パパも大喜して、小さな彼を、家に連れていったら大変、抱締める、キスする、断っても断っても、食べさせる飲ませる。決ってどんちゃかさわぎ。面倒臭いことは良いから、早く結婚してしまえ、早く、孫の顔を見せてくれろ、初孫は男の子にしてくれよ、男の子だったら、滋坊みたいに、手に抱いて、自分で風呂に入れてやりたいからななどと。伶門君、近頃、滋子以上の娘は、中々いるものじゃないぞ、気立の良い、出来た娘だ、親の口から言うんだから間違ない、それに、此処だけの話、凄い美人だ、浮気をする気なんか全然失せてしまう、この私が保証する、体を鍛えておき給えよ、滋子は、そんじょそこいらの女とは勝手が違うからな、そんな痩せっぽちで大丈夫かね、君、何しろ、このグラマーだ、英文法じゃないぞ、ええ別嬪だと言うておると、お馬鹿さんで磊落なことを言って、私を赤くさせた。パパがかわいそう。ママがかわいそう。でも、私は幸なのだ。後から後から涙が出てきて、おいおい泣いた。パパは顔中にキスして、相変らず、滋坊は美人だ、そろそろ、パパのところへお嫁に来なさいと慰めてくれた。お姉ちゃんの顔を見にいこうかと、あとで、坊と一緒に、洗面所の鏡を前にしたときは、こんな顔を、ガーバー神父にも見せたのかと、悔しさ半分、おかしさ半分の泣笑をした。そして、坊が窒息するほど坊を抱締めて、顔中にキスした。小さな声で、「お姉ちゃん、ヤニ臭いよ。」
滋子の手書き原稿に忠実な翻字は以下で
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