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己 呂 武 反 而   作者: https://youtube.com/kusegao
165/197

                                      

編者注:[Ann&Beau]の中のAnn&Beauは原本にあるルビ。滋子の手書きでは、【決めてある】の中の 決めてある はミセケチにしてあります。つまり、上から線が引いてある。今後も【 】は同じ意味で使うつもりです。(天野)

             姉坊[Ann&Beau]小劇場へようこそ


鎌田滋子処女作品         ファルスト  茶番




時:

1983年7月11日以降


場所:

山手、宇治、及大徳寺界隈(の予定。まだ作劇中。)


人物:

オイフォリオンこと喜多野拾遺、実は従五位下バイロン朝臣ジョージ・ゴードン

ボーこと清水由加里、実は妖精

アニーこと鎌田滋子、グレートヒェンと思っていたら実はドクター・ファルスタスだった

やっこ、実は悪天使か

ほか未定






「ボーとアニー和解の場」 7月11日19時30分頃、山手の二階、滋子の部屋。背景音楽(これ大事):ドビュッシー弦楽四重奏第三楽章。滋子、ベッドに寝ている。風邪。熱。実は恋も患っている。それから、ある重度の急性依存症。部屋の中は肌寒い。毛布を被っている。ドアにノックの音。滋子、はっとする。


ア: どうぞ。 (ボー登場。)

ボ: どう、お姉ちゃん。苦しい?

ア: んん?大丈夫。でもちょっと苦しいかな。 (ボー、ベッドの脇の椅子に掛ける。)

ボ: お姉ちゃん、私、お姉ちゃんの気持、分る。

ア: そう?

ボ: お姉ちゃん、私はもういい。

ア: いいって、何が?

ボ: お姉ちゃん、分っている。

ア: 駄目よ。明日行ってきなさい?どうしていいのよ。

ボ: お姉ちゃん、それも分っている。

ア: 何のことよ。苛めないでよ。お姉ちゃん泣きそうなんだから。

ボ: お姉ちゃんは、拾遺さんを愛している。だから、私、明日行って拾遺さんにお姉ちゃんの気持を伝えてくる。

ア: (大袈裟な身振と懇願の表情で。)駄目、坊、それは駄目!やめて!

ボ: 私、言います。それが一番です。

ア: 坊、やめて。私恥ずかしくて死んじゃう。

ボ: しっかりして。

ア: もう忘れることに決めたの、もう会わないって決めたの!やめて、お願。

ボ: お姉ちゃん、正直じゃない。本当は伝えてもらいたいくせに。

ア: んん?違う。愛しているけれど伝えられない。言っては駄目。

ボ: でも、お姉ちゃん、本当は伝えたいんでしょう?私、分っている。大丈夫。任せてください。私も馬鹿じゃない。ちゃんとやります。私はもう諦めたから大丈夫。昨日もちゃんと応対した。自分の事ではなくなってからあがらなくなった。大丈夫、任せて。

ア: 伝えるって、どう言うの?

ボ: 拾遺さんの男心をくすぐるように言うんです。もう言うことまで【決めてある】考えてある。

ア: (喫驚の表情。)男心?

ボ: お姉ちゃん、私をお馬鹿さんだと思っている。私、狡賢いんですよ、結構。拾遺さんがデートに誘ってくれるのもお姉ちゃんの差金です。きっとそうです。お姉ちゃんが渡した手紙の中にそういうことが書いてあったんでしょう?

ア: 何よ、急に大人ぶって。

ボ: お姉ちゃんが子供だから。

ア: それじゃ何もかも私が馬鹿みたいじゃない。何よ、もう厭だ、こんなになっちゃって。彼になんか会えない。

ボ: でも会いたくて会いたくて病気にまでなった。

ア: お姉ちゃんを助けてくれるの?

ボ: できるだけのことはやってみる。だって、大好きなお姉ちゃんのためだもん。やって当然でしょう?

ア: (泣きながら坊を抱寄せようとするが、風邪を移してはいけないと気が付いて、手だけ握る。)坊、お姉ちゃんのこと、まだ愛している?

ボ: 当りまえです。私は誰よりも誰よりもお姉ちゃんを愛している。お姉ちゃんはいつも私のことを一番に考えてくれる。

ア: (感激しておいおい泣く。ほとんど絶叫。父親譲の豪快さ。)ごめんねええ!お姉ちゃん坊に悪いことをしちゃったああ!私厭だああ!坊を傷付けちゃったああ!許してええ!

ボ: 私は傷付いていない。全然。

ア: でも坊も好きだったんでしょうおお!おおお。

ボ: でもお姉ちゃんほどではない。違う。言直します。私のは「好き」ではなくて憧です。ちょっと憧れてみた。お姉ちゃんのも実は「好き」じゃない。もっと何か深くて尊いものです。私とは全然違う。

ア: (冗談めかそうとして。でも相変らずおいおい。)何よおお、いつから貴方そんな哲学者になったのよおお。お姉ちゃんを恨むでしょう、初恋の人を取られて。えええ。

ボ: 初恋なんかすぐに覚めます。中学生だって知っている。お姉ちゃんは子供です。純真です。お姉ちゃんは拾遺さんに恋なんかしていない。恋だと思っているの?少女みたいに。

ア: 坊、お姉ちゃんを助けてええ!本当はお姉ちゃん、死にそうなのおお!もう何も分らないい!助けてええ!お姉ちゃんを助けてええ!

ボ: 分る。お姉ちゃんを見ていれば分る。お姉ちゃん、私を抱かないの?きっと苦しいのがやわらぐよ。

ア: だってお姉ちゃん本当に病気なのよ!風邪を引いているのよ!

ボ: 大丈夫。引くならもうとっくに引いている。キスしていいよ?

ア: (我慢しきれず抱付く。しかし、自分の穢れた寝台に入れたくないから、)坊の部屋に行っていい?(二人は抱合った奇妙な蟹歩で退場。)

滋子の手書き原稿に忠実な翻字は以下で

https://db.tt/n3pS5OcL


目次はこちら

http://db.tt/fsQ61YjO

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