赤ちゃんのくせに、だから私の赤ちゃんの赤ちゃんを身籠る身籠る身籠る貴方の赤ちゃん。私の赤ちゃん。私の赤ちゃんの赤ちゃん。身籠る。ああ幸。死んでも良い。その状態で死にたい。でもまだ死なない。私は赤ちゃんを産んで、私の腕にしっかり抱いて、私と同じものである赤ちゃんに頬擦をして、飲切れないほど溢れでるミルク、私のミルク、ミルク、ミルク、ミルク飲ませたい飲ませたい飲ませたいいいい!赤ちゃんが飲む、飲む、飲む飲む飲む飲む飲む。私はたまらなくなって頬擦をする。うううん、可愛い。ままでちゅよ。ままにきちゅちて。いとおおおしい。泣きたい。かわいいいい。彼は、ちょっとだけ膨れて、彼って貴方よ、ひろおきさん、貴方は焼餅を焼くの。二人とも可愛いいい。いとおおおおおおおしい。でも大丈夫、貴方よ、ひろおきさん、赤ちゃんのおなかが一杯になってすやすやすうすう眠ったら、又私と貴方はエキスの交換をして今まで此処に書いたことをもう一度ぜーーーーーんぶ最初から最後までやりなおしつくして二人目が出来る。三人目、四人目、何人でも何人でも。もう私達はそのまま死んでしまいたい。(作者から、観客の皆さんへ。この女は魔女か獣の類でしょうか。作者は、そう思いません。百パーセントは、そうは思わないのです。良く分らない。女が、呪わしい行為をするときには、今のような宇宙的な幸福を思描いているのです。彼と女は、まったくヒトツの、わかちがたい、絶対に離れられない一個のentityであるのです。)でも、やがて覚めなければならない。もうすぐ、坊と彼がやってくる。アンは、穢れた所を、又念入に洗浄して、べとつく汗を掻いた脇の下も石鹸で洗って、今一度、鏡の前に立つ。そして、再び、己の、浅ましくなった姿に、涙を流して、この愁嘆場は幕。

滋子の手書き原稿に忠実な翻字は以下で

https://db.tt/dbXbP870


目次はこちら

http://db.tt/fsQ61YjO

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